4月27日から29日までの3日間、対戦格闘ゲームの祭典「EVO Japan 2024」が開催されました。「EVO Japan」は、北米で行われる格闘ゲームイベント「EVOLUTION(EVO)」の日本版。今年で5回目を数えます。今回の「EVO Japan 2024」では、メインタイトルのオープントーナメントと、有志によるさまざまなサイドイベントが行われました。
メインタイトルは、『ストリートファイター6(スト6)』『鉄拳8』『ギルティギア ストライヴ』『KOF XV』『ストリートファイターIII 3rd Strike』『グランブルーファンタジーバーサス ライジング』『UNDER NIGHT IN-BIRTH II』の7タイトル。すべてのタイトルで賞金が発生し、それぞれ優勝賞金100万円、賞金総額1400万円です。
これまでのEVO Japanでは、参加費に加えて、最終日に開催される主要3タイトルの決勝トーナメント以外は入場も無料でした。しかし、今年は、参加費と入場料が有料化。コミュニティ主催で、メーカー以外の企業が運営する以上、有料化することは健全な運営、継続性の担保から考えても然るべきと言えます。
実際、25,000枚用意したチケットは事前に完売。さらに、3日間の来場者数は過去最高を記録したとのことなので、有料化は、参加者、観戦者、どちらからも受け入れられているのでしょう。なお、参加者は延べ人数で9,000を超えており、海外からも多くの人が参加しています。
今年の会場は、ゆりかもめ「有明テニスの森駅」から徒歩5分の「有明GYM-EX」。東京オリンピックの体操競技会場として建設された施設です。昨年の会場だった「東京ビッグサイト南ホール」とほぼ同じ床面積ですが、今年は参加者も多く、出展ブースも多めだったので、少し手狭に感じました。
初日は、すべての参加者が来場するので、同じ床面積だと到底入りきれませんが、予選のプールを細かく分け、1つのプールでの試合数を減らし、同時進行が可能になる対戦台配置をしていました。
さらに、予選時間を8つに分けることで、1度に会場に入る人を分散させ、混雑を緩和させていたのが功を奏した印象です。そのおかげで1日目はプールのテーブルに集まる人数が10~12人程度と、かなり余裕が感じられました。
ただ、2日目になるとプールの人数が24人程度と、倍増したのと、1日目で敗退した人たちが観戦に来ていたので、昨年同様の混み具合となっていました。昨年は、1日目で敗退した人が2日目に来ないケースが多かったのですが、今回は参加チケットが1・2日目共通券だったので、2日目も観戦しに来る初日敗退者が増えたようです。
また、プールごとに常駐していたスタッフの多くはボランティアです。彼らががんばっている様子は伝わりましたが、それでもノウハウを持っている人と持っていない人がいたため、進行具合にも差が出ていました。前日にブリーフィングが行われたとの情報もあります。
ボランティアなので、大目に見るべきという意見もありますが、今回は有料イベントのため、参加者にはしっかりした対応ができなくてはなりません。このあたりは、見直しが必要でしょう。
今回、参加者が激増した最大の要因はやはり『スト6』でしょう。昨年の『ストリートファイターV(ストV)』の参加者は約1,800人でしたが、今年は5,000人を超え、約2.7倍に膨れ上がっています。それだけ、『スト6』をプレイする人が増えているわけです。
そのため、初参加の人も多かったのではないでしょうか。オープントーナメントはプロゲーマーだろうが、ストリーマーだろうが、一般プレイヤーだろうが、すべて同じ土俵で対戦します。間近に有名プレイヤーがいたり、ともすれば対戦相手であったりし、貴重な経験を得られた人もいると思います。実際、会場ではファンからのサインや写真撮影に応じているプロゲーマーを見かけました。
参加人数が増えたことで、各企業やメーカーが出展したブースも大盛況でした。昨年は2日目に参加人数が激減したので、その分、ブースも閑散としていたのですが、今年はどこもお客さんが途切れることなく、売上げも上々とのことです。
出展企業も、「EVO Japan」を支える重要な存在です。出展したことがプラスに働くようなイベントであることは間違いありません。
ただ、昨年の2日目は会場に余裕ができ、BYOCエリアも十分な広さを用意されていましたが、今年はテーブル8つ分の1ブロックのみ。朝一にすべて埋まってしまったのは少し残念なところです。
公式グッズの目玉商品であるスカジャンは早々に売り切れ、マフラータオルなども午後過ぎには売り切れていました。
先述したとおり、予選時間を8つに分けていたため、もっとも早い時間のAブロック参加者が特にグッズを購入しやすかったのではないでしょうか。それ以外のブロックの参加者は、試合と別の時間に来場しないと購入できない状態になっていました。
また、公式グッズのスタッフに確認したところ、2日目、3日目に新たな入荷をする予定はなく、ファイナルだけ観にくる観戦勢は公式グッズを手にする手段がなかったと言えます。まんべんなく、多くのファンがグッズを手に取れる手段を考えるべきだったのではないでしょうか。
3日目は『ギルティギア ストライヴ』『鉄拳8』『スト6』の決勝トーナメントが開催されました。いわゆる観戦イベントとして、会場のすべての対戦スペースが観戦席です。
ちなみに『UNDER NIGHT IN-BIRTH II』は初日に、『KOF XV』『ストリートファイターIII 3rd Strike』『グランブルーファンタジーバーサス ライジング』は2日目に決勝トーナメントが行われ、優勝者が決定しています。
各タイトルの結果は以下の通りです。
『UNDER NIGHT IN-BIRTH II』
優勝:恭選手
準優勝:クリムゾンクルセイダー選手
3位:CROW選手
4位:Isaac選手
5位:ひしがた選手/奥州筆頭選手
『THE KING OF FITERS XV』
優勝:ET選手
準優勝:Xiaohai選手
3位:M’選手
4位:Madkof選手
5位:スコア選手Pineapple選手
『ストリートファイターIII 3rd Strike』
優勝:SHO選手
準優勝:ボス選手
3位:力丸/無敵ゴリラ選手
4位:Ucc選手
5位:まいける選手/やっくん選手
『グランブルーファンタジーバーサス ライジング』
優勝:ルーキーズ選手
準優勝:gamera選手
3位:とろろ選手
4位:レン選手
5位:たこどっと選手/キノ選手
『ギルティギア ストライヴ』
優勝:TempestNYC選手
準優勝:sanakan選手
3位:ちゅらら選手
4位:みぐみぐどっこいしょ選手
5位:御傍選手/もっちー選手
『鉄拳8』
優勝:チクリン選手
準優勝:LowHigh選手
3位:CHANEL選手
4位:Mangja選手
5位:ダブル選手/Infested選手
『スト6』
優勝:MenaRD選手
準優勝:翔選手
3位:Lexx選手
4位:りゅうきち選手
5位:Vxbao選手/もけ選手
各タイトルの上位入賞者は、賞金だけでなく、今後の大会の出場権を獲得できるものもありました。『スト6』は6位まで、『鉄拳8』は4位までがサウジアラビアで開催されるeスポーツワールドカップ(EWC)に、『ギルティギア ストライヴ』と『グランブルーファンタジーバーサス ライジング』『UNDER NIGHT IN-BIRTH II』は、優勝者がARC WORLD TOUR(AWT)世界決勝に、『KOF XV』は、優勝者がSNK World Championship 2025(SWC)』に招待されます。
2024年1月リリースと発売してから期間の短い『UNDER NIGHT IN-BIRTH II』と『鉄拳8』が初の大型オフライン大会であったり、かたや今年25周年となる『ストリートファイターIII 3rd Strike』があったりと、今誰が強いのかがまったく未知数のタイトルがあれば、『スト6』や『ギルティギア ストライヴ』『グランブルーファンタジーバーサス ライジング』のように実力者がそろっているタイトルもあり、誰が勝ち抜けるのか見所の多い試合ばかりでした。
特に、決勝に進出した半数以上を締める韓国勢をすべて蹴散らし優勝したチクリン選手や、カプコンカップでの活躍が記憶に新しいMenaRD選手がEVO Japanでもその強さを如何なく発揮し優勝したのは、観たものすべてに感嘆と感動の声をあげさせていました。
そしてタイトルごとに、メーカーがサプライズ発表を用意しており、こちらも観客を多いに沸かせていました。特に『スト6』の年間チャンピオンを決める大会「CAPCOM CUP(カプコンカップ)」の日本開催発表には会場全体が驚愕と歓喜で沸き立ちました。過去最大の規模で開催した「EVO Japan 2024」は概ね成功と言える内容だったのではないでしょうか。
最後に1つだけ提言させていただくとすれば、優勝選手の撮影とインタビューをするエリアについてです。会場内にあったため、かなり騒がしいなかで行わなくてはならない状況でした。
フォトスポットもパネル自体に照明が当たるようになっており、選手の顔が暗くなってしまう仕様。会場は天井が高いので、パネルをしっかりとみせるには仕方ない照明だと言えますが、別室を用意すれば騒音の問題も含めてクリアできたでしょう。
また、プレスルームも会場内にパーテーションで区切られただけになっており、選手などを呼んで個別取材ができる環境にはありませんでした。
今後、ますます「EVO Japan」の規模が大きくなっていけば、海外からのメディア数が増えていくのは目に見えています。日本で開催している大きな大会を世界に知ってもらうためにも、このあたりは整備していく必要があると思います。
ともあれ、参加者の多くにとって満足度の高いイベントになったことは間違いありません。次回もより大規模になっていき、多くの人が楽しめるイベントとして開催されることでしょう。