2022年1月22日に、対戦格闘ゲーム『ストリートファイターV チャンピオンエディション(ストV)』の公式大会である「カプコンプロツアー(CPT)2021」の「日本大会4」が開催されました。

「日本大会4」は、1年間にわたり開催してきた「カプコンプロツアー2021」を締めくくる最後の大会。カプコンプロツアーで優勝した選手は、世界大会であるカプコンカップの出場権を獲得できるのですが、コロナ禍によりカプコンカップの中止が発表されています。なお、カプコンカップの中止は前回に引き続き、2年連続です。

したがって、今回のカプコンプロツアーでは、カプコンカップの出場権という最大のご褒美がなくなった状態での開催となり、プロ選手にとってはモチベーションが上がらないのではと懸念されていました。また、日本のプロリーグ「ストリートファイターリーグ:Pro-JP」のグランドファイナル直前ということもあり、こちらに専念するために欠場する選手もいるのではないかと思われました。しかし、開催してみれば、これまで開催してきた「カプコンプロツアー2021」の「日本大会1~3」に引けを取らない熱戦が繰り広げられ、大いに盛り上がりました。

  • 2021年4月17日の日本大会1から始まったカプコンプロツアー。2022年1月22日の日本大会4で全スケジュールが終了しました

優勝したのはカワノ選手。ベテランに強豪がそろっている『ストV』のプロシーンにおいて、若手ナンバーワンプレイヤーと呼び声の高い選手です。2021年の成績も目を見張るものがあり、カプコンカップと双璧をなす世界大会である「EVO 2021 Online」、日本の強豪プレイヤーが長期戦でリーグ戦を戦う「TOPANGAチャンピオンシップ(第3回)」で優勝し、今回のカプコンプロツアーでの優勝で、2021年の『ストV』のビッグタイトルを総なめにした印象です。

そんな大本命として名を挙げられるカワノ選手ですが、2021年末のウメハラ選手主催による「獣道4」にて、ときど選手に勝負を挑み、返り討ちにあったばかりでした。TOPANGAチャンピオンシップの優勝をもって、これまで大きく負け越してきたときど選手へ挑戦状をたたきつけただけに、この敗北は大きなダメージとなったでしょう。「日本大会4」は、その直後の大会ということもあり、カワノ選手のパフォーマンスは注目の的でした。

  • 「日本大会4」で優勝し、インタビューを受けるカワノ選手

「日本大会4」のベスト8進出者は、ウイナーズサイドが、カワノ選手、ときど選手、ヤマグチ選手、水派選手、ルーザーズサイドがキチパ選手、藤村選手、よっさん選手、ネモ選手です。

カワノ選手はウイナーズファイナルでときど選手とあたり、これを下してとりあえずのリベンジを果たします。しかし、ルーザーズに落ちたときど選手は、そのままルーザーズファイナルを勝ちきり、グランドファイナルで再度カワノ選手と対峙。ここで、カワノ選手は2回目のときど戦も制し、カプコンプロツアーの優勝を決めました。「獣道4」で敗北した直後の大会において、2度のときど戦を経て手に入れた優勝だけに、感慨もひとしおだったのではないでしょうか。

  • ベスト8のトーナメント

また、プロライセンス獲得条件である「ベスト8進出」がすべてプロライセンス保持者だったため、新たなプロ選手は誕生しませんでしたが、「ストリートファイターリーグ:Pro-JP」のトライアウト大会でプロライセンスを取得したばかりのニューカマーであるヤマグチ選手とよっさん選手が進出していたのが印象的でした。

よっさん選手は、トップランカーでは珍しいジュリ使い。キャラ愛を貫いている姿勢には好感が持てます。ヤマグチ選手は忍ismの「若手選手育成企画」の合格者。カプコンプロツアー2021の「日本大会1」で優勝したひぐち選手と同い年で、同じチームに所属しています。カワノ選手の次の世代のプレイヤーとして、活躍が期待されています。

ヤマグチ選手は、ウイナーズサイドでのファイナルに進出し、ルーザーズサイドに落ちても勝ち進み、結果3位と好成績を収めました。忍ismのオーナーももち選手は、自身の選手としての実績を積み重ねつつ、若手育成まで成功させており、『ストV』の大会シーンに大きく貢献していると言えるでしょう。

  • トライアウト大会でプロライセンスを獲得したばかりのよっさん選手。レアキャラであるジュリで見事ベスト8進出を果たしました

さて、お馴染みの筆者の大会参加ですが、もちろん今回も参加しています。初戦の相手はなんとお笑いコンビ「NOモーション。」の矢野さんです。「NOモーション。」といえば、カプコンプロツアーの配信MCとして活躍しており、カプコンプロツアーの顔とも言える存在です。前回大会から、「NOモーション。」の2人と、実況のアールさんも大会に出場し、その様子を特別事前配信として「ハメコ。」さんがワンオペで実況解説していました。当然、筆者と矢野さんの試合も配信されました。

結果は2勝1敗で筆者の勝利。矢野さんは大会で地面に埋められる演出の技(ザンギエフのボリショイ・ロシアン・スープレックスやアレックスのヘビーハンマー)を喰らいがちで、「よく埋められる」と解説されています。この対戦では2回ほど埋めることができたので、勝利したこと以上に、オーディエンスの“埋め”に対する期待に応えられたのではないかと胸をなで下ろしました。

ただし、次の対戦とルーザーズでの対戦ではいいところがなく敗北。1勝2敗で筆者の「日本大会4」は終了しました。

  • もはや矢野さんの『ストV』での見どころのひとつと言える「埋められ」

ほかに仲間内の結果としては、テクニカルライターの西川善司氏は1度勝てばときど選手との対戦ですが、それは叶わずルーザーズへ。ルーザーズ初戦で勝利すると次の相手はFAV gamingのりゅうせい選手。結果としては0-2に敗北しますが、2ゲームとも1セットは取っており、プロ選手相手に善戦していました。

漫画家のたき先生は、ウイナーズ2戦目で立川選手と対戦。春麗ミラーでの対戦で、惜しいところまでいくものの敗北です。同じく漫画家のうめ先生は2連敗で敗退。今回も初勝利はお預けとなりました。

またまた今回も有名選手との対戦が叶った大会で、ブラケットの妙がはまった感じです。ブラケットの妙といえば、プール1に日本バルログ界を牽引するトッププレイヤーの3人、サカグチ選手、そうすけ選手、冷血選手が集まっていたり、プール3では魚群のもけ選手、まちゃぼー選手、水派選手が固まっていたりとかなり偏っていました。

ほかにも、プール4ではウイナーズセミファイナルで忍ismのえいた選手とヤマグチ選手が、プール5ではウイナーズセミファイナルで同じく忍ismの藤村選手と大谷選手の同門対決が行われ、同キャラ、同チームの潰し合いが起こっていました。こういうところもオープントーナメントならではのおもしろさと言えるのではないでしょうか。

今大会をもって、2021年度のカプコンプロツアーはすべて終了。日本大会の優勝者はマゴ選手、ひぐち選手、ウメハラ選手、カワノ選手の4人です。残念ながらカプコンカップは中止となりましたが、優勝者が出場するエキシビションマッチを開催の予定ですので、そちらを楽しみに待ちましょう。

また、『ストリートファイターV』としては、2021年に最後の追加キャラクターであるルークが実装されました。2022年は、新キャラの追加や大きなアップデートによる変更はないと思われますが、サービスや大会シーンは継続していきます。

コロナ禍の終息がまだ見えぬ状況なので、なんとも言い難いですが、「カプコンプロツアー2022」がどのような形で開催されるのかも楽しみです。もしカプコンカップが開催されるのであれば、2022年の結果だけでなく、2021年、2020年の参加権取得者を集めて、壮大に開催してほしいところです。