皆さまは「ゲームセンター」と聞いたらどんなイメージを抱くだろう。

イメージ以前にもはや「ゲーセン」は「ネッシー」と同レベルの都市伝説、もしくは「ストリップ小屋」のように、昔そういうものがあったらしい、という認識の若人も多いかもしれない。

だが「ゲーセン」よりも「ネッシー」の方がはるかに通じないことに気づいていない方が老としては深刻であり、そもそも「最近の若い子はゲーセンなんか行かないよね」という認識こそが中年そのものなのかもしれない。

このように、もはや何が新しくて何が古いかわからず、ババア扱いされないように言うことが探り探りすぎて話が前に進まなくなったら立派な中年である。

ちなみに「ストリップ小屋」は昔あった、ではなく今でもあり、最近「ストリップ小屋内で裸を見せた」として経営者と踊り子が逮捕されるという不思議な事件があった。客としては裸を見せない方が「警察を呼べ」だと思う。

世紀末ゲーセン伝説の語り部がTwitter上に大集合

そんなワケで今ゲーセンが世間でどういう立ち位置にあるのかはさっぱりわからないが、先日「漫画とかでゲーセンが不良のたまり場になっている描写を見るが、実際にはそんなの見たことがない、都市伝説だろう」という旨のつぶやきがTwitter(ツイッター)に流れ話題になっていた。

ツイッターに「誤った認識」が投下されると瞬時に火をつける班と風を送る班が出動し、出遅れると「元が何だったのかわからない灰」しか残ってなかったりするのだが、本件に関しては間違いに対する怒りによる炎上ではなく、戦争を知らない子どもを発見した昭和一ケタ生まれが「空襲や疎開の話をする千載一遇のチャンス」とばかりに群がって話題になった、という感じだ。

つまり「ゲーセンが不良のたまり場なんて都市伝説」というツイートに対し、「お嬢ちゃん、いい時代に生まれて来て良かったね、俺が若いころは」と、昔のゲーセン伝説が次々と寄せられた形である。

若人にとっては老の「昔は俺もワルだった話」だけでも相当ウザいであろうのに「俺が昔ゲーセンで見たワルの話」なんて始まった瞬間、まぶたに目を描いて意識を手放したいだろうとは思う。

しかし、年を取ると昔話がしたくなるし、「昔話をするチャンス」に対し「逃すかあ!」と老とは思えぬ瞬発力を発揮してしまうものなので、未来の自分の繰り言を聞いていると思ってご容赦いただきたい。

私だってアンジェリークとかの話になれば「今の乙女ゲーは優しくて最近の若い人は幸せ」と言いながら、今すぐ塀を飛び越えて駆けつけるだろう。

「ジャンプしてみろよ」が都市伝説になるまで

  • 時は令和、灰皿も遠くなりにけり…

    時は令和、灰皿も遠くなりにけり…

集まってきた「戦争を知っている俺たち」談によると、昔のゲーセンは本当に荒れており、むしろフィクションの描写の方が生ぬるいという。

昔のゲーセンが薄暗いのは周りが明るいとゲームの画面が見づらいためであり、そこからゲームセンターは暗いというイメージになり、あまり太陽が似合わない人たちが集まるようになったようだ。

カツアゲなども実際にあり「ジャンプしてみろよ」も創作ではないそうだ。ちなみに何でジャンプさせるかというと面白いからではなく、小銭の音で金を持っているかどうか判断するためだ。

今後電子マネー化が進み小銭を持ち歩く習慣がなくなったら、このジャンプ描写は全く意味不明となり、「昔の不良は人をジャンプさせるのがそんなに愉快だったのか」と誤解されてしまう。

また当時ゲームセンターのゲームといえば、シューティングゲームや対戦格闘ゲームが主流であった。

今でもスマホで対戦ゲームをしていると、相手の頭をカチ割ってやろうかと思うようなシーンに遭遇することはよくある。しかし、怒りに任せてスマホを二つ折りにしたところで昔懐かしい形になるだけで、相手の後頭部とかかとをキッスさせることはできない。

一方ゲーセンの場合、頭を割りたい相手がゲーム機を挟んで向かい側にいるのだ。そうなったらもう「割らない方がおかしい」のである。

よって、昔のゲーセンでは、対戦ゲームをしていて向かい側から灰皿や椅子が飛んでくるというのは日常茶飯事だったそうだ。

そんな世紀末ゲーセンが都市伝説と化したのは、クレーンゲーム、そして「プリクラ」が現れたことにより、女性を中心に不良やゲーマー以外の客が来るようになり、それに合わせ店内も明るくなったのがきっかけだという。

確かに私が小学生の時はゲーセンと言えば薄暗くタバコ臭いところだったが、ペリー(ジャックフロスト)が黒船(プリクラ)に乗ってやってきた中学生ごろにはすっかり明るい雰囲気になっていた記憶がある。

伝説の語り部の「共通点」

ではそんなゲーセン世紀末時代を当時の人間が苦々しく思っているかというと「どれだけボコられようとも俺たちは新しいゲームを求めゲーセンに行っていた」、「なんだかんだで不良とも共存してきた」など、「バカしかいねえけど俺はあの時のSWORD地区が嫌いじゃなかった」みたいなハイローみを感じるコメントが多くてとても良い。

また、コメントをしているのが不良側ではなく、不良と渡り合ってきた俺たち、もしくはそれを見ていた側がほとんどなのも特徴だ。

確かに不良側であったら「俺も昔は餓狼伝説スペシャルを挟んでオタクどもとバチバチやってた」なんて話をガールズバーでしたりはしないだろう。

本来なら不良とは全く関係ない、ゲームに明け暮れていたような人間にとって、ゲーセンという場で不良と同じフィールドで戦った、また戦っていないにしても、そんな危険な場にいた、というのは確かに「今思えば貴重ないい思い出」になってもおかしくはない。

もし職場に何を話していいかさっぱりわからない中年がいたら「ゲーセンの話」を振ってみると意外と盛り上がるかもしれない。

しかしその際は「想像以上に長くなる」ことも覚悟してから振ってほしい。