3月26日、27日に、大学生向けeスポーツ大会「マイナビeカレ 〜esports全国大学選手権〜 2025(eカレ)」が開催されました。2024年は『Apex Legends(Apex)』のみでしたが、今年は『ストリートファイター6(スト6)』と『Apex』の2タイトルで実施されます。

どちらも大学の枠を超えてチーム編成できるフレンド部門と、同一大学の学生のみでチーム編成する大学対抗部門の2部門を用意。『スト6』は26日にどちらの部門もオンラインで、『Apex』はフレンド部門がオンライン、大学対抗部門がオフラインで行われました。

賞金は『スト6』と『Apex』ともに、大学対抗部門が優勝100万円、準優勝10万円。フレンド部門が優勝30万円、準優勝10万円です。

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    『Apex』の大学対抗部門はオフライン有観客で行われました

各タイトル、各部門の結果は以下の通りです。

『ストリートファイター6』
フレンド部門:ソニックスラッシャー
大学対抗部門:日本大学

『Apex Legends』
フレンド部門:コーナーレジェンズ
大学対抗部門:近畿大学

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    『スト6』部門の決勝の大将戦。どちらも上位500名にしか与えられないレジェンドの称号を持ったトッププレイヤーでした

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    『Apex』大学対抗部門で優勝した近畿大学

記事では、オフライン会場で行われた『Apex』大学対抗部門の様子を中心にレポートします。

『Apex』は、3人1組で、全ランクのプレイヤーに参加資格があります。2月に開催されたオンライン予選を勝ち抜いた20チーム60名が決勝に進出しました。

オフライン会場には、決勝に進出した大学の大学名が入った垂れ幕が掲げられており、まさに学校を背負っての大会であることがわかります。このあたりは大学生の対抗戦の様相が押し出されています。

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    オフライン会場では1校ずつ選手入場が行われました

試合は5マッチで行われ、マッチごとにキルポイント(相手を倒した数)と順位ポイントを集計し、5マッチの合計ポイントがもっとも高いチームが優勝です。また、全20チームにはそれぞれプロ選手やストリーマーのアンバサダーがついており、応援してくれます。

本戦開始前にはアンバサダーと学生2人の組み合わせでエキシビションマッチが2試合行われました。エキシビションマッチはマッチ1が広島修道大学、マッチ2が立教大学の勝利となり、本戦に向けて弾みをつけます。

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    それぞれの大学にストリーマーやプロ選手がアンバサダーがついています。エキシビションマッチでは一緒に戦いました

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    順位ポイントが高めに設定されておらず、積極的に戦うことを推奨するレギュレーションです

マッチ1は、エキシビションマッチの勢いそのままに、残り4チーム時点でエキシビションマッチを勝利した広島修道大学と立教大学が残っています。最後は高い場所にポジションを取っていた立教大学が勝利しました。

エキシビションマッチから連勝した立教大学がこのまま突き進むと思いきや、ここからは混戦模様。マッチ2は大阪工業大学、マッチ3は神奈川工科大学、マッチ4は専修大学がチャンピオン(マッチで最後まで生き残ったチーム)を獲得します。

しかし、チャンピオンを取った大学も取れなかったマッチではポイントをなかなか稼げておらず、かなり“ダンゴ状態”。マッチ4が終了した時点では、TOP11のスコア差が18ポイントと、マッチ5での勝利が優勝に直結すると状況です。

そんな状況下で上位チームが少しずつ脱落。東京理科大、近畿大学、広島工業大学の3校が残り、三つ巴となります。最後は前回王者の広島工業大学が倒しきり、チャンピオンをゲット。これですべてのマッチのチャンピオンが違う大学となりました。

広島工業大学は、マッチ4終了時点で14位、トップと29ポイント差があったので、逆転優勝は難しい状況です。したがって、試合終了時点では優勝の行方がわからなくなりました。

結果、合計56ポイントを獲得した近畿大学が、一度もチャンピオンを取らずに総合優勝を果たしました。2位は日本大学。こちらもチャンピオンにはなっていません。レギュレーション的に順位ポイントが低めに設定しており、生き残る以上に相手を倒すことを求められている結果が反映されたと言えます。

近畿大学は、情報学部にeスポーツ施設があり、大学としてeスポーツに力を入れている印象があります。オンライン予選ではTakabon_q選手が所有するPCが少しパワー不足で、Yuti_WM_0選手の住まいが停電してしまい、学校の機材を借りたとのこと。大学の設備がなければ、インターネットカフェなどでプレイしなくてはならず、環境的に予選で勝てなかったかもと言っていました。世界大会に出場するFREEA_APEX選手をはじめとする個々の実力の高さによる優勝でしたが、大学のサポートも後押しとなりました。

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    『Apex』大学対抗部門の最終結果

マイナビeカレは、今回、初めて取材させていただきましたが、大学対抗感を強く出す「垂れ幕」や大学名の入った「ユニフォーム」など、大学対抗戦であることが伝わってくる、力が入った会場となっていました。

ただ、いくつか気になる点もありました。まず、この大会が誰に、どこに向けて行われているのかがイマイチ感じ取れませんでした。オンラインも含め、週のど真ん中である、水・木曜日での開催、しかも15時開始という時間帯。視聴ターゲットがわかりません。

配信なのであとから見直すことができるとはいえ、ライブ配信をしているのであれば、選手と同じ大学に通う学生や選手の親などが観やすい時間帯を選ぶほうがよかったと思います。

フレンド部門は、同一大学で仲間を集めにくい人にとってはありがたいものですが、明らかに大学対抗部門に比べて扱いが低く、付属的な意味合いになっていたのも残念です。

配信のUIやオーバーレイによる演出も不親切でした。ゲーム中のチーム名表示が数字の表記になっており、映っているチームがどの大学かわからず、マッチごとのリザルトでもどの大学が何ポイントを取ったかわからない状態です。総合順位は大学名とポイント表示にはなっていますが、前マッチと比べ、順位が上がったのか、下がったのかもわからないのは、ちょっと不親切に思えました。

また、マップ表示のときは大学名が表示され、マップ上のチームと色で判断するようになっていましたが、20校もあったので、似通った色のチームが複数存在し、ひとめで区別するのがかなり難易度が高くなっていました。

しかも、チームが撃破され、生存チーム数が少なくなっても大学名表記はそのままなので、どの大学が生き残っているかも判断しにくい状況でした。

さらに、マッチ終了のインターバル中にはハイライトの動画が流れていましたが、画面はフル表示ではなく、窓表示になっていました。左右にスペースがあったので、そのスペースに20校の大学名を入れ、脱落すると大学名がブラックアウトするようにして、ひとめでどの大学が生き残っているか分かるようにしたほうがよかったかもしれません。

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    左下に、画面が誰の視点であるかの表示がありますが、チーム名が数字になっており、どの大学かすぐにわかりません。昨年はちゃんと大学名表記でした

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    マッチ終了時のリザルト画面。これもチーム名が数字になっているのでどの大学が何位になったかがわかりません

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    試合中に時折表示される全体マップ。右上のゲーム画面を見てみると16部隊残存となっていますが、どの4校が脱落したかは、右下の大学名ではわかりません。また、大学名に振られた数字の囲みの色がマップ上の選手の色とリンクしていますが、似通った色が多く、即座に判別できませんでした

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    試合後のハイライト。ゲーム画面がフル表示でなくても十分理解できるうえ、左右のスペースに余裕があるので、部隊残存が分かる大学名のオーバーレイを表示することは可能かと

オフライン会場で20校60名が一堂に会してプレイすることは評価に値します。多少機材調整の時間がありましたが、ほぼトラブルなく運営できたのは昨今の大会としては、かなり優秀です。

ただ、各校はパーテーションで区切られた場所でプレイしており、観客からはほとんどのチームの様子が分からない状態でした。これもどこかで生き残っている大学と脱落した大学がひとめでわかるようなシステムを用意したほうがよかったでしょう。

観戦という意味では、選手入場と表彰式以外はオフラインならではの演出もなかったので、この点も要検討と言ったところでしょうか。

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  • 参加20校の大学名が書かれた垂れ幕が掲げられていました

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    選手はパーテーションで区切られたスペースでプレイ

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    観客席からは手前の大学しか見ることができませんでした

まだ、大会を始めて3回目なので、経験が足りていないとは思いますが、そもそもどこに向けて発信しているのかを考え、それに合わせた配信や会場運営を見直す必要はあるかと思われます。

高校生向けのeスポーツ大会も数を重ねることで定番化し、小中学生の憧れの舞台として整ってきています。マイナビeカレも今後続けることで、大学に行く目的の1つとなる可能性は十分に秘めていますので、継続していくことを期待しています。