今、市場で手に入るワイヤレスイヤホン/ヘッドホンは、そのほとんどが再生機器とBluetooth規格で接続する。Bluetoothは短距離ワイヤレス通信の標準規格で、オーディオ再生以外にも、マウスやキーボード、スマートウォッチとスマホなどとの接続でもお馴染みのものだ。

  • Jabra完全ワイヤレスイヤホン「Evolve2 Buds」。マルチポイント接続に加え、安定して通信できる独自レシーバーが付属している

Bluetoothオーディオについては、次世代の規格であるLE Audioが始動し、従来のクラッシックオーディオとの両輪で新しい使い方を提案しようとしている。

複数のデバイスに向けて放送的にオーディオを送るブロードキャストや、高品質で低消費電力のオーディオコーデックとしてのLC3、また、補聴器利用も想定されるなど、今後は、さらに多くの場面で重宝することになりそうだ。まだ対応機器は少ないが、この先が楽しみだ。

「同時に通信」できるマルチポイント機能が便利

で、Bluetoothだが、マルチポイントという機能がある。すべてのBluetooth機器がサポートしているわけではないが、だんだん増えてきているようだ。

この機能を使えば、同時に2つの機器と通信ができる。左右一組のイヤホンを2台の再生機器に同時接続できるのだ。よく似た機能にマルチペアリングというのがあるが、あくまでも「同時に通信」という点で異なる。

同時に通信ができて何がうれしいかというと、たとえば、パソコンでの会議をしているときに、スマホに着信があって応答しなければならないといった場面に対応できる。パソコンとの通信に、スマホとの通信が割り込んで着信を知らせ、対応が終わったら、また元のパソコンとの通信に戻るという使い勝手になる。

マルチポイントはとても便利な機能だが、入れ替わり立ち替わり再生デバイスが変わるという場合には無力だ。つなぐたびにペアリングをやり直すというのもやっかいだ。ペアリングしようにも、すでにペアリングしている機器がそばにある場合、そちらとの通信が確立してしまっていて混乱するということも多い。

これなら昔ながらの有線イヤホンの方がずっとわかりやすかったともいえるし、ワイヤレスの場合なら、独自のUSBレシーバーを、その都度、機器につなぎなおしたほうがいいという考え方もある。

たとえば、ロジクールは同社のワイヤレスマウスに対して、独自規格のLogi Bolt USBレシーバーを添付、BluetoothとLogi Boltのどちらでも使えるようにしている。

同社の高機能ワイヤレスマウスは3系統の通信を切り替えて使えるが、たとえば2系統のBluetoothと1系統のLogi Boltを切り替えられるようになっている。頻繁に使う機器2台はBluetoothでペアリングしておき、入れ替わり立ち替わり使う機器は、その都度レシーバーを装着するといった使い方ができる。

独自レシーバーがあれば複数デバイスでマルチポイント化しやすい

イヤホンも同じようにできればいいのにと思うのだが、ほとんどの機器はBluetooth接続のみで、マルチポイント機能にたよらざるをえない。BluetoothのUSBアダプターもあるが、パソコンにBluetoothアダプターを追加しても、別経路の通信ができるようにはならない。

その不便を解消してくれる、Jabra「Evolve2 Buds」のような製品もある。通常のBluetoothでマルチポイント接続ができる以外に、独自レシーバーが付属している。

このレシーバーはBluetoothアダプターなのだが、再生機器から見ると、USBオーディオアダプターに見えるようになっている。だから、再生機器のBluetooth通信とは関係なく、もうひとつのワイヤレス通信が可能になるわけだ。ノートパソコンなどのUSBポートにレシーバーを装着するので、電波状況による障がいにも強いというメリットもある。

これならスマホとはBluetoothで接続しておき、オフィスや自宅のパソコンなどとは、その都度、使う機器にレシーバーを装着するようにすれば、いつでも任意のマルチポイントペアが成立する。

Jabraの業務用Bluetoothヘッドセットでは、以前から当たり前のように提供されていた機能だが、この製品のように、TWS(True Wireless Stereo、完全ワイヤレスイヤホン)にも同梱されるようになった。異なるデバイスを併用している方はぜひ試してみてほしい。

探せば、同種のアダプターが単体でも発売されているようだが、マイクが使えないものが少なくないようなので注意してほしい。