2019年のリアルイベント「ポケモンGO Fest」は、シカゴ、ドルトムント、そして横浜で開催され、世界の合計で60万人以上を動員した。2019年のイベントの様子はこのコラムでも紹介した。今年は想像に難くないように、大規模に人が集まるリアルイベントは回避され、「ポケモンGO Fest 2020」として、7月25日~26日にバーチャルで開催されることになった。参加者が世界中のどこからでも参加できるイベントとなるそうだ。
イベントへの参加は昨年は無料だったが、今年は有料のチケット制となる。すでにチケットの販売は始まっていて、ゲーム内のショップで1,840円で購入することができる。チケット1枚を購入すれば、25日と26日の両方に参加ができる。開催時間は両日ともに朝10時から夜8時までだ。
イベント収益の一部を寄付へ
このイベントに先立ち、ウィークリーチャレンジとして、誰でも参加できる3種類のタイムチャレンジが開催されるなど、イベントに有償参加しないトレーナーが楽しめる仕組みも用意されている。
1,840円は参加費としてちょっと高いとも思う。だが、主催側のNianticはこのチケットの売上げから、500万ドルを最低額として寄付するという。寄付の半分は、より多様性のある世界を代表するコンテンツを創出し続けることを目標として、黒人のゲーム・ARクリエイターチームによる新しいNianticプラットフォームを利用したプロジェクトへの資金として提供され、残りの半分は地域社会の再建を支援している米国のNPO団体に寄付されるという。ただ、日本の参加者からの収益がどうなるのかは正式には発表されていない。
ポケモンをつかまえるために、とにかく街を歩き回ることが前提のゲームだが、コロナ感染拡大防止に対応するために、最近は、ずいぶんとゲームの様相が変わってきている。歩け歩けを勧めるわけにはいかなくなったのだ。
そこで、ジムやポケスポットからちょっと離れていてもスピンできたりレイドバトルに参加できるようにしたりもすれば、相棒ポケモンが大量の木の実やギフトを拾ってくれたり、また、7月からは「今日のフリーボックス」として1日に1度、無料で複数の道具を受け取れたりする。すでに一部のトレーナーにはテストとして実装されているそうだが、7月からはいよいよ本格的に展開される予定だ。
出歩きにくい世界でゲームの再構成が進む
こうしてあまり出歩けないトレーナーでも、ゲームを楽しめるようにする方向で、ゲームコンテンツの再構成が進んでいる。
その一方で、問題も起こった。リアルタイムでのトレーナー対戦を楽しめるGOバトルリーグが、6月中旬に不正利用されたことが発覚、その対処のために、かなりの期間、リーグが停止された。すでに問題は解決されてリーグは再開されているが、フェアにゲームを楽しんでいるユーザー層には気分がいいものではない。
いずれにしても、近頃のポケモンGOは、あまり出歩けなくても、仮に、うちの中に閉じこもりっきりであったとしても、それなりに楽しめるようになっている。そういうふうにゲームが改変されたのだ。
見直される前に見直す進化を
先週は、Twitter社が「Twitter×ゲームで見る、COVID-19影響下の新しい消費行動 ~ リエンゲージメントの増加とコミュニティ活性化戦略の全貌~」という長いタイトルのセミナーをオンライン開催した。
この2月から5月にかけて、「生活 買い物 消費 支出 時間 食事 健康 家族 遊び 仕事 働き方 価値観 人生 外出 お出かけ レジャー ドライブ 余暇…」ということばとともに、「見直す」という言葉の登場頻度が急上昇していたという。
「見直す」の登場頻度は、2月を100%とすると、5月には178%にふくれあがっている。コロナによる外出自粛や強いられる新しい生活様式によって、市民が自分自身の生活を多様な側面から見直さざるを得ない状況になっていることを如実に示しているというのだ。
そんななかで、いつもはやらないユーザーがゲームをするようになったり、ゲームで遊ぶことが生活の一部になりつつもあるらしい。だからこそ、ゲームを提供する側も、見直される前に見直されないようにする行動をとるべきというのがセミナーの趣旨だった。ポケモンGOの一連のゲームルール変更も、こうした活動の一環だと考えてよさそうだ。
eスポーツとしてのゲームは、ゲームプレイを観客の声援のある場所に連れ出し、実況で盛り上げるなど、リアルスポーツ観戦の要素を取り込むことに成功した。また、YouTubeなどのゲームプレイチャンネルで、プレイするのではなく、他人のゲームを見て楽しむという行為も市民権を得た。そんなゲームも、コロナの影響で、さらにいろいろな変化を経験することになりそうだ。
(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)