エクストリームアイロニングという競技をご存じだろうか。

断崖絶壁や砂漠、果ては水中などの極限状況下でアイロンがけを行うスポーツのことだ。

3秒前に思いついたことを堂々と書くなと思われたかもしれないが、そう思った者こそ「アイロニスト」たちに謝罪すべきである。

エクストリームアイロニングは少なくとも20年以上は続いているれっきとした競技であり、選手である「アイロニスト」たちはみんな真剣なのだ。

エクストリームアイロニングは、過酷な状況下というだけでなく、まるでそこがスターバックスであるかのように「平然とした顔」でアイロンをかけることが基本ルールになっている。

状況に耐えるフィジカルだけではなく、そんな環境にも動じないメンタルを必要とする、まさに正統派スポーツだ。生まれたのはイギリスらしく、さすが身だしなみに気を使う紳士淑女の国と言った感じだ。

ただし「アイロンの出来」は評価対象にならず、大気圏突入アイロニングでシャツが灰塵に帰していようとマイナスにはならない。こういうユーモアを忘れないところも英国らしい。

過酷な状況に身を置くという点から高齢者などには向かないスポーツのように思えるが、冷静に考えればスターバックスでアイロンをかけるのも相当過酷である。

エクストリームアイロニングメンタル部門を設立すれば、全年齢が楽しめるスポーツとして競技人口が増えること間違いなしなのでぜひ検討してほしい。

このエクストリームアイロニングの良いところは状況が特殊でもアイロンは普通にかける、という点である。

つまり、ちゃんとメーカーが推奨する使い方をしているということだ。

糖質カット炊飯器の実態が炎上、客のほうも「うまい話」にはご用心

  • 崖っぷちでもクールに炊飯する競技がいずれ登場する、かも……?

先日、我が国ではアイラップを炊飯器で炊いて爆発させる競技が定期的に流行る、という話をした。

確かにエクストリーム度は申し分ないかもしれないが、炊飯器を適切に使っていないという点から正式競技に認められる可能性は低い。

米は日本の主食であることから、おそらく炊飯器を使った第二の国技を生み出そうという目論見があるのだろう。

そんなエクストリームスイハンキングの模索の一貫なのか、爆発に続いて炊飯器が炎上する出来事があった。

その競技用炊飯器は別名「糖質カット炊飯器」といい、主な購買層は高齢者という点からもエクストリームスイハンキングがシニア向けスポーツを目指しているということがわかる。

糖質カット炊飯器はその名の通り、普通に炊くだけで糖質がカットされた米が炊けるという触れ込みで、高齢者をはじめ、糖質を制限したい人向けに販売されていた。

しかし、そこまで糖質がカットされていない気がする、もしくは粥ができる、などの問い合わせが多数あったことから、消費者生活センターからの依頼で国民生活センターが実験を行った。

その結果、確かに普通の炊飯よりは糖質が少なくなっていたが、メーカーがうたったほどの減少率ではなかったと発表され、炎上ともいえる大きなエクストリームを起こすこととなった。

そもそも糖質カット炊飯器がどのような仕組みかというと、何らかの方法で糖質を破壊するなどの革命的なものではなく、炊飯の際に出される糖質を含んだ「煮汁」を排出するという単純なものである。

この手法で糖質が大幅にカットされるとしたら、他の栄養も全部汁に出てしまっていると言っても過言ではなく、それはそれで問題だ。

この発表に対し「誇大広告の事実はない」と異議を申し立てるメーカーもあり、実際そこの製品に関しては実態と乖離した悪質な表示はされていなかったようである。

ただし、糖質を含んだ煮汁を多く出させるために、通常より水分を多めにして炊飯させていたことから「普通に粥やんけ」という苦情が来ていたことも事実だろう。

「糖質だけがカットされた普通の米」が食べられると思って買った人にとっては納得がいかないものだったのだろうが、正直ヘルシー系家電に関しては「そんなうまい話はない」と思った方がよい。

ちなみに今のは「上手い」と「美味い」をかけているのだが、説明すべきではなかったと後悔している。

我が家にも油を使わず揚げ物が作れるというエアーフライヤーがあるのだが、何せ油を使わないため基本的に「パサつく」。

からあげやとんかつなど食材自体が油を含んでいるものはそれなりに上手くできるが、やはり油で揚げた方が美味いと言わざるを得ない。

だがそれでも鶏は鶏ハムのみ、豚は絶滅したという設定で生きるしかなかった人間にとっては食生活に彩りを添える家電と言える。

同様に糖質カット炊飯器も、普通の米から糖質のみを消し去ってくれる魔法ではなく、完全な粥や仏様に供えるがごとき少量の米で我慢するよりはマシなものが食える、という気持ちで利用すればそれなりに満足いくものだった可能性はある。

商品に対する苦情というのは、何割か「この世には魔法がある」と信じている無邪気な人たちがしているのかもしれない。