いよいよウィンターシーズン、あちこちからスキー/スノボゲレンデオープンのニュースが聞こえてくる。
ただ、スノースポーツは、平成の初め頃から参加人口がほぼ20%まで減っているとされている。ざっくりと積算すると現時点での日本のスノースポーツ人口は500万人程度しかいない。各ウィンターリゾートは、この値がこれ以上少なくならないように抑止するとともに、なんらかの方法で増加させる算段をしなければならない。そうでなければ、雪に恵まれたこの日本でありながら、スキーやスノボができるゲレンデが、本当に限定されたところだけになってしまうだろう。
外国語に満ちあふれるスキー場
リゾートビジネス不振に歯止めをかけているありがたい存在がインバウンドだ。著名リゾートの多くはそこに着目して成功している。もはやインバウンドをぬきにしてリゾートビジネスは成立しないとまでされている。その結果、昨今のゲレンデは外国人スキーヤー/スノーボーダーで溢れ、アフターの街は、日本にいることを忘れてしまうくらいに外国語に満ちている。
たとえば日本のスキー/スノボの聖地ともいえる八方尾根スキー場を擁する白馬連邦は、「HAKUBA VALLEY」の総称で10のスキー場を提供している。このエリアも例外ではなく、訪日外国人観光客が年々増加しているという。
このエリアでは、2018年からスマホアプリ「HAKUBA VALLEY」の提供が始まった。
日本語以外に、英語はもちろん、中国語 (簡体字・繁体字)、韓国語に対応し、10つのスキー場の天候、リフト運行状況、各種アクティビティの予約を行えるほか、シャトルバスに搭載したGPS情報をもとにバスの運行情報や到着時刻、位置情報を把握することができる。寒い中でいつ到着するかわからないシャトルバスを待つのは不安だが、その位置情報がわかれば対策がとれる。特に、白馬は宿泊エリアとゲレンデが微妙な距離関係なので、シャトルバスの存在とその使いやすさは重要だ。
また、白馬村内の店舗で利用できる電子クーポンもアプリ内で配信される。こちらは店側が電子スタンプを客のスマホ画面に押すことで、どこの国のどのような年齢の客がそのクーポンを使ったかなどの情報を得ることができる。つまり、顧客属性に紐付いた利用店舗などの動向を把握することで、白馬村へのさらなる集客に結びつけることができるというわけだ。
このアプリには白馬村、KDDI、ナビタイムジャパン、ギフティの4者が関わっている。また、KDDIは、白馬村と同村の地域活性化を目的とした協定を締結、相互連携と協働による活動を始めることになった。このアプリプロジェクトはその一環でもある。
5Gからはじまる地方創生
KDDIは、このところとにかく地域活性化への協力に熱心で、日本中のあちこちで同様の協定を締結している。直近では、福井県小浜市、宮城県東松島市、鹿児島県薩摩川内市などの協定締結がある。また、2015年からスタートしている「しまものプロジェクト」など、離島地域の活性化を推進する各種の取り組みについても熱心に関わっている。次世代ネットワーク活用に向けて、IoTによる実証実験なども地域各社と連携するなど、KDDI総合研究所の活動も積極的だ。白馬村とは、この年度内に、5Gネットワーク使った除雪車運行支援への応用を想定する検討・評価の実証実験を行う予定になっている。
ウィンタースポーツの減少どころか、これからの日本の高齢化社会、人口減少が懸念される中で、自治体としての存続すら不安視される地域も存在するなかで、地方の活性化は重要な要素だ。
11月にあった現第二四半期決算会見では、KDDIの高橋誠社長が「これだけ利益を出させてもらっているので5Gをしっかりやって、社会貢献、そして地方創生に貢献したい」と表明している。今回の取り組みも、その一環ということなのだろう。KDDIでは、今回のようにパッケージ化しやすい取り組みについては、積極的に、他リゾートへの並行展開も考えているという。
(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)