日本マイクロソフトが教育のデジタルトランスフォーメーションに向けた戦略に関するプレス向けの説明会を開催した。

Surface Hubを黒板代わりに使った模擬授業が行われた

これから起こる第4次産業革命にふさわしい人材育成を促進するのが主たる目的であり、プログラミング教育の普及促進や教員研修プログラムの提供開始、そして、SINET5とAzureの直接接続などがアナウンスされた。

また、Windowsクラスルーム協議会が全国ICT教育首長協議会と連携しながら、現代に求められているアクティブラーニングの実施に適したICT教育研修モデルルームを地域ごとに設置するという。まずは、教える側の教育というフェイズだ。

アクティブラーニング、現場に負荷も

アクティブラーニングと一言で言っても、これは、使う立場の児童生徒はともかく、教える立場の先生方にとってたいへんな重荷だ。若い先生でなければ、これまで何十年も培ってきた板書や教室での立ち居振る舞いをいったんリセットし、新しい作法を身につけなければならない。

そんな甘いことを言っている場合ではないのかもしれないが、実質的にこれまでの仕事に対して、別の仕事が増える。大きな問題は、教えなければならないことが、その授業の科目とコンピュータリテラシーの両方に及ぶことだ。教室にSierが常駐するわけでもなく、起こった問題は、自分で解決しなければならない。これが仕事かという類いのトラブルだってあるに違いない。

説明会では、モデルルームの状況を体験できるにわか教室が用意され、記者一人一人が一台のSurfaceに向かい、黒板代わりのSurface Hubを使った模擬授業が行われた。

想定としては、教師があらかじめ用意したOneNoteの授業ノートに書き込み禁止の共有を設定しておき、生徒はそれを自分のSurfaceに表示させた上で、教師は板書的にSurface Hubに表示されたOneNoteメモに、注釈や図示を書き込みながら授業を進めていく。

その板書メモは自動的に同期されて生徒のSurfaceにも順次表示されていく。生徒は生徒で自分のメモをノートに書き込み、教師は任意の生徒のメモを表示させて確認することができる。

いったん仕組みがわかってしまえば、何てことのないお膳立てだが、その仕組みをうまく活用し、発展的に使えるようなスキルを身につけるのには時間もかかるだろう。

画面は大きく、アプローチは多彩に

気になったのは、生徒が使うPCが、たかだか12型程度のタブレットでよしとされている点だ。机の上のSurafaceにはタイプカバーとマウスが接続され、それとは別にペンが用意されていた。当然、Surfaceだからタッチもできる。だが、いかんせん、画面が小さすぎるのではないか。

ちょうどタイミングよく、この説明会の翌日に、Surface Studio(28インチ)が発表されたが、せめてそのくらいのサイズはほしいところだ。

28インチのSurface Studio

A4程度の用紙なら実寸で見開き表示できるタッチスクリーンは、授業メモを見ながら、関連事項をブラウザで調べたりするにも便利だし、それでこそPCならではの使い方だといえる。

そのPCに対して、キーボード、マウス、タッチ、音声など、あらゆる方法でアプローチができるようにして、子どものコンピュータに対する対話の方法を豊富に用意するべきだ。小型の2-in-1 PCだけというのは、いかにもプアではないだろうか。個人的には、本体の参考価格が100万円を超えるSurface Hubに使う予算は、クライアントPCにまわすべきかもしれないとも思う。

ようやく生まれた"変革"の芽に期待

Windows XPの頃を起点に考えても、PCが一般的に使われるようになってすでに10年以上が経過している。ようやく、こうした取り組みを教育の現場が受け入れる可能性が出てきたことは素直に喜びたい。どこかのタイミングで変革を起こさなければ、日本に未来はないからだ。

教える側も、教える仕組みを考える側も、そのためのお膳立てをする側も、とにかくたいへんだが、将来の日本のために努力してほしい。

(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)