アップルがiPhone 8、8 Plus、そして iPhone Xを発表、今週末(9月22日~)には各キャリアとアップルから出荷が開始される。ただし、iPhone Xは、11月3日までお預けだ。
iPhone X(テン)は「10」の予告?
Xはローマ数字の10のことだ。つまり、いつかは登場するであろう iPhone 10を先取りする製品として予告編のような位置づけが意図されているという予測ができる。
iPhone 10の登場までに、どのくらいの歳月がかかり、その前に何度iPhoneが刷新されるのかはわからない。来年か、それとも再来年か。もしかしたらiPhone 11が真打ちとなって、そこでiPhone Xはお役御免かもしれない。毎年秋に刷新があるとして来年はiPhone 9、その次の年はiPhone 10という段取りだろうか。まさに、陸上競技のリレーで走者がバトンをわたすために併走しているようなイメージだ。
かつて、サムスンはGalaxy Note 6を飛ばしてGalaxy Note 7を出そうとした。マイクロソフトはWindows 9をスキップしてWindows 10を最後のWindowsとした。初代からの連番をスキップして世代刷新をアピールするのはよくあるマーケティング手法で、アップルがその手を使うかどうかはわからないが、それをやっても不思議じゃない。世界でトップのスマホベンダーを見ると、サムスンのGalaxyの世代は今「8」、ファーウェイのMateやPシリーズが「10」だ。そしてアップルが今回の「8」。つまり、数字だけみると、ファーウェイが抜きん出ていて、GalaxyとiPhoneは「8」だ。そのあたりのせめぎあいがおもしろい。
iPhone 8/8 PlusはiPhoneの完成形
いろんな意味で、iPhone 8/8 Plusは、発売後10周年を迎えたiPhoneの完成形だと考えることができる。だからiPhoneは、近い将来、新世代に刷新されることを予告しておかなければならない。そのためのiPhone Xであると考えるのが妥当だ。このとき、「X」は「10」ではなく「未知数」を意味すると考えることもできる。
iPhone 8/8 PlusとiPhone Xを比べてみよう。iPhone Xには、
- 有機EL採用
- スクリーンアスペクト比が縦長の19.5:9でほぼベゼルレス
- その結果としてのホームボタンレス
- 指紋認証としてのTouch IDの非搭載
- 顔認証としてのFace IDの搭載
- Face IDのための赤外線フロントカメラ搭載とそのカメラのアプリからの活用
- 重量の大幅減
といった特徴がある。
スクリーンは4.7型のiPhoneより縦方向に145ピクセル分縦長だ。ここにはインカメラのための切り欠き部分の両脇も含まれる。解像度は2,436×1,125(812×375@3x)相当、つまり、19.5対9となり、16:9のiPhone 8よりも縦長、Galaxy S8/S8+の18.5:9よりさらに縦に長い。
そして、地味かもしれないが、重量減はいろんな意味ですごい。ホームボタンがないことはもちろん、省電力に有利でスリム化が可能な有機ELの採用が影響しているのだろう。5.8型iPhone Xの重量は174gで、これはサムスン最新フラッグシップ、6.2型Galaxy S8+の173gより1g重いだけだ。5.5型のiPhone 8 Plusの202gが滑稽に思えるくらいだ。もっともこれはバッテリ容量との兼ね合いもあり、文字通りフタをあけてみないとわからない。ただ、仕様を見る限り、バッテリに関してはiPhone 8 Plusとほぼ同等と考えてよさそうだ。いずれにしてもハードウェア的にはGalaxyに追いついた感がある。その先は、OSベンダーでもあるアップルの腕の見せ所だ。
未知数をとるか、完成形をとるか、それが問題だ
iPhoneを毎年買い換えてきたような熱心なファンにとって、iPhone 8/8 Plusは実際にはさまざまな進化を遂げているにもかかわらず特に魅力を感じないし、一方で進化が止まったように見えても、iPhone Xは1~7の理由だけでも乗り換える理由になる。そして、いっしょにやってくるiOS11が、その高揚感を煽るにちがいない。
未知数としてのXをとるか、コモディティとしての完成形を選ぶか。この秋のスマホシーンはかなりおもしろくなりそうだ。明日できることは明日やればいいのか、明日できることは今日のうちにか。どちらを選べば人生が楽しくなるのだろう。
(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)