2022年12月11日、東日本連携推進会議は、さいたま市大宮にある東日本各地域の交流プラットフォーム「まるまるひがしにほん」にて「eFootBall DREAM CUP」を開催しました。

「eFootball DREAM CUP」は、東日本連携地域のJリーグクラブチームの選手やOB選手による、サッカーゲーム『eFootBall』のeスポーツ大会。東日本の各地域の連携と観光アピールを目的としています。

参加する選手は、「いわてグルージャ盛岡」の桐蒼太選手、「モンテディオ群馬」の摂津颯登氏(OB)、「栃木SC」の赤井秀行氏(OB)、「ザスパクサツ群馬」の川岸祐輔氏(OB)、「浦和レッズ」の西澤代志也氏(OB)、「大宮アルディージャ」の渡邉大剛氏(OB)の6名です。

  • 東日本連携地域にあるJリーグクラブチームに所属の選手やOBが『eFootBall』でしのぎを削りあいました

まずはエキシビションマッチとして、開催地のさいたま市を本拠地とする「浦和レッズ」と「大宮アルディージャ」のさいたまダービーから行われました。

結果は浦和レッズが勝利。「まるまるひがしにほん」が大宮だったので、若干アウェイ感がありつつも見事に勝利を収めました。

本戦は6チームによるトーナメント戦です。1回戦は「ザスパクサツ群馬」の川岸氏と「いわてグルージャ森岡」の桐選手、「モンテディオ群馬」の摂津氏と「栃木SC」の赤井氏の対戦。「大宮アルディージャ」の渡邊氏と「浦和レッズ」の西澤氏は、2回戦からのシード枠です。

初戦は「いわてグルージャ盛岡」の桐選手が3-1で勝利し、2戦目は「モンテディオ群馬」の摂津氏が1-0で勝利して、2回戦進出を決めました。

  • 元Jリーガーだけあり、サッカーのセンスは抜群。息をのむプレイもみられました

トーナメントの1回戦終了後には、パネルディスカッションが行われました。eスポーツに携わる各界の著名人が一堂に会し、「産業としてのeスポーツ」、「eスポーツによる地方創生・SDGsへの貢献」、「eスポーツと観光」の3つのテーマで話し合われました。

登壇したのは、さいたま市長の清水勇人市長、芝浦工業大学の石崎聡之教授、野村総合研究所の吉原永幸氏、BS12ワールドハイビジョンチャンネルの目黒芳則氏、プロゲーマーのゆうゆう選手、大学生代表として目白大学のルーク氏の6名です。

  • パネルディスカッションに参加した面々

最初のテーマは、「産業としてのeスポーツ」です。すでに、プロゲーマーを生業としている選手も多く、大会運営や配信業務、施設運営など、eスポーツに関わる産業は少なくありません。

また、さいたま市は、リーディング企業や先進的な技術を持った企業に対し、技術に見合った支援をする施策を展開しています。eスポーツ産業もこれにあてはめ、eスポーツをより発展させて行きたいと清水市長は語りました。

野村総合研究所の吉原氏は「野村総合研究所はコンサルティング業務も担っていますが、今、eスポーツ関連の事業についても提案をしています。実際、eスポーツのマーケティングについての話はよくきています。eスポーツはデジタル領域なので、さまざまな数値が取りやすく、アナログコンテンツでは取りにくかったデータも取りやすくなっています」と、eスポーツの優位性を唱えます。

実際にプロ選手として活動し、支援している身であるゆうゆう選手は、eスポーツ選手のあり方について語っていました。

「支援していただいているスポンサーの方々からは、大会などで好成績を残せることも選手として重要なことですが、そもそも選手としての魅力、応援したいと思わせるものが欲しいと言われています」(ゆうゆう選手)

eスポーツの世界でハイエンドのプレイヤーのみがプロ選手として活動できるうえ、大会で優勝できるのは1人もしくは1チームです。ですが、勝てなかった選手がプロとして価値がないのではなく、勝つことと同様の魅力、人を惹き付けるものがあれば、継続して活動ができるわけです。

また、就職先として考えたとき、「eスポーツを支援していたり、肯定的にとらえている企業は魅力的に感じる」と話すルーク氏。若者にとって魅力のある企業であることは、就職だけでなく、企業イメージ、企業ブランドとしても重要な要素だとわかります。

次に「eスポーツによる地方創生やSDGsへの貢献」をテーマに意見が交わされました。

今回の大会で会場となった「まるまるひがしにほん」は、平成27年に始まった東日本連携の一旦として開設されています。大宮駅は新幹線6路線が通るターミナル駅で、東北、北陸、北関東など東日本をつなげるハブのような存在。それらがお互いに交流し、さいたま市だけでなく、東日本全体が盛り上がることを目的としています。

結果として、「まるまるひがしにほん」は、年間100万人が訪れる施設に成長し、東日本の名産や文化をアピールすることに成功しています。

その東日本連携によるeスポーツ大会が今回のイベントです。各都市のサッカークラブチームの代表が集まり、eスポーツで対戦。eスポーツをきっかけにそれぞれの土地の魅力を伝えることで、リアルとゲームの融合を果たし、地方創生につなげられると考えているそう。ゆうゆう選手も、さいたま在住であることを公表しており、それが多くの人に応援してもらうことにもつながると言います。

「eスポーツでは、選手に注目が集まりがちです。しかし、観客やスポンサーあってこそのeスポーツだと肌で感じています。オンライン上で大会を開き、配信をしたとき、コメントが少ないとやはり寂しいんです。どうしたら応援してもらえる選手になるか考えたとき、1つの答えが、その選手に親近感が湧くことだと思いました」(ゆうゆう選手)

また、SDGsで言えば、eスポーツは老若男女、障害の有無で区別をつけることなくプレイしやすい環境にあります。eスポーツは健康面や障がい者の社会参加についても後押しをしています。秋田にある高齢者のみが参加できるeスポーツチーム「マタギスナイパーズ」や障がい者eスポーツのeパラの存在が、それらを体現していると言えるでしょう。

最後に「eスポーツと観光」です。『VALORANT』の公式大会である「VCT」をさいたまスーパーアリーナで開催したときは、2日間で2万6,000人の観客が訪れました。それだけの人が来場することは、観光資源として十分な価値があると言えます。

さいたま市にはスポーツコミッションがあり、規模に応じて支援金が出ます。これはフィジカルスポーツだけでなくeスポーツにも当てはまるので、大会運営にとってもやりやすく、都市としても観光客の増加につながる施策となっています。

「秋にカンヌで開催されている国際映画祭に海外ドラマの買い付けに行くのですが、規模が年々縮小しているのがわかります。同時にeスポーツイベントの関係者が一堂に会するイベントも開催されているのですが、こちらは来場者が増えてきています。コンテンツのイベントで客が減っているなか、地元の人たちはほっと胸をなで下ろしているのがわかりました。eスポーツは集客力があるので、今後、観光とeスポーツとの組み合わせをどうするかが課題ですね」(BS21ワールドハイビジョンチャンネル 目黒氏)

地方へ出向く側として、100以上の大会に出場したゆうゆう選手は、開催地の情報が選手に届くことの重要性も伝えます。

「大会の開催地の情報が事前に入っていれば、大会の前後でその土地のものを見たり、食べたりできると思います。ここにはこういうものがある、観るものがあるといった情報があると、ワクワクします。観光情報が充実していれば、観ているほうもオンライン観戦ではなく、現地に行きたくなると思います」(ゆうゆう選手)

  • 「まるまるひがしにほん」では、今回のイベントに合わせ、参加したJリーグクラブチームの名産品を取りそろえていました

パネルディスカッションはさまざまな立場の人が登壇しただけあり、多方面からの意見が出て、有意義なものになったと感じました。これらかeスポーツ事業に携わりたいと考えている企業や団体にとって、いい知見になったのではないでしょうか。特に地方の企業や団体にとって、すぐに実行できる内容だったと思います。

さて、パネルディスカッションの後はいよいよ、「eFootBall DREAM CUP」の準決勝と決勝戦です。準決勝1試合目の「大宮アルディージャ」の渡邊氏と「いわてグルージャ盛岡」の桐選手による一戦は、1-0で桐選手が勝利。2戦目「モンテディオ群馬」の摂津氏と「浦和レッズ」の西澤氏の一戦は、2-1で西澤氏が勝利しました。

決勝戦は、「いわてグルージャ盛岡」の桐選手、「浦和レッズ」の澤氏ともにバイエルン・ミュンヘンを使用したミラーマッチ。前半に3点を取り、後半に劇的なヘディングによるループシュートを決めた「浦和レッズ」西澤氏が優勝を決めました。

優勝した西澤氏は、大会の実況を担当したプロゲーマーのまーさん選手とのエキシビションマッチを行う権利が与えられました。エキシビションでは、西澤氏が「アーセナル」、まーさん選手が「フラメンゴ」と、チーム力のハンデをつけられますが、さすがにプロの意地を見せ、2点を先行します。

しかし、そこから西澤氏が脅威の追い上げをみせ、同点に追いつくと、そのままPK戦に。まさにワールドカップさながらの展開を見せます。PK戦で先攻のまーさんのシュートを止めた西澤氏は、ど真ん中に決め、状況的にも精神的にも優位に立ちます。これが響いたのか、まーさん選手は2本連続で外し、西澤選手は3本連続で決めます。さらに、4本目のシュートも阻止した西澤氏がまーさん選手を下しました。

  • 同点に追いついた瞬間、6人のJリーガー全員は総立ちに

今回の大会は、東日本連携地域のJリーグクラブチームの選手やOBが出場したことで、わかりやすく地域性を出せた大会でした。それぞれの地域の良さや名産などもアピールでき、地方創生の一助となったのではないでしょうか。

会場である「まるまるひがしにほん」では、東日本の名産が買える物産展としても展開しており、来場した観客の多くは、買い物を楽しむこともできています。

また、1階店舗入り口付近では、『eFootBall』『太鼓の達人』『鉄拳7』の試遊台を設置。自由にプレイすることができました。特に『鉄拳7』のコーナーはプロゲーマーのペコス選手が待機しており、プロとの対戦やプロに指導してもらいながらのプレイが楽しめました。

  • 「まるまるひがしにほん」は、普段から東日本の各地の名産品を販売しています。日本酒が試飲できるコーナーも

  • パネルディスカッションの時間には、Jリーガーが店頭にきて、『太鼓の達人』や『eFootBall』をプレイしていました

  • 『鉄拳7』コーナーではペコス選手が来場者に丁寧に教えながらプレイをしていました

  • 店頭では、さいたま市のマスコットであるぬぅや『鉄拳7』のリリのコスプレをしたスタッフが大会をアピールしていました。パネルディスカッションに参加したゆうゆう選手も記念撮影です

今回のイベントによって、eスポーツを初めて知った人やeスポーツという言葉を聞いたことがある程度の層の人たちにも十分アピールできたと思います。また、東日本連携として、より多くの人にeスポーツと東日本の各地域のアピールするためにも、さいたま市以外の地域での開催もしてほしいところです。