• ソニーの「LinkBuds S」は、自然な外音取り込みができる“常時装着スタイル”を意識した完全ワイヤレスイヤホンだ

    ソニーの「LinkBuds S」は、自然な外音取り込みができる“常時装着スタイル”を意識した完全ワイヤレスイヤホンだ

ここのところかつて懇意にしていた方々の出版が続いている。DOS/Vの父といってもいい堀田一芙氏の「老いてからでは遅すぎる」(海辺の出版社刊)や、放送作家の藤井青銅氏の「一芸を究めない」(春陽堂書店)などは、ぜひ、読んでみたいと思い、アマゾンのウィッシュリストに入れてあるのだが、いかんせん、Kindle版が出ていないので、購入することができないでいる。

紙に印刷された書籍を読むのはもうつらいのだ。大きな画面に表示された大きな文字でリラックスして本は読みたい。

文字は伝わらなければ意味がない

寄る年波には勝てずといったところなのだが、リアルな郵便受けに届く紙のダイレクトメールなどにも変化が起こっている。先日、家人宛に届いた大手呉服店のDMは、実にB2サイズという大サイズ用紙の両面にびっしりと商品カタログが掲載されていた。たぶん、以前はB3サイズくらいで印刷されていたように思う。

ものすごく大きな文字で視認性はまったく問題ない。呉服という商品の特性を考えれば、これでなくては、と少し感動したくらいだが、呉服の興味は若い人にもある。年代に応じたDM展開をしているとしたらすごい。

DM印刷に使われている色の配色もグレー地に白文字とか、白地にグレー文字といった視認性の低さに悩まされることなく、くっきりすっきりのコントラストで読みやすい。逆の言い方をすれば、究極のださいエディトリアルデザインだとも思うが、これからの高齢社会を考えると、これがスタンダードになっていく可能性もある。伝わらなければ意味がないからだ。

なんというか、高齢者向けのアクセシビリティであり、そこを追求しなければ、今後のビジネスは成り立たなくなっていくだろう。消費するのは若い人たちだけではないからだ。

聞こえの体験を広げる外音取り込みイヤホン

一方、ソニーはセンシング技術で新たな音体験を広げるという完全ワイヤレス型イヤホンとしてカナル型の「LinkBuds S」を発表した。

装着したり歩行を開始したりといった行動をセンサーで検知し、連携する配信サービスの音楽を自動再生し、音声ARや3Dオーディオといった音場操作による体験を提供する。単に音楽を楽しむだけではない、インタラクティブな体験が出来るオーディオセットだ。

  • 左が穴開き型の完全ワイヤレス「LinkBuds」(現行モデル)。右が「LinkBuds S」で、こちらは穴が空いていない

LinkBudsのシリーズは、さまざまなアプローチによる優れた外音取り込みが特徴的だが、今回は、カナル型で耳栓形態であっても、その装着性を高め、さらに自然な外音取り組みによって、イヤホン、ヘッドホン類の常時装着という新しいスタイルにチャレンジしている。ソニーによれば、イヤホンを使って音楽以外のコンテンツを楽しむトレンドがあるそうだ。

外音取り込みはノイズキャンセル機能の一面として、その一時停止に過ぎないと考えていたこともあったが、歳月はまったく別の方向にそれを展開し、ある種のトレンドになりつつもある。

イヤホン類を「丸一日装着する」ということは、サウンドを身にまとうということであり、耳に届くそのサウンドは外音と内音との複合現実だ。そしてそれがつらいのでは意味がない。

  • 新たな管理アプリ「Auto Play」もリリースされた。音声通知の読み上げを行うアプリを選択したり、通知の頻度を設定したりできる

「老い」をテクノロジーでカバーできる時代

ここのところ各社、いわゆる補聴器のカテゴリーに属する製品にも熱心で、完全ワイヤレスイヤフォンや、そのアクティブノイズキャンセルのテクノロジーがほぼほぼ完成の域に達しそうなことが、さまざまなシーンに影響を与えつつあるようだ。

外音取り込み技術がカジュアルな概念での新しい補聴器を生み出すかもしれない。このことも、超高齢社会のアクセシビリティに貢献するに違いないし、製品作りにも何らかの影響を与えていくことになるだろう。

結局、誰もが老いていくわけで、若いときには当たり前のようにできていたことができなくなっていく。それはどうしようもないことだとあきらめてきたのが今までの当たり前だ。でも、これからは、テクノロジーの力を借りて、以前と同じような生き方、働き方、遊び方を齢を重ねても維持していけるのがこれからの新しい当たり前だ。

自分を含め、若い人たちに迷惑をかけないですむように、テクノロジーの力を借りて、さまざまな工夫で生きてい行きたいと思う。それができるのが、今の世の中なのだからだ。