充電速度が速いモバイルバッテリーがいろいろと出てきているようだ。今回は、オウルテックのOWL-LPB20015とAnkerの535 Power Bankを試してみた。どちらも仕様上は20,000mAの容量を持つUSB Power Delivery(USB PD)対応の製品だ。重量も340g、350g程度と、大きく違わない。

  • Ankerの535 Power Bank(左)と、オウルテックのOWL-LPB20015(右)。カラバリも鮮やか

    Ankerの535 Power Bank(左)と、オウルテックのOWL-LPB20015(右)。カラバリも鮮やか

モバイルバッテリーの容量がmAだとわかりにくい

容量をmAの単位で表すのはいいかげんにやめてほしいところだ。実際の定格が製品に刻印されているが、オウルテックの製品は72Wh(14.4V 5,000mA)、Ankerの製品は74Wh(7.4V 10,000mA)となっている。

それぞれで電圧が異なるのでわかりにくいかもしれないが、電流と電圧を乗算すると電力となって、その製品の汎用能力がわかる。20,000mAという値は、モバイルバッテリー内部に使われているリチウムイオン電池の定格である3.7VでWhを除算したものだ。

今回試したオウルテックとAnkerの製品は、双方ともに30Wでの充電(入力)ができる。多くのモバイルバッテリーの充電仕様は18Wだが、その約1.6倍の速度で充電ができるというわけだ。モバイルバッテリーを短時間で充電できれば、カフェなどのコンセントを借りて補充する場合も、短時間でたくさんの電力を蓄えられるので安心だ。

バッテリーからバッテリーへの充電、実は非効率

また、Ankerの製品は出力が30Wまでだが、オウルテックの製品は60Wまでと力強い。充電される側のスマホやタブレット、パソコンは18W程度から65W超まで、受け入れることができる電圧がまちまちで、パソコンなどでは小さな電力では充電ができないようになっているものもある。オウルテックの製品のように60Wの出力ができれば、まるでACアダプターを接続したかのようにパソコンに電力を供給できる。

もっとも一度に供給できる電力が大きくても、モバイルバッテリーの容量は74Whと限られている。目安としてスマホが15Wh程度、パソコンが50Wh程度のバッテリーを内蔵していることを考慮すると、74Whはそれらを何回充電できるかは割り算すればわかる。

ただ、バッテリーでバッテリーを充電するのは効率が悪く、74Whのモバイルバッテリーをスマホにつないでも、15Whの内蔵バッテリーを5回程度フル充電できることはないし、パソコンに内蔵された50Whのバッテリーを空っぽの状態からフル充電までに復活させるのは難しいだろう。このあたりは話半分と考えておこう。

iPhone SEは極端にバッテリ容量が少ないし、iPhone 14は20W超の充電に対応していたりするようだ。こうした仕様を知った上で、賢いモバイルバッテリー選びをしたいものだ。だからこそ、メーカーは、きちんとバッテリーの容量や充電時に受け入れられる電力等の情報をしっかりと明示してほしいものだ。

スマホがフル充電でもモバイルバッテリー利用がおすすめ

なお、バッテリーからバッテリーへの充電をできるだけ避けるためには、バッテリーがフルに近い状態でモバイルバッテリーをつなぐようにする。バッテリーがフルなら、モバイルバッテリーから供給される電力が機器の駆動のためだけに使われる。だが、バッテリーが半分になってからモバイルバッテリーを接続すると、モバイルバッテリーの持てる電力が、機器のバッテリーの充電に使われて効率が悪くなる。

74Whもの大容量バッテリーを持ち歩いていれば、丸一日の電力調達に不自由することはないだろうけれど、できるだけバッテリーからバッテリーへの充電という状況が短時間ですむように工夫すれば、結果として使える電力が多くなることを頭の片隅に置いておこう。

停電などで電力が得られず、復旧がいつになるのかわからない場合は、スマホのバッテリーがフルでも最初からモバイルバッテリーをつなぎ、スマホ側のバッテリーが減るのを抑止することで、トータルの利用時間が増える。

旅行などでコンセントのない電車で長時間移動するようなときにも、電車の中ではモバイルバッテリーでスマホを使う。ここが勘所だ。スマホのバッテリーが空になってから接続するのは効率の点でソンをするということを覚えておこう。