今年も「流行しているどころか、初めて聞く言葉が毎年一つはねじ込まれている」でお馴染みの「流行語大賞」が発表された。

流行語大賞と言えばユーキャンが発表しているものが有名だが、三省堂も発表しており、今年より注目されたのはどちらかというと三省堂らしい。

両者は選考スタンスが異なり、ユーキャンは企業の広報的な意味合いが大きく、商業的な言葉が選ばれやすいようである。つまり、今年の経済を花びら大回転させた功労者に贈られる傾向があるそうだ。

それならば、経済に片栗粉を流して停滞させる側の我々が知らない言葉が出てくるのは当然と言えよう。

3密・あつ森・鬼滅…2020年のヒット現象がランクイン

そんなユーキャンの今年の流行語大賞は「3密」で、他には「あつまれどうぶつの森」「愛の不時着」「鬼滅の刃」「アマビエ」「GoToキャンペーン」などがトップ10入りしている。

「愛の不時着」は知らなかったので調べたところ、韓流ドラマだそうだ。これが鬼滅やあつ森に並ぶあたり、選者の年齢層が出ているような気もするが、話題が年代によって変わるのは当然だ。

一口に「ガールズトーク」と言っても、20代ぐらいまでは恋愛や美容の話が主流で、30代から老化や親の介護が差してきて、ある一定の年齢を過ぎると「己の病気」の話が不動の一位となる。

寝ている間に自分のリアル呼吸が止まっているかもしれないのに、「水の呼吸 壱ノ型 水面斬り!」などと言っている場合かという話だ。だが、仮に選者の年齢が高かったとしても、それでもランクインする鬼滅やあつ森がすごいということである。

そもそも、今年「コロナウイルス」の話題を避けるのは、香川でうどんを無視するぐらい難しい。まともにやったら、「1位コロナ(みんなありがとう)」「2位コロナ(神に感謝)」「3位コロナ(フン)」「4位コロナ(くっコロナに負けた…!)」という、ボーボボ人気投票状態になってしまう。

実際、ユーキャンの流行語ランキングはコロナに関係した言葉のランクインが目立ち、そのせいで意外性のない結果になってしまったようだ。

一方、三省堂の流行語大賞は「今後辞書に登録されてもおかしくない、今年特に広がった言葉」というテーマで選ばれている。つまり、会話やSNSなど、日常でよく使われた言葉などが選ばれやすく、今年流行ったのなら、今年生まれた言葉でなくても良いそうだ。

ちなみに三省堂は、「コロナさんに出場されたら勝負にならないので、ここはひとつ、こちらの特等席で高みの見物と洒落こみませんか?」と「コロナ枠」を作ることにより、ランキングがボーボボ状態になることを防いでいる。

三省堂の流行語大賞はあの言葉

  • 自分が使うかはともかく、この絵文字を目にする機会、確かに今年は多かったかもしれません

    自分が使うかはともかく、この絵文字を目にする機会、確かに今年は多かったかもしれません

そんな三省堂の流行語大賞に選ばれたのは「ぴえん」だ。

「ぴえん」とは、スマホなどで「ぴえん」と入力すると出て来る、目をうるうるさせて泣いている絵文字のような状態を指す。

「先日書面でお知らせしたとおり、ご自宅を差し押さえいたします」に対し「ぴえん」と言う感じで、主に悲しいことやショックなことがあった時に使われるが、嬉しいことがあった時にも使うことがあるらしい。

ちなみに私は、ぴえんの絵文字も言葉も使ったことがない。やはりBBAが使うには若干抵抗があり、痛いと思われそうなので、悲しいことがあった時はつい「耐えがたきを耐え、忍び難きを忍び」もしくは「フリーザー!!」など古いことを言ってしまう。

実際、ネットの反応を見る限り、中高年以上は「ぴえん」が一位といわれてもピンとこなかったようだ。

ちなみに、本当にぴえんが辞書に載るとしたら「悲しいことがあったときなどに上げる軽い泣き声。また、その泣くときの様子やその声の形容」といった説明になるようだ。こう書かれると、平安時代からあった言葉と言われても信じてしまいそうである。

2位は「○○警察」だ。○○警察とは「○○にはうるさい人」のような意味合いで、例えば「和服警察」なら「胸元からサソリのタトゥーをのぞかせるなんて正しい着こなしではない」など、その人にとって正しくない行為をしている人間を、どこからともなく現れて取り締まる存在である。

「○○警察」に本物の国家公務員は多分おらず、勝手に取り締まっているにすぎない。ツイッターに常駐している人間なら、今まであまたの警察を見てきているため「今更」という感じもするが、今年は外出自粛をしない人間に対し、逮捕をすっ飛ばして罰を与えようとする「自粛警察」の活躍を受けてのランクインだろう。

他には6位の「優勝」が個人的に目を引く。「炊き立てごはんに、卵としょうゆをかけて、窓からドーン! 優勝です」という風に、主に美味しいものを食べて「大満足」のような意味で使うそうだ。

しかし私は、今までこの言葉を「マッチングアプリで出会った人妻と、子どもが幼稚園の間に優勝です」というような意味だと考えていた。三省堂はずいぶん攻めた選出をするなと思っていたので、真の意味を聞いて驚愕した。私が想定していた「優勝」の意味は文脈から察してほしい。

あと、8位は「まである」だが、おそらく「負けるとは限らない、勝つまである」など、「可能性がある」という意味の言い回しだと思われる。

それを踏まえて、別のコラムで「私は売れている漫画は軒並み嫌いだが、鬼滅の刃はそこまでムカついていない、正直読むまである」と書いたところ、意味が通じなかったらしく「ごりごり」(第7位)に修正された。

このように、流行語といっても知らない人は全く知らないので、何が選ばれても「それほんとに流行ったか?」と言う人間はいなくならないのである。