9月8日(日本時間)、米AppleはiPhoneの最新モデル「iPhone 14」「iPhone 14 Pro」シリーズを発表しました。発表内容を読み解くと、Proとスタンダード(無印)との差別化がかなり明確になっていることがわかります。新モデルのポイントをおさらいしてみましょう。
「Pro」を象徴する4つの大きな違い
iPhone 14 Pro/Pro Maxは、これまでのモデルと比較してスタンダードモデルとの違いを明確にするアップデートが加えられました。主に、下記の4点です。
1)ダイナミックアイランド
これまで本体上部にあったノッチ(切り欠き)が廃止され、フロントカメラの配置エリアが黒い長丸に置き換えられました。「ダイナミックアイランド(Dynamic Island)」という名称です。
ダイナミックアイランドはその名の通り、iPhoneの状態に応じて動的に役割を変えます。通常は黒い長丸ですが、通知バナーになったり、音楽再生のコントローラになったり、バックグラウンドで動作するアプリを表示するなど、柔軟に形や表示内容が変化します。
ハードウェアとソフトウェアのシームレスな連携がつくる体験は、iPhoneならでは。久しぶりにAppleらしい新鮮さのある新機能が登場しました。
2)48MPカメラ
カメラは昨年モデルから引き続いて広角・超広角・望遠の3カメラ構成ですが、メインの広角カメラが12MPから48MPへと大きくアップデートされました。イメージセンサーのサイズは前モデルと比べて65%大きく。また、単に解像度が高くなっただけでなく、新たに画像処理のための「Photonic Engine」を搭載し、暗い場所での表現力や繊細な質感の描画が向上。超広角カメラと望遠カメラも、暗い場所での撮影性能が強化されています。
動画撮影では、手持ちで走りながらでも滑らかな撮影が可能な「アクションモード」を新たに搭載。フォーカスの編集ができる「シネマティックモード」は、撮影サイズが1080pから4K HDR対応へ強化されています。
3)常時表示ディスプレイ
Apple Watchではお馴染みの常時表示ディスプレイが、Proモデルに採用されました。iPhoneに触れたり、持ち上げたりしなくても画面の情報を見ることができ、iOS 16の新機能であるロック画面のウィジェット機能との相性は最適です。
バッテリーへの影響が気になるところですが、画面のリフレッシュレートを最小1Hzまで下げたり、インテリジェントに明るさを下げるなど、省電力テクノロジーを用いることでこれを実現しています。
4)A16 Bionicチップ
iPhone 14 Pro/Pro Maxに搭載されるプロセッサは、新しく開発されたA16 Bionicです。Appleとして初めて4nmプロセスを採用し、これまで以上に高性能・省電力であることが特徴です。高度な画像処理や常時表示ディスプレイも、このチップによるところが大きいと言えるでしょう。
スタンダードモデルは「mini」廃止、6.7インチの「Plus」登場
一方のスタンダードモデル、iPhone 14は小幅なアップデートにとどまりました。もっとも大きな違いは、小ささが売りだった「mini」が廃止され、「Pro Max」と同じ6.7インチサイズの「iPhone 14 Plus」が登場したこと。iPhone 8 Plusで途絶えていた「Plus」が、スタンダーモデルの大型版として復活した格好です。
iPhone 14/14 Plusのスペックは、ほとんどiPhone 13と同じです。これまで「Pro」シリーズと共に毎年アップデートされてきたチップも、今回はiPhone 13から引き続いてA15 Bionicを搭載。前モデルとの違いを挙げるなら、フロントカメラのオートフォーカス搭載、Photonic Engine搭載、衝突事故検出など、かなり細かい部分と言えるでしょう。
今年も、前モデルであるiPhone 13がストアのラインアップに残されています。「Proを選択しない」ユーザーにとっては、多くの場合iPhone 13でも機能的に大きな不満は出ないのではないでしょうか。むしろ、ほぼ同等のも製品を少し安く買うための選択肢となるかもしれません。
衛星経由の緊急SOSは、まず北米から
事前情報でウワサされていた、衛星を利用した緊急時の通信機能は、11月から米国とカナダのユーザーを対象に提供されることが発表されました。「2年間は無料」とのことですが、その後の価格・提供条件などは明らかになっていません。
ただ、注目したいのは単に衛星経由でSOSを発信できることにとどまらず、「発信」から「助ける」までの道筋をAppleがきちんと用意している点です。衛星で送れる情報量はごくわずかです。救助に必要な情報を的確に送る仕組み、状況を適切に判断する地上の担当者、救助に当たる当局への連携がなくては、確実な救助に結びつきません。
おそらく、保険会社や医療・救急、救難救助の関連当局等を交えた仕組みづくりが必要だったと想像されます。日本において特定の企業がこうした仕組みづくりをできるかというと、かなり時間がかかるのではないでしょうか。日本国内のユーザーにとってはまだ遠い話になりそうです。