2021年2月21日から23日の3日間、「東京eスポーツフェスタ2021」が開催されました。東京eスポーツフェスタは、2020年から開催されたeスポーツイベントで、eスポーツの普及と関連産業の振興を目的に行われます。イベントは大きくわけて、eスポーツ競技大会、関連産業展示会、セミナー・学習企画の3つで展開されました。
前回より採用タイトルが倍増したeスポーツ大会
今回はコロナ禍によりオンラインでの開催となりましたが、中止や延期とならず、無事開催。主催は東京eスポーツフェスタ実行委員会ですが、東京都も共催しており、小池百合子都知事が実行委員会名誉会長を務めています。初日配信の冒頭では、小池都知事があいさつを行いました。
eスポーツ競技大会は、『太鼓の達人』『グランツーリスモSPORT』『パズル&ドラゴンズ』『eBASEBALLパワフルプロ野球』『ぷよぷよeスポーツ』『モンスターストライク』の6つのタイトルで行われ、2020年の3タイトルから倍増。タイトルごとにオンライン予選を行い、22日と23日に、それぞれの決勝戦を開催しました。
各タイトルの優勝者には、「東京都知事杯」が贈られます。また、企業対抗戦である「AFTER 6 LEAGUE」や、芸人vsレジェンドゲーマーのeスポーツバトルも実施するなど、コンテンツに厚みが増していました。ちなみにレジェンドゲーマーは、現役プロゲーマーのマゴ選手と、言わずと知れたゲームの偉人、高橋名人です。
UIの良さやキャンペーンで来場者を促進させていた関連産業展示会
関連産業展示会は、東京都の中小企業を支援し、新たな商機を生み出すことを目的に開催されます。2020年に東京ビッグサイトで開催した際は、参加企業がブースを設置し、eスポーツに興味がある人とのつながりを促進していました。
今回はオンラインだったので、公式サイトに専用のページを設置。各企業の詳細を確認できるだけでなく、資料のダウンロードもできるようになっていました。資料をダウンロードするときは、企業名と連絡先を入力するようになっているので、一方的に資料を配付して終わりではなく、そのあとの接触機会を増やし、エンゲージメントを高めるようになっています。
さらに、すぐに商談をしたい企業やより詳しい内容を聞きたい人のために、オンライン商談(zoomミーティング)の予約受付も準備。ともすれば、オフラインでブースを展開していたときよりも、アクセスがしやすい状態になっていたともいえるでしょう。
出展社は12のカテゴリー分けされており、目的の企業が探しやすくなっていました。オンライン展示会のサイトとしては見やすく、UIもわかりやすい作りになっていたのが好感触でした。
多くの人がそれぞれの出展者ページに訪れるように来場キャンペーンも実施。各出展者ページのなかに12種類の文字が隠れており、すべて探して組み合わせるとキーワードが完成します。
正解者から抽選でQUOカードがプレゼントされますが、さながらリアルイベントのスタンプラリー的な感覚で楽しめました。最初は賞品目当てでも、思わぬ企業の情報によって、新たな出会いの可能性が秘めていることを考えると、単純ながら効果的な施策ではないでしょうか。
最後にセミナー・学習企画です。これは、eスポーツ競技大会とは別に配信チャンネルを用意し、eスポーツにおける各種セミナーを用意。eスポーツの基本から、教育現場への展開、新規事業としてのeスポーツ、eスポーツによるダイバーシティ化など、さまざまなテーマでeスポーツを語っていました。
セミナーの合間には関連産業展示会に出展した企業の動画も流れます。一般的な動画のように、広告主のCMを入れるのではなく、参加企業のアピールの場にもなっているのも、東京都を中心とする実行委員会主催ならではでしょう。
2回目の開催で東京都の担当が感じる手ごたえ
今回の開催について、東京都産業労働局商工部経営支援課長 佐藤拓也氏に聞いてきました。
――2回目の開催にしてオンライン化となりましたが、延期、中止も踏まえたうえでの判断だと思います。開催までどのような経緯があったのでしょうか。
佐藤拓也氏(以下佐藤):試行錯誤の連続でした。コロナの状況が刻々と変わっていくので、その都度対応を考えました。2020年と同様に東京ビッグサイトでの開催、選手のみの来場、無観客での開催も考えたのですが、緊急事態宣言なども重なり、スタジオは司会進行と一部のコンテンツのみで、大会に出る選手はすべてオンラインにしました。
――比較的オンラインに対応しやすいeスポーツですが、東京eスポーツフェスタは産業展示会もあります。その部分はオンライン化が難しいように思いますが、どのような工夫をされましたか。
佐藤:そうですね、産業展示会自体は、前回のアンケートでけっこう好評だったんです。普通の展示会だとBtoBのつながりしかできませんが、eスポーツ大会があったおかげで、toCにも訴求できたという意見をいただいていました。
その前提があり、出展者は34から50に増加。2020年から引き続き出展されている企業もありますが、新規出展がかなり増えましたね。
サイトはできるだけ見やすく、わかりやすくすることを考えました。参加企業の情報を一方的に流すのではなく、商談に結びつきやすいようにzoom商談の予約受付や、資料をダウンロードした人の情報を出展側が確認できるようにするなどですね。
あとは、企業eスポーツを推進している「AFTER 6 LEAGUE」にも協力していただきました。『桃太郎電鉄』で異業種が交流しましたが、これをきっかけに新しいイノベーションが生まれることを願っています。
――東京都としてはeスポーツをどのように捉え、今後はどのように関わっていくのでしょうか。
佐藤:eスポーツは成長産業としてみています。大会などを通じて、盛り上げていければと考えています。
我々は産業労働局なので、産業を中心にみていますが、それ以外にもオリンピック関連の部署も出展していますし、福祉派遣局も活動を始めています。福祉派遣局は依存症などの悩みについての相談を受けているとのことなので、東京都はeスポーツを多面的に捉えていると言えるでしょう。
eスポーツは多くの人が楽しめるものだと考えています。子どもも大人もeスポーツを観ればそのすごさを体感できますし、企業はeスポーツの産業としての可能性を感じ取れると思います。
――ありがとうございました。
コロナ禍が収束する目処が立たず、展示会のオンライン対応が増えているなか、東京eスポーツフェスタはそのノウハウの蓄積を活かしたイベントになっていたと感じました。
もちろん、リアルイベントと同じだけのことはできていませんが、“とりあえずオンラインに”という状況からは脱却しているでしょう。eスポーツ大会も予選と本戦では日にちを空けたことで、出場者がオンライン対応しやすいようにしていたのも好感が持てました。
東京eスポーツフェスタは地方自治体によるeスポーツイベントのエポックメイキングとしても存在しているので、1つの指針を多くの自治体に示せたのではないでしょうか。