各社のスマートスピーカーが続々と発売されている。11月8日には日本のアマゾンもAIアシスタント「Amazon Alexa」とスマートスピーカー「Amazon Echo」を発表する予定だ。これで残りはアップルの「HomePod」と、米国ではすでにHarman Kardon Invokeとして発売済みとなるMicrosoft・Cortana(コルタナ)の日本語スマートスピーカーくらいだろうか。
これらのスマートボイススピーカー、略して"スマボ"といったところか、とにかく話題のAI対応ということで、擬人化されているのは各社ともに共通だが、その呼び出しのトリガーとなるキーワードは各社各様の考え方があるようでおもしろい。
- Google Home 「OK Google」または「ねぇGoogle」
- Cortana「コルタナさん」
- Siri「ヘイSiri」
- LINE Clova WAVE「クローバ」
- Amazon Alexa「Alexa」「Amazon」など(英語版)
- Xperia Hello! 「Hello Xperia」
などなどだ。
「ハロー」や「ヘイ」はちょっと照れくさい
大別すると、特別な擬人化をせずにサービスそのものの名称を使っているものと、人物っぽいニックネームに近い名称を用意しているケースに分かれる。さらに、その名称に、呼びかけワードとして、「ヘイ」や「ハロー」、「ねえ」、「OK」といった単語を組み合わせる。おもしろいのはコルタナで、英語版では「Hey, Cortana」だが、日本語版のWindowsでは「コルタナさん」で呼び出す。
いろんなケースを想定してくと、日常の会話の中であまり登場しない単語の組み合わせで、さらに、言いにくくないようなものを選ぶ必要がある。単語ひとつで呼び出せる場合は、人間同士の会話の中で話題にすると思わぬ反応をしてしまう場合もあるだろう。
だから「ヘイ」だの「ハロー」を組み合わせるわけだ。ただ、個人的には「ヘイ」や「ハロー」を声に出すのはなんとなく照れくさい。自室にいて、呼びかけの声を誰が聞くわけでもないのにちょっとした抵抗があるのだ。
その点、「コルタナさん」や「ねぇGoogle」はよく考えられていると思う。コルタナもGoogleも人間同士の会話の中では呼び捨てられるだろうから誤認識もしにくいからだ。特に「ねえ」や「さん」は秀逸で、日本人が日本人のユーザー体験をちゃんと考えた軌跡を感じる。少なくとも「ハロー」や「ヘイ」を日本人が使うよりははるかにわかりやすいが、その一方で、世界共通のユーザー体験感は損なわれる。
日本語で使ってみて思うのは名称+敬称の2ワードを使うか、どうしてもそれがいやなら呼びかけワードと組み合わせるのがいいんじゃないかと思う。敬称はコルタナの場合「さん」だが、「くん」「ちゃん」などを追加できてもいいんじゃないか。
呼びかけワードは「もしもし」「おい」「なあ」「ちょっと」などが考えられる。既定の単語から選ぶのもいいが、人間が自然に使えて、誤認識が起こりにくい2ワードの組み合わせなら、勝手にAIが学習してくれるくらいの賢さが欲しいものだ。
もっとも、柔軟に対応しすぎると、サービスのブランディングに影響してしまう可能性もあるからやっかいだが。
いつか、すべてのAIはつながるかもしれない
とにかく始まったばかりの日本語による"スマボ"体験。これからは各サービスがつながって、どのAIエンジンを使っていても結果は同じといった状況に収束していくだろう。すでにGoogle Homeは楽天レシピと連携していて、「楽天レシピにつないで」といえば、スピーカーが別人格になって今夜の料理をいっしょに考えたりできる。
また、すでに米国ではコルタナがAlexaとつながって呼び出せる。最終的にはすべてのAIがつながって相互に呼び出せるようになっても不思議じゃないし、呼び出して利用していても、Siriと話しているつもりでも、実際の相手はAlexaだったということも当たり前になっていくだろう。
そういう意味ではスマートスピーカーはサービスへのゲートウェイ、あるいは対話のためのシェルにすぎず、最終的にはリカちゃんやドラえもん的なシェルだけを実装し、AIエンジンを自前のクラウドにはもたないような製品も現れるかもしれない。インターネットへの常時接続固定回線を持たない世帯のために、オーナーのスマホのテザリングを自動的にオンにしてつなぎにいくような権限を持ったスマートスピーカーなどの発展系も考えられる。
さて、日本の各世帯の一等地を陣取るのは一体どこのどの製品になるだろうか。
(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)