気球は人類が最初に手にした、大空を飛べる手段でございます。最近、また流行りはじめたようで、気球を見かける機会も増えてきました。今回は、そんな気球をめぐるとりとめもない話をさせてください。

  • 気球

えー、久々にプライベイトで旅行に来ております。レンタカーを走らせていたら。遠くに気球が上がっているのを見かけました。調べてみると、観光用というか、気球に乗せてくれるアクティビティがあるんですな。素人でもすぐに乗れるというので心踊りましたが、同行者が乗り気でなく諦めました。ただ、結構やってるところ多いんだとか。ということで、気球について書いてみたくなったのでございます。

気球は、大きな袋に周囲の空気より軽い気体を満たし、浮力を発生させて浮かべるものですな。発明したのは、革命の前夜18世紀末のフランスのジョゼフ=ミシェルとジャック=エティエンヌのモンゴルフィエ兄弟でございます。彼らの家族はフランス南部のアノネーという町で紙を作る工場を経営して成功をしていたそうでございますな。ちなみに、こちらの方の訪問記によると、アノネーはモンゴルフィエの街として有名なのだそうですよ。確かに観光サイトでも気球が見えますな

さて、モンゴルフィエ兄弟は、最初は焚き火で乾かそうとした洗濯物が、焚き火の煙(要はあったかくなった空気)でめくれ上がることに気がついたのだそうですな。危ないことしますなー。で、1782年に1m角のタフタ(薄い織物で、当時は絹製)布の箱を作って、その下で焚き火をして煙を入れると浮かび上がるという実験をし、それをさらに発展させて3m角の箱で成功し、2kmも空を漂ったのだそうです。熱気球の原型でございますな。彼らは「煙」が重要だと考えたのですが、実際は空気が温まって膨張し、密度が低くなって浮力ができたわけです。

あ、この辺はWikipedia先生の引き写しです。詳しくは原本をどーぞ。ただ、結構気合が入った翻訳で長いのですが。

モンゴルフィエ兄弟は、次にリネン(麻布)で巨大な袋を使って地元アノネーで公開実験し成功します。そして1783年9月にはパリ近郊のベルサイユでニスやミョウバンで補強したタフタで、大型気球を成功。これにはヤギなどが乗せられ、数年後にはフランス革命で断頭台送りになるマリーアントワネットやルイ16世も立ち会ったそうでございますな。

そして、最初の有人気球は、同11月に成功し、大変なブームになったのだそうですな。星座にも、けいききゅう座というのが一時作られたほどです。

一方で、1766年にイギリスの変人科学者キャベンディッシュが空気より軽い気体、水素の発生方法を発見しており。気体の膨張に関するボイル・シャルルの法則で有名な(ほれ、あのPV=nRTですよ)フランスの科学者シャルルと技術者のロペール兄弟が1783年8月に水素気球に成功します。これは米国の独立宣言を書いてフランス滞在中だった米国の政治家で物理学者のベンジャミン・フランクリンなどが見守ったとのことです。そして12月には有人飛行に成功しております。

その後、扱いやすさから水素気球が盛んに使われます。熱気球は1960年にバーナーを使ったものが発明されて復活するまで陽の目をみなくなります。

最初は、軍事用の観測気球として、偵察や大砲の着弾地点の観測に使われましたが、こんな面白いものをみんながほっておくわけはなく、乗り物として盛んに使われます。初期のSF作家で「十五少年漂流記(二年間の休暇)」や「海底二万マイル」で著名なジュール・ヴェルヌは「気球に乗って5週間」という作品がヒットして世に出ます。

19世紀は大空といえば気球という世紀でしたが、20世紀になって航空機が発明されると、当初は飛行船として活躍しますが、乗り物としては追いやられますな。

一方で、気球による観測にて1911年にはオーストリアのヘスが宇宙から放射線がきていること=宇宙線を発見します。1950年代には、戦後日本でも気球を使った研究が行われ、スポンサーの新聞社が同じ気球に写真機をつけて地上の撮影が行うなどして、大いに受けたらしいですなー。

他のトピックとしては、気象観測用の気球があげられますな。これは現在でも行われ、高空のデータ、気圧や気温、風の流れなどを調べるのに使われています。天文学の世界でも、望遠鏡を積んで、大気で吸収されるため地上に届かない宇宙からのX線の観測などに使われました。超高空に安価に到達する手段として、ロケットよりお手軽なので盛んに使われているのでございます。

水素気球は、軍事では航空機の侵入を防ぐ阻塞気球や、日本の風船爆弾などに使われていましたが、あまり見なくなりましたな。

あまり見なくなったといえば、アドバルーンもあります。戦前の2.26事件の時は降参を促すのにも使われました。これも広告を大きく見せるためのものですが、監視しないといけないなど扱いが面倒なのと、高層ビルだと意味がないのでやや廃れていますが、逆に珍しいのでピンポイントで使われたりもしていますな。

そして熱気球は安全性が増し、スポーツや観光飛行に使われるようになっています。佐賀県では毎年11月のはじめに、日本中の気球愛好家が一斉に気球を飛ばすバルーンフェスタが行われますし、気球博物館もできています。他にも全国で気球の大会が開かれています。空に上がる気球は目を引き観光資源にもなるので行政の応援もあるようですな。

また、東南アジアなどで、ミニ熱気球をあげるスカイ・ランタン(天灯)も観光によく使われるようになりましたね。

  • スカイランタン

ということで、気球もどこでもサイエンスに、またなってきたという話でございました。

著者プロフィール

東明六郎(しののめろくろう)
科学系キュレーター。
あっちの話題と、こっちの情報をくっつけて、おもしろくする業界の人。天文、宇宙系を主なフィールドとする。天文ニュースがあると、突然忙しくなり、生き生きする。年齢不詳で、アイドルのコンサートにも行くミーハーだが、まさかのあんな科学者とも知り合い。安く買える新書を愛し、一度本や資料を読むと、どこに何が書いてあったか覚えるのが特技。だが、細かい内容はその場で忘れる。