「よその原稿を送ってないですか?」

先ほど某媒体からこのようなメールがあった。

私は、小さい仕事でも数をこなして何とかするという作家として完全な消耗戦に入っているため、正直なところ原稿の誤送信は結構ある。

その上、幸い私が書くものは「どれも同じようなもの」なため、先方もどれを送られても大差なかったりする。

しかしあまりにも大差なかったため、先方も他所の原稿が来たと気付かず、2媒体に同じ原稿が載ってしまうという事件もあった。

幸いWebだったためすぐに差し替えることで事なきを得たが、紙なら即死、と言いたいが私の原稿には「誰も読んでいない」という特徴があるため、それでも気づかれなかった可能性はある。

ただ例外として、「漫画ゴラクの原稿を他所に送るのは少しマズい」というのがある。

会社の人間に突然卑猥なメールを送りつけたらそれは紛うことなきセクハラだろう。「ゴラクの原稿を送る」というのは大体それと同義なのだ。

幸い今回「原稿間違ってるぞ」と言ってきたのはゴラクのほうで、ゴラクになら何を送っていても安心である。そもそもゴラクに送ってダメな原稿は、書いたところで載せる媒体がない。

ちなみにゴラクの原稿を誤爆した時の対処法は「冷静」である。内容には一切触れず、「他所の原稿を送ってしまいました、すみません正しい原稿再送します」という、事実と謝罪、対応策以外言ってはならない。

こちらが下手に「このような原稿を送ってしまい」などというと、相手も「このような原稿を送りつけられた」という事実に気づいてしまうからだ。

だが、原稿の誤送信というのは誤爆の中でも「屁と思ったら実弾だった」程度のボヤである。それよりマズいのは、請求書類だ。

他媒体の原稿料がバレると「うちもこの値段でやれ」と言われるかもしれないし、最悪「ボられた」という話になってしまうかもしれない。

Cc誤入力送信をしてもいいのは80歳まで?

そうはいっても、原稿も原稿料も自分の情報なのだから、誤送信してしまっても被害を受けるのは自分だけなのでまだ良い。それより大問題なのは他所の情報を他所に誤送信してしまった時である。

そんな他人の情報漏えいの中でも、三十半ば過ぎの尿漏れレベルで、頻繁かつ当たり前のように漏れているのが「Ccに入っている見ず知らずの人間のメアド」ではないかと思われる。

同じ内容のメールを複数人に一括送信するとき、Ccにアドレスを入力してしまうと、受信者は他の一括送信された人たちのアドレスを見ることができてしまうのだ。

これはアドレスをBccに入力することで防げる。良くある凡ミスではあるのだが、時はすでに令和である、そろそろ「Ccに他人のメアドをしこたま入れて送って許されるのは80歳以上だけ」という条例を作るべきなのではないか。

先日、とある公的機関がBccに入れるべきアドレスをCcに入力したことが原因で400件ものメールアドレスが外部流出するという事件があった。

一体どこの限界集落の村役場がやらかしたのか、と思うかもしれないが、むしろそのほうが「職員が全員80歳以上」があり得るので酌量の余地がある。

この大量Cc誤入力送信をやったのはこともあろうに「デジタル庁」だったのだ。

だがもっと残念なのは「このCc部分をクリックしたら大量の他人のメアドが現れて本文が見えなくなるメールを作ったのは誰だ!」と海原雄山が切れて、デジタル庁がそっと手を上げても、周りの美食倶楽部の面々こと国民がそんなに驚いていない、という点である。

デジタル庁に寄せられる、国民の「逆・期待感」

  • Cc欄をミチミチにして送る一斉メール、令和の世とのギャップがすごい…

    Cc欄をミチミチにして送る一斉メール、令和の世とのギャップがすごい…

できた当初から国民の「デジタル庁」に対する期待は極めて低かった。

どう見ても「デジタルのことなら俺様に任せろ」という不遜な輩ではなく、「皆さまと一緒にデジタルについて勉強させていただければと思います」という、謙虚な面々が集まってしまったようにしか見えなかったからだ。

実際にデジタル庁が言うことは今更なことが多く、むしろどれだけデジタル庁の名に恥じることをしてくれるか、別次元の期待すら起こっていた。

そういう意味では今回のCc誤送信は「そうきたか」と盤面の前で唸るにふさわしい一手であり、さらにそれに対する「今後は厳重に注意し、再発防止に努める」という釈明には「まいりました」と投了を宣言する他ない。

むしろデジタル庁も庁内で「どれだけデジタルと真逆の釈明をするか」という大喜利を行い、一番ウケた奴を採用したのではないだろうか。

もしそうだとしたら、デジタル庁にはなかなかセンスの良い奴がいる。ただデジタルのセンスがある奴はいなかったことだけが悔やまれる。

このコメントに対して、国民からは当然「対策が『がんばる』かよ」と呆れの声が上がっているが、おそらく国民にとってこの釈明は「想定内」と思われる。

それよりみんなが気になっているのは「CCに400件のアドレスをどう入力したか」ではないだろうか。

もしかして、1件1件アドレスをコピペ入力したのだろうか。

よもやとは思うが「デジタル庁ならやっているかもしれない」という逆期待感がある。対策はもういいからそこだけ発表してもらえないだろうか。