フリマでお馴染みのメルカリがMVNOとして通信ビジネスに参入する。3月4日に「メルカリモバイル」の提供を開始、NTTドコモに通信設備を委ね、メルカリを通じて申し込みから支払い、日常の管理までを完結できるようにした。
料金プランは月額990円(2GB)と2,390円(20GB)の2種類だけだ。当初はeSIMを使った音声/SMS/データ通信が含まれる基本サービスのみでスタートし、今後、物理SIMカードの提供、データ専用プラン、au回線の追加、通話定額の導入、支払い手段の追加といったサービスの追加提供を考えているという。
ギガを余らせる人と足りない人をマッチング
最たる特徴は、メルカリを使ってギガを売買できるというところだ。一般的なデータ通信サービスでは、ギガ、すなわち、1カ月に使えるデータ通信容量に応じたプランを選び、その上限を超えると、スピードの制限などが行われる。いつもはスムーズに表示される動画も、制限下ではカクカクしたり、まるで再生できなかったりといったことが起こる。
エンドユーザーの自衛策としては月末までちゃんと自分のギガをキープできるように計画的に使うとか、なくなったら別途料金を支払って追加するといった方法がある。逆にギガを余らせてばかりいるユーザーは、下位プランに移行するのでは足りないし、現行プランでは多すぎるといった悩みを抱えている。だが、メルカリモバイルでは、エンドユーザーが自分のギガをメルカリに出品して売ったり、希望の容量を購入したりできるのだ。
メルカリによれば、毎月のギガが余っても「特に何もしていない」「繰り越しているが、結局使わず余る」の合計が75.0%、データ量が足りない人のうち45.2%は「毎月追加でギガを購入する」などということがわかっているそうだ。
そして、料金プランの柔軟さについても「使い方に合わせてプランを自由にカスタマイズしたい」意向がある人は78.6%に上るという。こうしたことが起こるのは、誰もが万が一を考えて余裕をもったプランを選ぼうとしているからなのだろう。
そこで、メルカリモバイルでは、ギガを余らせてしまう人とギガが足りない人をマッチングすることで、個人間で自由にデータ通信容量を売り買いできる機能を実現した。
いつものフリマアプリのように、1GB200円から「メルカリモバイル」のユーザー同士で売り買いができる。ギガを売って得られたお金は「メルカリ」の残高にチャージされ、「メルカリ」や「メルペイ」での決済に使える。また、購入したギガは自分の使えるデータ容量に即座に反映される。
修羅場になるのは想定済み? 価格設定はどうなる
メルカリモバイルの月々のデータ容量は翌月への繰り越しがないので、月末で消えてしまう。いつも余らせているユーザーにとっては早々と売ってしまうのが得策だが、月末近くになると、残り期間がわずかということで値下がりするのか、ギガが足りないユーザーが多くて高止まりするのか、そのあたりは予想がつかない。修羅場になるのは想定済みだとメルカリはいう。
正規プランは月額990円(2GB)と2,390円(20GB)の2種類だけなので、10GB/月のサービスをリーズナブルに使いたいといった場合は、2,390円で20GBを入手し、1,000円程度で10GBを売却できれば差し引き1,000円台半ばで10GBという計算になる。
1,500円で売り抜けることができればかなりおトク感がある。取引が1GB単位であること、また、メルカリの手数料10%や、最低200円からの出品などの制限を考慮しなければならない点には注意が必要だ。ちなみにメルカリ公式でもギガは出品されていて、こちらはいつでも1GB550円で追加購入できる。
エンドユーザー同士が自分のデータ容量をやりとりできる仕組みは、オプテージによるMVNOのmineoのフリータンクやパケットギフト、パケットシェアなどが知られている。タンクは不特定多数のユーザーでのデータ容量シェアで、ギフトは特定相手への贈与、シェアはあらかじめ決めた特定複数ユーザーでのグループ内シェアだ。金銭のやりとりは発生しない。あくまでも使えるデータ容量が往来するだけだ。
メルカリのサービスでは、メルカリモバイル自身がいったんエンドユーザーに売った通信可能容量をユーザー自身がフリマで売買できる点がユニークで、まさに、メルカリのメルカリらしいサービスだといえる。同社公認ということなので法律的にも問題ないのだろう。
手軽な小遣い稼ぎは見込めそう。短期間での黒字化なるか
ちなみに20GBで2,390円ということは、正規料金は1GBあたり約120円ということだ。1割の手数料を考慮するなら1GBあたり132円程度が損益分岐点となる。
メルカリ公式は550円で、ドコモやauといった大手MNOの半額程度だが、さらにその半額程度で売買するなら需要もありそうだ。これでビジネスを成立させることができるかどうかは別として、小遣い稼ぎをするくらいのことならできなくもないんじゃないか。
メルカリの永沢岳志氏(執行役員CEO Fintech 兼 MVNO事業責任者 兼 株式会社メルペイ代表取締役 CEO)は、MNO参入は考えていないとし、大きな投資の予定もなく、短期間で黒字化をめざすとしている。
空気と同じくらいに身近にあって当たり前のデータ通信網というインフラが、こんなことでいいのかという疑問も感じつつ、サービスの行方を見守りたい。