ちょっと気になるけど購入まで踏み切れない製品や、家の財務相に健全な用途をプレゼンしなければならない製品、はたまた実際に触れてから最終決断を下したい製品が溢れている今日この頃。家電ファンやデジタルアイテム好きの悩みを解消する一助となるべく、どこか心に引っかかるデジタル家電をレビューしていく「デジものラボラトリー」。本コラムではメーカー発表のスペックやデータだけではわからない、ユーザー目線の使用感や実生活中の活用法を重点的にお伝えしていきたい。

プレゼン時には実力を発揮

第1回となる今回は、6月5日に発売されたばかりのOptoma(オプトマ)のポケットプロジェクター「PK102」をレビューする。PK102は、同社のポケットプロジェクターの上位モデルにあたり、先行して発売された「PK101」とは、本体内蔵4GBメモリーに動画や静止画を入れてスタンドアロンでの投射が可能になった点や、PCのアナログRGBに対応した点が異なっている。なお、今回のレビューは、発売前に貸与された試用機によるものであることをお断りしておく。

ラバータッチの本体は高級感十分。本体側面のジョグダイアルもなかなか操作性がいい

まず、製品を目の当たりにして驚いたのは、やはり本体サイズの小ささだ。幅と高さはiPod Touchよりわずかに小さく、厚みは折りたたみ式の携帯電話程度で、このサイズの本体から60型以上の映像が映し出される事が、にわかには信じ難いほど。レンズシフトやデジタル台形補正など、プロジェクターとしての基本機能を欠いていることは、小型化の代償として割り切れる範囲に収まってしまう。標準でクッションのきいたソフトケースが付属し、ACアダプターもなかなかコンパクトなので、「いつでもどこでも」というモバイル性は高そうだ。

本体サイズは51(W)×17(H)×105(D)mm。並べてみると上面の寸法はiPod Touchとほとんど同じ。重量もほぼ同じだ

持ち運べるように「PK102」がすっぽり収まるソフトケースが付属している

実際に映像を投射してみると、コントラストはやや弱いが、画質は想像以上にシャープな印象。内蔵メモリーの動画は変換ソフトによって強制的に320×240ピクセルになってしまうが、SD画質のテレビぐらいの映像なら、問題なく視聴できるレベルだった。ただし、最大となる66型に投射すると輝度不足は否めず、部屋の照明を完全に落としてカーテンを閉め切った部屋でないと満足に映像が観られない状態になってしまう。しかし、アクセサリーのノートスクリーン「NS-01」に投射した場合は、明るい部屋でもくっきりした映像を観られた。NS-01は8.5型なので、サイズ的にはプロジェクターを使う利点があまり感じられないが、PK102とNS-01の組み合わせならノートPCやネットブックを持ち歩くよりも遥かに軽量で済むので、スタンドアロンでプレゼンや動画の視聴をするなら十分にメリットはあるだろう。ただし、ソースはあくまでQVGA動画なので、細かいディテールを気にしないで視聴できるシーンに限られる。プレゼンやプレビューの用途がうってつけといえるだろう。

66型スクリーンに投射した動画。OSD(オンスクリーンディスプレイ)でボリュームや巻き戻しなどの操作を行う

スクリーンゲイン3.6の「NS-01」を使えば、より鮮明な映像が観られる

ネットブックとの相性は◎

映像以上に気になったのが、動画の音声だ。音声は本体横のモノラルスピーカーから出力されるが、特に内蔵メモリーの動画は音量が小さく、66型スクリーンに投射する場合はスクリーンから2.6m強の距離をとる必要があるため、映像と音声が遠く離れた位置に出力されてしまう。本体に音声出力端子があれば、距離の問題を解決できるほかにも、音声だけヘッドホンで聴いたり、ステレオやサラウンドで楽しめる可能性も広がるだけに、是非とも搭載して欲しかったところだ。なお、音量については、アクセサリーのiPod/iPhone専用AVケーブル「DWA010」を使ってiPodを接続した場合には、十分な出力を得られた。もちろん内蔵メモリーの動画も、元のデータの音量を調整すれば対応が可能だ。

PK102の内蔵メモリーに動画データを入れる場合は、「Optoma Pico Video Encoder」による動画変換が必須となる。Optoma Pico Video Encoderは単機能の動画変換ソフトで、AVI/MP4/M4V/VOB/MPG/3GPの動画をPK102で再生可能な動画形式(MP4のAVI)に変換してくれるという。しかし、一部のMP4で変換に失敗するなど、仕様に不明な部分があった。また、フリーの動画変換ソフトでOptoma Pico Video Encoder相当の動画を作ってみたが、PK102で再生することはできなかった。ソフトと動画の仕様についてはメーカーからの続報を待ちたい。

エンコードの時間はAthlon 64 X2 4400+のPCで動画時間の1/2~1/3程度

MPEG-4 AVC、IMA ADPCMの動画は「Optoma Pico Video Encoder」で変換することができなかった

ところで、自宅にプロジェクターを設置する時に、もっとも悩み、苦労するのが設置場所や固定方法、と思われるが、モバイルプロジェクターにはその心配は無用だ。本体重量がわずか118gなので、短時間なら手に持ったままでの使用もできる。しかし、PK102は廃熱用ファンを搭載しない代わりに、常にプロジェクター本体の表面で放熱しているため、投射中の本体の発熱が激しい。15分も投射すると素手で触るのがためらわれるぐらい高温になってしまうので、長時間の投射には三脚を使うのがおすすめだ。付属品のミニ三脚用ブラケットを使えば、ユニバーサル1/4-20ネジの一般的な三脚に固定が可能。卓上用三脚やコンデジ用三脚に固定すれば、部屋のどこにでも設置できる。ただし、発熱の問題をクリアしても、バッテリー駆動は通常モードで1時間(省電力モードで2時間)と、あまり長いとは言えない。ここはホームシアター的な使い方は諦め、モバイル用途に割り切って使用する必要がある。

最後に外部入力端子を使った投射をチェックした。PK102は、ゲーム機やデジカメ、一部携帯電話用のコンポジット入力と、PC用のアナログRGB入力が使える。HD画質が標準となりつつある現世代の据え置きゲーム機を接続するなら最低でもD端子が欲しかったところだが、とりあえず大きな画面でゲームをプレイするという夢は簡単に叶えられる。ビジネス用途では活躍しそうなアナログRGB入力は、800×600ピクセルのSVGA画面の投射に対応しているので、ネットブックと組み合わせると相性がよさそうだ。

アナログRGB入力でネットブックのSVGA画面を投射。文字も読めないことはない

ズームレンズがないため、8.5型の映像を投射するのにおよそ30cmを要する

ポケットプロジェクターと銘打たれている通り、本当のポケットサイズを実現したPK102は、そのサイズのために犠牲になった機能も多い。特に画質や連続使用時間の制限は、用途を著しく狭めてしまっている感が否めない。しかし、長所であるモバイル性を最大限に発揮して、映像デバイスのないシーンで活用できれば、弱点を補ってなお余りある魅力を備えている。内蔵メモリーを使ったデータ再生は特に動画データの扱いに制約が多いので、iPodとDWA010を組み合わせたPK101でも十分だとも言えるが、すぐにそのような用途を想像できるユーザーなら買って損はないと思われる。