各社が続々とAndroidタブレットをリリースしている。2023年のタブレットは豊作だ。実にうれしい。

レノボやNECパーソナルコンピュータ、サムスン、Xiaomi、Oppoなどが堅実に守ってきたカテゴリで、ここのところ、飲食店のオーダー端末くらいの業務用イメージが強かったAndroidタブレットだが、Androidの総本山ともいえるGoogleがGoogle Pixel Tabletでこの市場を再開拓することをもくろんでいるようだ。

  • Google Pixel Tabletと同梱品。Pixel TabletはTensor G2プロセッサを内蔵した10.95インチ画面のAndroidタブレットで、6月に発売した

49,800円とリーズナブルなAndroidタブレット「Pad 6」

Xiaomiも同社のタブレットをほぼ2年ぶりに刷新、Pad 6の日本での発売を開始した。

そもそも、このシリーズには、無印Pad 6とPad 6 Proがある。両者の違いはプロセッサでProはSnapdragon 8+ Gen 1、無印はSnapdragon 870だ。日本で発売されるのは1モデルで、ハイエンドプロセッサ搭載のProではなく、870搭載の無印となる。

それでも十分に高性能なプロセッサで、6GBメモリを搭載し、128GBのストレージを持った11インチ液晶のAndroidタブレットとしては、とてもバランスのいい製品だといえる。

極端に負荷の高いゲームなどを試したわけではないが、カジュアルなユースケースで実際に使ってみた限りでは、ストレスを感じることはなかった。処理性能の高いタブレットデバイスは使っていて気持ちがいい。

  • Xiaomi Pad 6。価格以上のお買い得感があるデバイスだ

価格も49,800円とリーズナブルだ。この価格は直販をはじめ、ECサイト各社で販売されるモデルのもので、量販店頭などでの販路モデルは1万円高い59,800円となる。ただし、メモリが8GB搭載されている。

量販店購入時のポイント還元などを考えると5,000円でメモリ2GBアップということになる。現状で、国内のタブレット市場はiPadの独擅場感が強いが、OSがAndroidとはいえ、同等、またはそれ以上のパフォーマンスを持つハードウェアとしては、極端かもしれないが半額といったイメージではないだろうか。そして、価格以上のお買い得感があるデバイスだ。

有力ブロガー5名に聞いたPad 6の使い勝手

Xiaomiの日本法人はブロガーなどのインフルエンサー、Xiaomiファンに声をかけ、「Xiaomiモノづくり研究所」というイベントを頻繁に開催、同社の製品や技術などをアピールしている。

Pad 6の発売開始にあたっては、有力ブロガー5名を東京に呼び寄せ「みんなでUNBOX」としてPad 6を提供、彼らに今後、主力デバイスとしてこの製品を使う気になれる製品に仕上がっているかどうか、本音のファーストインプレッションをきいている。

ブロガー諸氏の評価は概ね好評で、アルミのユニボディの質感、そして、6.51ミリというその薄さなどに注目が集まっていた。先行している競合ともいえるGoogle Pixel Tabletと比べても、確かに薄いし質感もいい。お洒落な印象を持ったようだ。

  • イベント「モノづくり研究所」に全国から集まったXiaomiファンブロガーのみなさん。左から三番目はイベントをリードする同社日本法人の安達晃彦氏(プロダクトプランニング本部長)

また、同時に提供される外付けキーボードやカバー、ペンといった周辺アクセサリーのできのよさも高く評価されていた。

iPadのようにサードパーティがどんどん関連アクセサリを出してくれて、よりどりみどりならいいが、市場が盛り上がる前の状態ではなかなか期待できない。それだけに純正アクセサリの充実は、購入したユーザーとしては、とてもうれしいはずだ。

AndroidタブレットにもGPSとWANが欲しい件

こうしてせっかく盛り上がりが再燃しようとしているAndroidタブレットなのだが、各社製品に、WAN対応のものがほぼないことが個人的に気になっている。つまり、Wi-Fiなどがある環境で使うことが前提で、出先などでいつでもどこでも通信ができるということがあまり想定されていない。

もちろん、誰もがスマホを持っているのだから、それでテザリングすればいいといえば、そうだし、そもそも家から持ち出さずに使われることがほとんどという想定もわかる。モバイル通信非対応の副作用として、現在位置を取得するために使われるGPSモジュールが、WANのチップセットに含まれているため、WAN非対応のタブレットではGPSが使えない。

GPSがないからといって現在地を取得できないというわけではなく、Androidでは、BluetoothやWi-Fiを使って、できる限り正確な現在位置を取得しようとするので、ある程度は実用にはなる。

だが、カーナビのようにリアルタイムで正確な位置を取得というわけにはいかない。となると、タブレットを外で使うときに重宝する地図アプリのせっかくの機能も台無しだ。もちろん位置情報を要求するゲームもできない。ポケモンGOやPikmin Bloomなども、GPS非搭載の端末ではプレイできないのだ。

観光旅行や山歩き、街歩き、ウォーキングなど、GPSが役にたつフィールドは少なくない。WAN搭載によって市場価格が数万円は高くなることを考えると、メーカーとしてもなかなか手を出しにくくなっているという事情も理解できるのだが、ずっと、動画コンテンツプレーヤーやゲーム用のデバイスとしてアピールしてきたタブレットの市場を再起動して、新たなマーケットとして開拓していこうというのなら、もっと、アクティブにタブレットを使える提案が必要だし、そのためにはWANやGPSの搭載はかなり大事なポイントだと思うのだが、どうだろう。

市場に求められている機能を改めて考えてほしい

それに、スマホのことしか考えられていないスマートウォッチやバンドなどとの連携も見直してほしいところだ。個人的にはWANはともかくGPSは死守してほしいと感じている。

特に、Xiaomiのようなメーカーは、フィットネス市場でも高いシェアを誇り、スマートバンドやウォッチなどに低価格で精度の高いGPSモジュールを実装する知見がある。だが、タブレット対策は手つかずだ。きっとシニアの市場でも求められているはずなのにだ。ここはひとつ、ぜひ、考えてほしいところだ。

最後にひとつ苦言を。製品に同梱されているのは急速充電用の33W ACアダプタなのだがUSB PDに準拠した規格ではない、片側プラグがUSB-AのケーブルをアダプタのUSB-Aポートに接続し、本体のUSB-Cポートに電力を供給する同社の独自規格のものだ。さすがに、こういうのは、もうやめにしたらどうかと思う。製品が素晴らしいだけに、こういうところでガッカリしたくない。