今年も「いつどこで流行った?」でおなじみの流行語大賞の季節である。
しかし、よく考えてみれば流行語を見せられた時の我々の反応は「いつどこで流行った?」と「普通すぎてつまらん」の二種類だけのような気がする。
流行語よりも、こんな何を出しても文句をいう上に語彙が死んでいる連中相手に何かを発表しなければならない、担当者の皆様に何かの賞をあげたい。
一見オタクに優しい「ネット流行語」、だけど何だか語りづらい
最近は流行語大賞と言っても一つではなく、ジャンルも細分化されつつある。今回担当からテーマとして出されたのは「ネット流行語100」だ。
ネットと言えば、私の庭大遊戯場アゲハ蝶、冷たい水をくださいできたらトイレを貸してください、である。
しかもこのネット流行語100は、「ニコニコ百科事典」、そして我らが「pixiv百科事典」が主催である。これは正直、ノミネートされた言葉全部知っているまである。
ちなみに「まである」という表現は去年の流行語に入っていたのだが、あらゆる媒体の原稿でこの表現を使ったところ9割の確率で赤を入れられた上、「今はこういう言い方が流行っているんです」と説明した上で通らなかったので、ますます「流行語大賞実はそんなに流行してない説」の信憑性が増してきた。
主催のラインナップを見てわかるように、このネット流行語100には漫画やアニメ、ゲーム関連の言葉が多く選出されているそうなのでさっそく1位から3位までを見てみよう。
1位「ウマ娘」、2位「ゴールドシップ(ウマ娘)」、3位「呪術廻戦」である。
この時点で嫌な予感がしているが、全くその通りであり、このネット流行語100はひたすら今年人気のあった作品名とそのキャラクターの羅列になってしまっているのだ。
その結果、何にでも文句をつける俺たちの中でも頂点に君臨するオタクですら、「うん今年その作品とそのキャラ人気あったよね」としかコメントできないものになってしまっている。
同一作品内のランキングであれば「このキャラがあのキャラより上なのはおかしい」という学級会的盛り上がり方もできるが、全ジャンル、さらに作品名もキャラも全部一緒にしてランキングにするという大皿料理を出されると、俺たちお得意の「重箱の隅つつき」がかえってしづらい。
ゴルシだけが「別次元」で大活躍
だが、そんな中でも光り輝いているのが5位の「ゴールドシップ」である。ゴールドシップはすでに2位で登場しており、この時点で、2位ゴールドシップ「みんなありがとう!」、5位ゴールドシップ「くっゴールドシップに負けた!」というボーボボ総選挙状態で面白い。
最初は何かのミスでダブったのかと思ったが、2位は「ゴールドシップ(ウマ娘)」であり、5位は「ゴールドシップ」と書かれている。
おそらく5位のゴールドシップはウマ娘のゴールドシップの元ネタ、つまり「馬」である。これだけ漫画やゲームとそのキャラしか並んでいない中で、「馬」が入っているというのは快挙といえる。
他にもどさくさに紛れて馬がぶっこまれてないかと探してみたが、他にランクインしているのは全てウマ娘の方であり、リアル馬はゴールドシップだけである。
さらに43位には「120億事件」がランクインしている。120億事件とはリアルゴールドシップが1番人気のレースで記録的出遅れをかまし、ゴルシに賭けられた120億円が紙くずになったというリアル事件である。
パッと見つまらないランキングのように見えたが、よく見れば二次元の中でゴルシだけが三次元を展開しているという、ずっと見ていたら文字通り異次元に吸い込まれそうな恐怖ランキングになっている。
また、67位「どけ!!!俺はお兄ちゃんだぞ!!!」など、作品やキャラだけではなく「セリフ」もランクインしている。
他にセリフのノミネートがないか探したところ「このバナーをクリックしたことがない者だけがFANZAをブクマしてる奴に石を投げろ」でおなじみの「男の人っていつもそうですね…!」がランクインしている。
89位の「やっぱりチョコですわ」も何かのキャラのセリフかと思い調べてみたら、「スーパーのポップに書かれていた文言」であることが判明したりと、よく見ればかなりフリーダムなランキングとなっている。
流行語というぐらいなので、人気のある作品やキャラを並べるよりは、作中の印象深いセリフなどをノミネートしたほうが「このセリフ入れるとはわかっとるやんけ」や「『ステーションバー』が入っていないのはおかしい」など、オタクは気持ちの悪い盛り上がり方をできるのではないかと思う。今後に期待だ。
個人的にやって欲しいのは「Twitter炎上大賞」だ。「ポテサラ手作り爺」や「ラーメン評論家ブログ」など、その年Twitterで炎上したワードをランキング化してほしい。
だが、並べたところで我々はその99%を忘れているだろう。所詮Twitterの炎上など年を跨がず忘れるのだから気にしてもしょうがない、ということを再確認するためにも必要である。
「カレー沢薫の時流漂流」、2022年1月3日(月)は休載いたします。次回更新は2022年1月10日(月)です。