人類はながいこと、地球は動かないという「天動説」を信じていました。一方、現在の私たちは、地球が動いていることを知っています。16世紀にコペルニクスが唱えた「地動説」ですなー。というか「説」ではなく、事実として知っているわけです。じゃあ、地球は、どう、動いているのでしょうか。ざっくりご紹介いたしましょう。

地球は動いている。でも、そのショーコはあるのか? これはなかなか難題です。かつてジョン・レノンによって「fool on the hill(直訳すると"丘の上の馬鹿者"という感じでしょうか)」といわれたガリレオは、「それでも、地球は動いている」と言って、1616年と1636年の2回、友人の! ローマ教皇ウルバヌス8世も参加した異端審問、つまり宗教的にまちがっている発言ケシカラン裁判にかけられ、2回目の裁判のあと、当初は終身刑、後に軟禁を命じられました。

つまり、指定の場所からでるな、ということですな。これ、わりと引きこもり体質な私でもかなりキツイです。まあ、3日で草が生えますな。ガリレオは1642年、つまり蟄居6年目に亡くなっています。失意の果て…でもなかったみたいですが、1564年生まれですから77~78歳…かなり長生きやん…で亡くなっています。

さて、ガリレオはなーんで異端審問にかけられたかというと、まあ、地動説を支持し、それを本に書いたからですな。キリスト教の旧約聖書には、神様が「太陽とまれ」と命令したとかいう記述があって、地球が動くのだとこれとあわないとかいうのがよくある説明です。実際は、口が悪かったので「あいつ、あかんやつや」とチクられたからみたいですね。

さて、その口実をあたえた地動説ですが、ガリレオは、望遠鏡で金星を見て、確信をもったとされています。以下の写真はガリレオのスケッチなんですが、金星が満ち欠けをし、しかもほぼ満月状態が一番小さくなるんですね。これは、地球の周りを金星と太陽がまわる天動説だとありえない照射角度なんですな。えーっという方は、いちおう中学校の理科で習うことなので、考えてみてくだされ。ちょっとした頭の体操になりますよ。

ガリレオによる金星の満ち欠けのスケッチ (出所:世界天文年2009 Webサイト、(C) Museo Galileo)

さて、その後、遠方の星が周期的に場所を変える、つまり地球が太陽のまわりをまわる証拠が発見され、地動説が正しいことは確定するわけでございます。ただ、それだけで終わりはしませんでした。太陽も動いていたのです。そう、地球や木星など太陽系の星をつれてです。

その動き方を、映像にしたものが数年前に話題になりました。こちらですな。

The helical model - our solar system is a vortex

実際に、太陽系は地球の公転とほぼ直角に近い方向に動いています。進行方向はおおむね、おりひめ星(ベガ)の方で、ググり用に専門用語を出すと「太陽向点」といわれています。

そして、その動きは、大きくは太陽が銀河系の中を回転するような動きになります。実際には少々上下に波打つような動きでして、だいたい2億年で一周することがわかっています。この銀河系の中を回転というのは、銀河系の中心に太陽がないらしいというのがわかった、20世紀の初頭に考えとしてでてきましたが、実際に確かめたのはヤン・オールトというオランダの天文学者です。宇宙好きの人は、太陽系を取り巻く彗星の巣、オールトの雲の提唱者でもあるというといいですかね。ほかにも、1930年頃に銀河系の回転の研究からダークマターの存在を初めて示唆した人でもありますよ。20世紀で最も偉大な天文学者とされているのですが、まあ、天文ファン以外にはあまり知名度はありません。

さて、地球は太陽のまわりをまわり、その太陽は地球をひきつれて銀河系の中をまわっている。ここまではいいでしょう。でも銀河系そのものも動いているのでございます。

いまハッキリしているのは、銀河系全体が、アンドロメダ銀河という巨大銀河と衝突コースにのっているということですな。一直線にアンドロメダ銀河の方向に突っ走っているってわけです。この衝突については、NASAなどが映像を作っています。

Milky Way - Andromeda Collision Animation

ざっと30億年後には衝突するのですが、星どおしは、ほとんどぶつからないとわかっています。ただ、派手にはじき飛ばされたりはしますね。そうなると、それまでの動き方とはまったく違ってしまう可能性だってあります。

さらに、アンドロメダ銀河や銀河系そのものも、全体として銀河のグループを作っていて、それがおとめ座方向にある「おとめ座銀河団」に引き寄せられていることがわかっています。ちなみに、おとめ座は、5月半ばに夜八時、南の方向です。あっちに向かっているのでございますな。

さらにさらに「おとめ座銀河団」は「うみへび・ケンタウルス座超銀河団」に引き寄せられています。よりデカイ軍団の配下というわけですな。おとめ座より、ちょいと南西よりの方向でございます。

そして、さらにさらにさらに「うみへび・ケンタウルス座超銀河団」は、「グレートアトラクター」という1.4億光年離れた巨大な引力限にひきよせられています。

いちおうその様子をしめした絵があります。ハワイ大学のサイトの下の方の緑の絵ですな。銀河系はMilky way、おとめ座銀河団がVirgo Cluster、グレートアトラクターはGreat Attractorでございます。

しかし、なんですな。地球は太陽のまわりをまわり、太陽は銀河系のまわりを波打つようにまわり、その銀河系はアンドロメダ銀河と衝突しつつあり、その銀河系とアンドロメダ銀河などのグループはまとめて、おとめ座銀河団に引き寄せられ、それがさらにうみへび・ケンタウルス座超銀河団にひっぱられ、さらに、グレートアトラクターにひきよせられる。

いやー、複雑でございます。いっそのこと地球がとまっていたほうが、簡単ですな。神様は簡単なのを好むんじゃなかったのかね(違。

著者プロフィール

東明六郎(しののめろくろう)
科学系キュレーター。
あっちの話題と、こっちの情報をくっつけて、おもしろくする業界の人。天文、宇宙系を主なフィールドとする。天文ニュースがあると、突然忙しくなり、生き生きする。年齢不詳で、アイドルのコンサートにも行くミーハーだが、まさかのあんな科学者とも知り合い。安く買える新書を愛し、一度本や資料を読むと、どこに何が書いてあったか覚えるのが特技。だが、細かい内容はその場で忘れる。