日本マイクロソフトがMicrosoft Japan Surface Eventを開催し、すでに発表済みのSurface Studio、Surface Laptopに加え、つい先日、上海でのイベントで発表されたSurface Proを日本に投入することが明らかになった。
おおむね事前の噂通りで、Surface Proについては、Surface Pro 5ではなくnew Surface Proになる。Suraface Penの筆圧レベルが向上していたり、バッテリ容量の増加によって駆動時間が大幅に拡張されたり、あるいは、キックスタンドの使い勝手など、Surface Pro 4からの改善点は数多くある。当然、プロセッサも第7世代の最新Core i プロセッサだ。冷却機能を見直すことで、Core mやCore i5搭載機ではファンレスも実現している。
かなり大幅に手が入っているが、それでもSurface Pro 5ではなく、new Surface Proである。アップル風にいうと「新しいSurface」ということになる。イベント冒頭にステージに立った日本マイクロソフトの平野拓也社長は「これで日本のSurfaceもいよいよ第二章に突入する」とし、今後の積極的な展開の意気込みを語った。
マイクロソフトがハードウェアを作る
MicrosoftがPCのハードウェアを作って売ることには賛否両論がある。Microsoft的にはOEMベンダーが手を出しにくい、とんがったカテゴリの製品を世に問うことで、結果として新たな市場を開拓するという言い分がある。たとえば、Surface Proは、2in1の市場を大いに盛り上げたという点では、その功績を認めざるを得ない。だが、Surfaceはハードウェアをハダカで購入することができない。たとえば法人が大量導入するような場合でも、WindowsというOSをプリインストールした状態でしか入手できないのだ。
通常のPCベンダーであれば、ハードウェアを提供し、OSはMicrosoftからボリュームライセンスで入手、購入側の企業の要望通りにキッティングして納品といった流れで導入していけるが、Surfaceの場合は、こうした形での購入はできない。あるとすれば、SIerなどを間に挟み、そこでカスタマイズや独自アプリケーションのインストール作業などを委ねなければならない。そういう売り方をするということで、法人市場を根こそぎ持って行くということにはならないと主張しているのかもしれない。
Surface Proは、2in1の市場をある程度開拓することができたと、なかば初期の目的は達成したとMicrosoft自身が思っているからこそ5を冠しなかったんじゃないかとも思っている。そういう意味ではnew Surface Proではなく、The Surface Proでもよかったのかもしれない。
ありそうでない、3:2のタッチ対応ノートPC
その一方で、Surface StudioやSurface Laptopがこれから開拓するであろう市場は、まだ未踏の地だ。前者はなかなか成熟しないオールインワンの市場の中で、クリエイターのワークステーションとしてのPCの方向性を模索するものだし、後者はPCの機動力を模索するものだ。
Surface LaptopはただのクラムシェルノートPCのように見えて、スクリーンのアスペクト比はSurfaceが開拓した3:2だし、タッチにも対応している。実はこういうノートPCはありそうでない。Microsoftの16:9アスペクト比の完全否定は、はたで見ていても大胆だ。振り回されたOEMには申しわけないが、かつてWindowsの推奨アスペクト比が16:9だったことを忘れてしまいそうだ。
しかも、Surface LaptopのWindowsは、話題のWindows 10 Sだ。いわゆる勝手アプリを使うことはできず、ストア経由でインストールしたアプリだけが使えるというもので、Windowsならではの自由度をあえて制限することで、セキュアでトラブルの起こりにくい環境を提供しようとしている。
教育市場へのMicrosoftの野望がささやかれてはいるが、実際には、もっと大きな展望があるんじゃないだろうか。レガシーアプリケーションをトラブルといっしょに抱え込むのではなく、管理された世界でセキュアにWindowsが使える環境と、そのための新しいラップトップというのは、教育市場はもちろん、企業利用にも向いている。方向性としては悪くない。そこにはハードウェアを売るだけではなく、Windowsの新たな使い方のスタイルで市場を開拓しようという新たなミッションがあるわけだ。
いろんな意味でSurfaceの第二章だといえそうだ。
(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)