その昔、「睡眠学習機」なるものが世に存在していた時代があった。枕なのだが、中にテープレコーダーが入っており、寝ている間に英単語などの音声が流れる。この学習機を使うだけで、目覚めたときには英単語が暗記できているという商品だ。ラクして成績が上がる。なんて素晴らしい! 学習雑誌に掲載されている広告を見て、私はそう思ったものだ。

大人になった今なら、暗記よりも美容のほうが大事。寝ている間に肌がきれいになる機械があったらどんなにいいだろう。この願いは、女性の心に潜む欲求だったようだ。この夢のような話が現実になった。パナソニックからナイトスチーマー ナノケア「EH-SA40」という商品が発売されたのだ。こちらは寝ている間がエステの時間になるスキンケア製品。名前のとおり、夜の就寝中に「潤風スチーム」と水に包まれた微細なイオンで弱酸性かつ親水性という特長を持つ「nanoe(ナノイー)」が放出される。使う人は寝る前にスイッチを入れるだけで、あとはその場に横になるだけでよい、という商品だ。なんと画期的。まったく新しいタイプの商品である。

パナソニック ナイトスチーマー ナノケア「EH-SA40」。潤風スチーム放出中

わくわく感を手に入れる

睡眠学習機が出回っていた当時、私の周りに睡眠学習機を使っていた同級生がいた。が、我が家にはなかった。なぜだったか記憶は定かではない。おそらく、親がそんな胡散臭いものに手を出してはいけない、と言ったのだろう。私の両親は額に汗することを美学として、今でも懸命に働いている。睡眠学習なるものに効果があったとしても、娘がラクして成績を上げること自体、よろしくないことだと思っていたのだろう。あるいは、夜はぐっすり眠るもの。学習は起きている間にするものだ、という真っ当な理由で反対したのかもしれない。とにかく、我が家には睡眠学習機はなかった。何年か経つと、睡眠学習機なるものを目にすることはなくなった。学習雑誌に広告が掲載されなくなったのだ。さほど効果がなかったのかもしれない。

所詮、ラクして何かを手に入れようなんて、甘いのである。でも、肌は別。美貌は別次元の話なのである。寝ながら手に入れることは不可能ではない。ナイトスチーマー ナノケアの魅力は「夢を見ながら得られる美」にあるのではないだろうか。何より使ってみて良かったのは、寝るときの「わくわく感」だ。スイッチを入れて床に就く。目が覚めると、そこには昨日の私よりも格段に美しくなった私がいる。もちろん、思い込み、妄想である。短期間で画期的に変わることはないし、この美顔器を使えば、誰でもがツルツル、プルルンな肌になる保証はない。でも、スイッチを入れた瞬間、明日はお姫様になっている自分、そんな未来にわくわくできるのだ。この商品の魅力は、寝るときの気持ちよさにあるのだと思う。

利用イメージ。畳でもOK。できればナイトテーブルくらいの高さが理想

寝る前の準備は、タンクに水を入れること、そして電源を入れること。この二つ。実に簡単だ。すると、約20分間、潤風スチームが放出され、肌に潤いが補給される。その後、自動的にnanoe発生に切り替わり、朝目覚めるまで放出が続く(nanoeの放出は8時間)。朝起きたら、電源を切ればよいのだ。まさに睡眠学習機ならぬ、睡眠美容器! こんなものが欲しかったという商品がナイトスチーマー ナノケアである。スチームが出るので、ふとんが濡れてしまうのではないか、と心配に思う方もいるかも知れない。が、大丈夫だ。お湯を沸かしたときに出る水蒸気とは異なるので、朝起きても、ふとんが湿っているということはない。周辺の床などにもしずくが落ちていることはなかった。安心して使える。

使用して2週間……

パナソニックからはほかにもスチーム式美顔器が発売されている。以前、旧型を使ったことがあるが、肌がしっとり潤うのがわかるので、欲しいと思っていた。とかく、冬になると肌が乾燥しがちになる。化粧をするにも、ファンデーションのノリが悪く、パサパサした感じが悩み、という人も少なくない。とはいえ、ケアに要する時間は数分~15分程度。睡眠時間を削ってまで、肌の手入れに時間を割きたくない。毎日続けられるか自信がないという人もいるだろう。せっかく買ったのに、1カ月でクローゼットに眠ったままになってしまったらもったいない。そんな理由で決心がつかなかった人もいるのではないだろうか。このナイトスチーマー ナノケアなら、手間がいらないのでおすすめできる。

側面。球体だが低重心化を図り倒れにくい設計となっている

およそ2週間、毎晩使ってみた。寒くなるこの時期、肌が乾燥しやすくなるのだが、大きなトラブルもなくしっとり感は続いた。肌だけでなく、髪も潤う効果が期待できるという。私は娘と二人で寝ているのだが、娘の髪にも効果が出たようにも感じる。パナソニックの調査によると、ナイトスチーマー ナノケアを利用した人と、そうでない人の肌の水分量を測定した結果、使った人のほうが潤いを持続しているという。実験では被験者に冬場2週間ほど使用してもらい、実験開始前と開始後、頬の水分量をそれぞれ測定した。使わなかった人は約25%水分量が減少し、使った人は潤いが維持されたというデータが出た。被験者は10名ずつなので、人数として充分とはいえない。また、私は使ってみて大満足だったが、パナソニックによると人によって効果は多少差異があるという。でも、使うときのわくわく感は誰でも味わえる。今日よりもキレイになった自分を想像して寝る。最上級の幸せなのである。

イラスト:YO-CO