電動歯ブラシ「オーラルB iO」にこめられたフルモデルチェンジの本気（前編）

ドイツ発の電動歯ブラシブランド「Oral-B By Braun」が、約20年ぶりとなるフルモデルチェンジを行った。その成果となるのが、2020年秋に発売された「オーラルB iO9 ブラック オニキス」（以下、オーラルB iO）だ。

• 2020年秋に発売された「オーラルB iO9 ブラック オニキス」。ドイツ発の電動歯ブラシブランド「Oral-B By Braun」が約20年ぶりにフルモデルチェンジを図った渾身の新モデルだ

今回は、リニューアルの背景や製品のこだわりについて、日本の発売元であるP&Gジャパンでマーケティングを担当する、シニアブランドマネージャーの大亀美桜氏を通じて伺った。

歯みがきの「体験」をグレードアップ

Oral-B by Braunの特徴は、独自の丸型回転ブラシ。現在の電動歯ブラシ市場において、世界の歯科医師が使用・推奨するNo.1ブランド（※）としても知られる。今回リニューアルした背景には、「電動歯ブラシ市場をけん引していくことが、業界をリードするブランドとしての使命」との意気込みがあった。

※2017年11月～2019年5月にかけて、世界各地域を代表する21カ国において、合計4,908名の歯科医への調査を実施。P&G調べ。

フルモデルチェンジにあたって、「自宅で歯科クリーニングをしているかのような高いパフォーマンスを発揮し、かつ、ブラッシング習慣そのものを楽しく、喜びのあふれる体験に進化させていく」（大亀氏）ことが念頭にあった。オーラルB iOは「毎日のブラッシング体験を向上させる」理想を追求し、電動歯ブラシのトップブランドとしてのテクノロジーを詰め込んだ象徴的な存在として生まれた。

• 最大の変更点は、モーターがギア式から「リニアマグネティックシステム」と呼ばれる磁気駆動になったこと

最も大きな変更点は、駆動方式の一新。従来は一般的なギア駆動式だったが、オーラルB iOではリニアモーターカーと同じ原理で磁気により駆動する「リニアマグネティックシステム」が採用された。変更に至った理由を、大亀氏は次のように話した。

「完成された質の高いブラッシングの実現にあたり、核となるのは駆動方式です。モーターを磁気駆動にしたことで、ギア駆動で生じていた歯車同士の摩擦がなくなり、エネルギーのロスを抑えられました。細かな動きのコントロールが可能になり、『遠心マイクロモーション』によってブラシの1本1本が振動するようになりました。ブラシは、以前から採用していたオーラルBの丸型回転ブラシをベースにしています。これは、手磨き用ブラシよりも優れていることが実証されているからです。新たな駆動方式と高性能なブラシによって、単に高い歯垢除去力の提供に留まらず、穏やかでありながらも心地よいブラッシング体験につながりました」

変更は細部にわたり、ブラシヘッドの差込口の形状も変更されている。「リニアマグネティックシステムの効果を最大限に引き出すために、中の部品にもこだわる必要がある」というのが理由だ。

機能とデザインを両立するために、思わぬ壁が立ちはだかった。その壁は、ハンドル部分とブラシの合わせ目の設計にあった。

「美しいデザインにするために、外側から見たハンドルからブラシへのつなぎ目は滑らかになっている必要があります。その一方で、内部ではリニアマグネティックシステムによる動きをブラシの毛先まで伝達できるような構造が必要で、小さなスペースに技術を詰め込まなければなりませんでした。この制限された条件で、見栄えのよさ、掃除のしやすさ、ブラシヘッドの装着のしやすさを求めながら、落下や摩耗に耐え、ブラシ1本1本に十分な力を伝えられるように設計するのは、技術者たちが非常に苦労したところです。ニーズを満たす最終設計を見つけるために、モデリングとシミュレーション、試作品の作成、消費者テストと技術的テストを何度も繰り返しました」と大亀氏は明かす。

• 駆動方式の変更に伴い、替えブラシも効果を効率的に引き出すための新しい構造のものに一新

ブラッシングの楽しさを演出し、歯みがきの「上達」もアシスト

オーラルB iOは、グリップに搭載したカラーの液晶ディスプレイも特徴的だ。「インタラクティブディスプレイ」と呼ぶこの部分には、次のような意図が込められている。

「ユーザー調査では、ブラッシングの時間が楽しければ楽しいほど長くなる傾向があります。そこでディスプレイ部分には、単に操作や設定を表示するだけでなく、挨拶や笑顔をアイコン表示するユニークな仕掛けを仕込みました。消費者の方とインタラクティブにやりとりすることがブラッシングの楽しさにつながる、そのためのパートナーになりたいという思いがあります」（大亀氏）

• 本体のグリップ部分に搭載された「インタラクティブディスプレイ」には、ブラッシングの経過時間などの情報を表示する

• ブラッシングが終了すると、状況に応じてスマイルマークなどのアイコンを表示。朝の時間帯には、太陽のアイコンと「おはようございます」というメッセージを表示するなど、ブラッシングが楽しくなる仕掛けが施されている

ブラッシングスキルをアシストする機能も複数組み込まれた。そのひとつが「スマート押し付け防止センサー」だ。ブラシ部分に内蔵したセンサーが、適切な力加減でブラッシングできているかどうかを判断し、ハンドルのLEDリングを3色に光らせて知らせてくれる。従来モデルから搭載されていた機能だが、オーラルB iOではさらに進化している。

「従来のモデルでは2段階でお知らせをしていましたが、今回は3段階になっています。ブラッシング圧は、弱すぎても強すぎてもよくありません。従来は強すぎるときだけの通知でしたが、オーラルB iOでは力が弱すぎる場合にもお知らせしてくれるようになりました。それにより、歯ぐきを傷つけないのはもちろん、弱すぎてきちんと磨けていない癖にも対応し、歯垢除去力を最大限発揮できる、正しいブラッシングに導きます」（大亀氏）

• ブラシの付け根部分のリングには、ブラッシング圧を感知してLEDで3色に光る「押し付け防止センサー」を装備。適切なブラッシング圧では緑に、弱すぎると白に、強すぎると赤に光る

電動歯ブラシ業界をけん引するトップブランドとして、プロフェッショナルな歯科クリーニングを家庭においても手軽に実現することを目指し、フルモデルチェンジが行われたオーラルB iO。スマートでスタイリッシュな本体には、想像を超える革新的技術が詰め込まれていた。