世界最大のテクノロジー展示会とされるCES。例年なら米・ラスベガスで華々しく年初を飾るイベントとして注目されるはずなのだが、今年は新型コロナの影響で、完全デジタルの開催となり、2021年1月11日からスタートした。
日本企業のCES出展については、毎年、JETRO(日本貿易振興機構)が積極的に日本のイノベーションをPRしてきたが、同機構の支援による出展者も今年(2021年)は昨年の2倍規模で、各種分野においての製品やサービスを紹介するという。これによって、日本発のスタートアップが海外市場進出するための手助けになるよう支援する。
世界最大規模の技術展示会、CES 2021がスタート
CESの開催に伴い、各IT企業も続々と新製品を発表しているようだ。今、米国はいろいろな面で最悪の状況にあって、何十万人もの人を一カ所に集めるイベントの開催はこの先も当面は難しそうだ。この世界最大の展示会が、他の展示会と異なる面があるのなら、それをどうオンラインで表現するかに注目したい。
オンラインは「五感に響く情報」が不足気味
CESに限らず、昨年(2020年)は、多くのイベントがオンライン開催に移行した。取材する側としては、どうにもモチベーションが高まらない。とにかく画期的な製品が発表されるというその場に立ち会うことができず、人、モノ、コトに限らず、偶然視界に入る斬新な出会いもない。さらには具体的な製品を手に取って感じることもできず、緊張感が希薄だ。
情報の流れがデジタル化し、必要なデータは手に入れやすくはなったものの、五感に響く情報という点では不足している。おそらく2021年も当面の間は、こうした状況は続くだろう。イベントの主催者側にとっては、ニューノーマルイベントをどのように見せ、どのように効果的なものにするか、今こそ、その腕の見せ所だといってもいい。
米国の見本市イベントは、そもそも、広い国土で、ディーラーや販売店などが、売れる商品を効率的に見つけるために開催されていた。今はもうないCOMDEXというイベントは「コンピューター・ディーラーズ・エキスポ」として、秋冬に全米のメーカーがラスベガスに集結、クリスマスシーズン以降、翌年の市場をつかむ製品群が一堂に会した。
今は、情報はアッという間に世界に同時配信されるようになった。国土の広さはほとんど問題になることはない。国土どころか、世界の端々まで情報は瞬時に届く。COMDEXは、そんな時代の中で、同時多発テロの記憶が生々しい時期に、ひっそりとその役割を終えた。
人が集まる意義、デジタルでもリアルでも必要
これから当面は、イベントのニューノーマル模索に時代が続くだろう。いや、感染症が収束すれば人は集まるのだ。だが、そのころには人は集まることの意義を見失っている可能性もある。
かつて、展示会イベントから大きなベンダーが撤退し、プライベートイベントへと移行した時期があった。大規模なイベントに頼らなくても、ブランドの知名度が十二分にあれば、さまざまなPRには十分だという戦略だ。
今のところ、各種のオンラインイベントは、出展者情報へのポータルとして機能しているにすぎないともいえる。乱暴な表現かもしれないが、いわば、出展者情報のキュレーション、いわゆるまとめサイトとして機能しているにすぎない。
別の言い方をすれば、カテゴリー別に出展者を整理した、かつてのヤフーのような検索方式だ。ヤフーもとっくにそれをやめた。今はもう、そんな検索方式で世界を分類することはできなくなっているのはご存じの通りだ。
リアルなイベントをデジタル化するというのはどういうことなのか。今なお、誰もその答えを見つけていないようだ。勝機はきっとそこにある。