あけましておめでとうございます。
と、新年の挨拶を書きながらも、21世紀に入って四半世紀を過ぎた今、正月のあり方もずいぶん変わったものだなと感じている。
なにしろ、ウェブ媒体に寄稿するようになってからは年末年始であろうとカレンダー通りのスケジュールが進行するようになってしまった。
かつては年末進行というのがあって、正月をみんなが休めるようにスケジュールを前倒して仕事をした。だから、歳末は、猫の手も借りたいくらいに忙しかった。感覚的には2カ月分の仕事をしなければならないくらいだったからだ。
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2024年1月2日掲載の連載、2024年12月31日掲載の連載に続き、Adobeの画像生成AIサービス「Adobe Firefly」で「猫の手も借りたい忙しさ」の年始の商店街を生成してみた。門松や看板の文字に破綻があるが、忙しい雰囲気は出ている
お正月にもお店が開く時代の始まり
そういえば、元旦に営業する百貨店などが問題になったのは2010年代の半ばからだ。1990年代になって元旦営業が次第に浸透するようになり、1996年のダイエーによる開始を経て、2000年代には百貨店も追随、元旦営業は当たり前になった。
ところが2016年に三越伊勢丹ホールディングスが「従業員のワークライフバランス」を理由に初売りを1月3日にする決定をしたことがきっかけの一つとなり、小売業界全体が元旦営業を見直すようになったとされている。
理由としては人手不足もあったし、サービス業が正月も休めない仕事として求人に影響するようにもとられてしまう懸念もあった。企業イメージとして従業員を大切にする姿勢を示す必要も生じていた。
2020年代にはワークライフバランスが社会全体の意識として高まったり、コロナ禍を機に働き方改革が話題になるなど、いろいろな要因が複雑に絡み合うようになった。
でも、テーマパークやホテルは休まない。おせちに飽きればUber Eatsでデリバリーも頼める。普段より時間をかけてEコマースサイトを探索して、ちょっとした贅沢品を購入することもできる。
「モノ」から「体験」へ、元旦にしか売れないもの
小売業界はモノを売っているから消費者は元旦でなくても同じものが買えるが、旅行やレジャー、サービス業は体験を売っているから元旦の特別な体験を売れるのは元旦だけだという説もある。
でも、今や、小売業界も体験を売るビジネスのひとつでなければ生き残れない。消費者は元旦という特別な日に好きなものを買う体験を欲っしていたりもする。いろいろと社会は複雑になりつつあるわけだ。
もちろん、元旦にポチった商品が、翌日に届くかどうかは運送業界が担っている。でも、それがいつまで続くか。各業種の当たり前が、新しい当たり前になることで、われわれの当たり前は大きく変化していくのだ。
その複雑さを余計に複雑にするのがAIだ。今後は、AIの実用化が進むにつれて、さまざまな業界で「正月は休まない」という常識が「正月は休む」というかつての当たり前に戻っていくかもしれない。
また、宿泊業界では、最近のトレンドは元旦に休むというよりも、正月はピークとしてしっかり稼いで、その直後、1月の中旬にまとめて休むというような新しい当たり前が、文字通りの持続可能な経営モデルとして定着しつつあるという。
観光庁も宿泊業の働き方改革として、年間30日以上の休館日を設ける事例を公表するといった動きもある。
宿泊先となるホテルや旅館の予約システムも、ITの貢献で予約不可の時期をコントロールしやすくなっている。それで比較的長期の一斉休業をコントロールしやすくなっているということも技術的背景としてあるらしい。
変わり続ける「当たり前」、どう向き合うか
消費者側のわれわれとしても、次々に登場する新しい当たり前を柔軟に受け止める覚悟をもつ必要がある。
たとえば、日本人の多くはコンビニに万が一を頼っているといってもいい。百貨店が元旦に休みでも、コンビニだけは開いていると思っているのではないか。
でも、いつまでもそうであるかどうかはわからない。売る側を支えるAIが需要予測や在庫管理を徹底し、買う側も暮らしを支えるAIが、正月に買えなくても困らない準備をうながすようになる将来も考えられる。
そんなことを考えながら、今年の正月は、元旦に近所の神社に歩いて行って初詣した以外、三が日を家の中でゴロゴロしながら過ごした。この原稿は休みが明けた1月5日の月曜日に書いている。いい正月だったと思う。
というわけで改めまして、本年も、ご愛読、よろしくお願いいたします。