Googleの支払いサービス「Google Pay」が新たにSuicaとWAONが対応した。これまで対応していた「nanaco」と「楽天Edy」に続いて、新たなプリペイドのサービスが利用できるようになり、これで日本の代表的なプリペイド4サービスに対応できたことになる。

  • 24日に開催された発表会ではSuicaチャージのデモも行われた

また、このタイミングにあわせて、ソフトバンクの決済代行サービス会社であるソフトバンク・ペイメント・サービスが、Google Pay API利用による決済が可能になったことを発表している。

Google Payは「初めてスマホのICカード機能を使う人」向け

Google Payが利用できるのは、FeliCaに対応したAndroidスマートフォンだ。Googleアカウントと関連付けたクレジットカードと各種のプリペイドサービスを結びつけ、その都度クレジットカード番号の入力などをすることなく、簡単にチャージなどの操作ができる。

すでに、スマホを使ってSuicaやWAONを使っているユーザーはきっと、それっておサイフケータイとどう違うの? と思うだろう。おサイフケータイで提供されているサービスは、プリペイド、ポストペイドにかかわらず、サービスごとに個別に登録の作業が必要だ。サービスを追加するたびに、クレジットカード情報の入力などが必要になる。だが、Google Payなら紐付けたいクレジットカードを一度登録しておけば、あとは、各サービスに任意のカードを指定するだけですむ。

ただし、できるのはサービスとクレジットカードの紐付けだけなので、サービス特有の機能については別アプリによる設定が必要だ。たとえば、Suicaではビューカードのユーザーがオートチャージを設定できるが、Google Payではこのあたりの設定はできない。結局のところ、Google Pay対応Suicaアプリが登場しなければ実現は不可能だ。

iPhoneでは、このあたりをうまく解決していて、Suicaだけが特別扱いで、Apple Payの併用する煩雑さをうまく回避している。Suicaを削除すればAppleがその残高を預かり、別の端末で同じApple IDで追加すれば、残高が戻ってくる。別途提供されているSuicaアプリを使えば、一定額を自動で入金するオートチャージの設定なども容易だ。

だから、すでにおサイフケータイでSuicaを使っているのであれば、Google Payに変更する必要はない。また、これからビューカードでSuicaを使おうというユーザーも、従来のおサイフケータイアプリを使った方がよさそうだ。

ただ、初めてスマホのICカード機能を使おうというユーザーにとってハードルを下げることには貢献するだろう。最初に一度クレジットカードの情報を登録すれば、サービスの追加がとても簡単になるからだ。レジの前に立って、nanacoにしか対応していないことがわかっても、その場でnanacoを追加するのに数十秒、金額分をチャージしてすぐに支払える。いちいち個別にアプリをインストールしなけばならなかったおサイフケータイに比べれば、格段にスピーディだ。

本当に必要なのはSuicaシステムの改革なのかも

しかし、キャリアから提供されている端末以外でFeliCaに対応している端末が現状でほとんどないという時点では無理がある。MNNOなどから販売されているSIMロックフリーのAndroid端末は、おサイフ非対応、つまり、FeliCaを搭載していないものがほとんどだ。だから、Google Payが対応したとしても、スマホを使って電車に乗ることはできないし、コンビニで支払いをすることもできないのだ。

こういう状況はいつまで続くのだろう。中国を筆頭に、世界的にスマホを使った決済は、QRコードの提示によるものが主流になろうとしている。日本でも、その方向に向かっているようにもみえる。

もちろんQRコードで日本の朝夕のラッシュ時に改札を通る大量の人々をさばくのはたぶん無理だ。だから、Suicaだけが特別扱いというのは仕方がない面もある。認証なしでデフォルトカードとして使えるiPhoneのエクスプレスカードなどといった発想は、うまい工夫で日本の市場に入り込んだものといえる。

それが日本特有の事情といえば事情だ。Google Payの目指すところは理解できるが、果たして日本の特異な事情が理解されているのかどうか。ガラパゴスとはつきあいきれないと言われそうだが、住んでいる身としては困る。本当に必要なのはSuicaのシステムの抜本的な改革かもしれない。

(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)