あの頃も今も、コンピュータは楽しい機械です。仕事に趣味に、コンピュータとともに過ごしてきた読者諸氏は多いことでしょう。コンピュータ史に名を刻んできたマシンたちを、「あの日あの時」と一緒に振り返っていきませんか? 今回は2008年に登場したASUS「Eee PC 901-X」です。「ネットブック」の先駆けとなったマシンでしたね。
回線とのセット契約によって、ノートPCを1万円台で購入可能に!
「ネットブック」とはローエンドのCPU、最低限のメモリとストレージ、小型の液晶ディスプレイを組み合わせることで低価格を実現したモバイル向けノートPC。そのなかでもメモリ、ストレージをアップグレード可能な拡張性の高さから支持を集めたのが、ASUSの「Eee PC 901-X」です。
CPUはDiamondville世代の「Intel Atom プロセッサー N270」(1コア、1.60GHz)を採用。メモリは1GB(DDR2)、ストレージは12GB SSD(4GB+8GB)を搭載。ディスプレイサイズは8.9インチ、解像度は1024×600ドット。本体サイズは約225×175.5×39 mm、重量は約1.1kg、バッテリー駆動時間は約8.3時間と、モバイル用途に向いたスペックが人気を博しました。
Eee PC 901-X、というよりネットブックが人気を集めた最大の理由は、モバイルルーターとのセット販売で非常に安価に入手できたため。イー・モバイル(現ワイモバイル)などのモバイルルーターとセットで購入すれば、当時の市場想定価格が59,800円前後の「Eee PC 901-X」を1万円台で購入できました。イー・モバイルの少々割高な料金プランを2年間契約し続けなければならないため、実質的には分割払いで購入したのと変わりはありませんが、それでも少ない初期費用でネットブックとネットワーク回線が入手できるのは魅力でした。
Eee PC 901-Xが人気を集めたもうひとつの理由が拡張性の高さ。キーボード側に4GBのCドライブ、底面側に8GBのDドライブを搭載するという複雑な構成でしたが、ドライバーのみで分解、ストレージ換装が可能だったのです。ストレージの容量が増えるだけでなく、アクセススピードも向上するので、多くのユーザーが改造にチャレンジしました。国内メーカーのバッファローからも、換装用SSDが発売されていたほどです。
Eee PC 901の思い出
筆者はEee PC 901-Xの後継モデルにあたるEee PC 901-16Gを購入しました。前述のとおり、当時がイー・モバイルとのセット販売が盛んでしたが、すでにイー・モバイル端末を持っていたため、通販サイトの最安値で購入しました。
当初は素の状態で利用していたものの、メモリ、ストレージ容量がモノ足りなくなったため、メモリを1GBから2GBに、ストレージを16GBから64GBに増設。同じタイミングで英語キーボードに変更しています。
安さが売りの「Eee PC 901-16G」ですが、結局かなり高くついているので本末転倒ですね。でも、メモリとストレージを換装することで、OSの起動時間が大幅に短縮、体感速度が向上したのもよく覚えています。
1年ほどモバイル用PCとして愛用しましたが、新しいノートPCを購入する資金の足しにするため、当時所属していた某編集部の同僚に売却。この「Eee PC 901-16G」は、同僚のお嬢さんの初PCとして、余生を送ったとのことです。
パフォーマンスはややモノ足りなかったですが、8.9インチディスプレイを搭載したボディーは絶妙なサイズでした。いまでもオークションで程度のいい出物を見かけるたびに、ついつい入札したくなります。
2008年7月、あの日あの時
2008年7月29日(日本時間30日)、米国のプロ野球、マリナーズ所属のイチロー選手が日米通算3,000安打を記録しました。2017年シーズン終了時点の日米通算安打数は4,358本、MLB通算安打数は3,080本。いつまでもイチローの雄姿を見ていたいというのは、全野球ファン共通の思いではないでしょうか。
2008年7月31日には、バンダイナムコゲームスから3D武器格闘アクションゲーム「ソウルキャリバーIV」が発売されました(PlayStation 3用、Xbox 360用)。6作目にあたる本作はソウルシリーズの集大成的作品で、豪華すぎるゲストキャラクターでプレイヤーを驚かせました。PlayStation 3用にはダース・ベイダー、Xbox 360用にはヨーダがゲストキャラクターとして登場しています。
2008年7月11日、「iPhone 3G」が発売されました。日本で最初にiPhoneを持ち込んだのはソフトバンクモバイル。ソフトバンク表参道店では、7月11日午前7時から先行販売されましたが、1,500人を超える大行列が。ノートPCの価格を劇的に下げたネットブックの隆盛と同時期に、情報機器の主役がノートPCだった時代を終わらせたスマートフォンの真打ちが発売されたことには、運命を感じずにいられません。
いま(2017年末)、ネットブックという言葉はほとんど使われなくなりましたが、エントリーノートPCが5万円を切るのは当たり前。なかには税込み2万円台前半で購入可能なモデルも登場しています。かつてのネットブックは、ノートPCの価格帯を劇的に下げる役割を果たしました。ネットワークにアクセスするメイン端末としての座はスマートフォンに明け渡しましたが、ネットワークを身近なものとするために果たした功績は大きなものです。
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