経営方針説明会でクラウドへの注力を宣言したマイクロソフトの樋口泰行社長

マイクロソフトは、クラウドに賭ける -- マイクロソフトの樋口泰行社長は、7月6日に開いた2011年度(2010年7月 - 2011年6月)経営方針説明会の席上、クラウドビジネスに力を注いでいく姿勢を改めて強調した。

2010年3月4日に、米Microsoftのスティーブ・バルマーCEOが、クラウドコンピューティング分野にリソースを集中させることなどを発表。「4万人の社員のうち、70%の社員がクラウド関連のビジネスに参加する」と発言し、同社がクラウドビジネスに大きく舵を切ったことを示した。それ以来、クラウドへの取り組みは、同社の最優先課題に位置づけられている。

この時、発表したメッセージが、「We're all in.」- その後、同社のクラウド関連の発表では、必ずこのメッセージを使用したロゴマークが使われている。"all in"という言葉が、トランプゲームのポーカーにおいて、「手持ちのすべてを一気に賭ける」という意味であることを捉えれば、青い雲の部分に「all in.」の文字が描かれたこのロゴマークは、まさに「クラウド(雲)にすべてを賭ける」という想いが込められたものだといっていい。マイロソフト幹部のクラウドに関する最近の発言は、その言葉通りのものだといえよう。

樋口社長も今回の会見では、日本法人において、クラウドビジネスへの取り組みを加速していることに言及。90%以上の社員がクラウド関連事業に従事するとともに、法人向け全事業部門にはクラウド専任部隊を配置。専門部隊だけで約100人の体制を整えるとした。

クラウドサービスのロゴ。"雲に手持ちをすべてを賭ける"という意味をこめているのか!?

さらにクラウドビジネスにおけるパートナー戦略の推進にも余念がない。

現在、クラウド領域において350社の認定パートナーがあるが、これを今年度中には1,000社に、3年後には7,000社に拡大する。「7,000社とは、当社と取引関係があるすべてのパートナーに匹敵する規模」(樋口社長)と、ここでも「all in.」の体制が敷かれることになる。

パートナーの拡大に当たっては、まずはマイクロソフト製品を取り扱ったことがないパートナーからリクルートをしたのも特徴的だ。実は350社のうち約半分が、これまでにマイクロソフト製品を取り扱ったことがないパートナー。また、クラウド認定パートナーには、従来からのマイクロソフト認定パートナーとは別の審査基準を設け、マイクロソフト認定技術者(MCP)を2人以上配置するなどの基準がない「登録パートナー」が参加できるようになっている。

マイクロソフト製品でオンプレミス型ビジネスを展開しているパートナーが、既存ビジネスと食い合うことを懸念して二の足を踏んでいるのを尻目に、新たなパートナーがクラウド認定パートナーとして急速に増加している背景はここにある。

さらに、Windows Azureに関しては、富士通との協業を発表。2011年からはFJ-Azureとして、群馬県館林の富士通のデータセンターを活用したクラウドサービスを提供。日本国内にデータセンターがないとされ、官公庁や金融分野から敬遠されていたマイクロソフトのクラウドビジネスにも弾みがつくことになろう。

パートナーも巻き込んでクラウドビジネスに注力するとのこと。オンプレミスとは異なるパートナーが続々と名乗りを上げているという

一方で、マイクロソフト社内では、社員を対象にしたクラウドトレーニングを実施し、全社におけるクラウドスキルの向上にも取り組む。

法人向けビジネスを担当している社員を対象に1日がかりで実施されたオンサイト型トレーニングイベントには約800人が参加。この対象にはならなかった社員に対しても、オンライントレーニングで約800人が受講。これまでに例がない規模で社内トレーニングが実施されているのだ。

新年度からは、いよいよWindows Azureにも正式な営業予算がついた。Windows Azureのボリュームライセンスの開始やBPOSの新バージョンの投入に加え、CRM製品であるDynamics CRM Onlineや、オンラインセキュリティサービスのWindows Intuneといったサービスも開始されることになる。

そして、「ExchangeおよびSharePointにおいては、オンプレスとクラウドを、今年度中に同等規模のビジネスにまで引き上げる」と樋口社長は意気込む。「We're all in.」の体制は、日本でも、一気に形になろうとしている。