東京で五輪が開催される2020年のために、その前年からのサマータイム導入の是非が話題になっている。やるとしても、恒久的に導入するのではなく、2シーズンの限定的なものになりそうだというのも問題視されているようだ。
サマータイム反対の声、Twitterで上がる
Twitterで「サマータイム」を検索すると、「競技の開始時間を2時間早めればすむ話」とか「いったいどれだけのコストがかかると思っているんだ」「ぜったい無理」といった反対意見のツイートが続々と見つかる。
サマータイムに加えて、2019年の元号変更の実施もIT的には大きなテーマとなっている。すでに実施まで1年を切っているわけだが、その元号が何になるかはまだ明らかになっていない。だからその実装をあらかじめすませておくことができないのは問題だという論調がある。そういうことならこれを機会に官民ともに公的文書は西暦に移行してもいいんじゃないかという世論も出てきた。
この先、消費増税の対応もあるし、2020年にはWindows 7やOffice 2010のサポート終了、さらにはWindows Server 2008、SQL Server 2008のサポート終了など、ITが取り組まなければならない事案は今年から来年にかけてものすごく多い。
サマータイムについて、無茶は無茶だし大博打ではあるが、そのくらい極端なことをしないと、この国のデジタルトランスフォーメーションは進まないかもしれないとも思う。以前、アドビのデジタルガバメントサービスに関するディスカッションで、内閣参事官の奥田直彦氏が「いったん江戸時代に戻ってゼロからスタートできたらどんなにラクかと考えることもある」と言っていたのを思い出す。確かにこの世の中のあらゆるものをサマータイム対応させるのは想像を絶する作業だ。その作業のために、どれほどのコストが必要になるのか、現実的な金額できちんと試算してみたのだろうか。きっと、働き方改革なんてぶっ飛んでしまうくらいの作業が必要になる。
「日本にサマータイムはない」という前提
それでもあらゆるものがプログラマブルであればなんとかなるかもしれない。でも、決してそうじゃない。普通の電子機器に見えるようなものでも、最初から「日本にサマータイムはない」ことを前提に作られているデバイスがものすごくたくさんあって、それらに依存して社会は動いている。
平時にサマータイムを導入しようというのであれば世論が爆発しそうだが、五輪という格好の言い訳がある。政府だって世論に「オリンピックだからしゃーねーな」と言ってもらえると思い込んでいるにちがいない。あえて言うなら”確信犯”だ。
もちろん、それでヒト、コト、モノが、サクッと対応してしまうくらいの余裕があれば、この国の未来は明るい。消費も進む、ITスキルも向上する。働き方も変わるだろう。
だが、バグひとつで人が死ぬ。やるには相当の覚悟が必要だ。本当にやるのであれば、IT技術者のギャランテイを今の10倍くらいにして取り組んでほしい。子どもがあこがれる職業になれば一挙両得だ。国民はオリンピックにボランティア参加するわけではないのだから。
(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)