不振があちこちで叫ばれている薄型テレビ市場だが、メーカーは"次の一手"をいろいろと考えている。"次の一手"の1つのはずだった3Dについては、関係者の方には申し訳ないが、もうそろそろ"空振り"だったことを認めても良い時期だろう。3Dには3Dなりの面白さがあり、一定数の人が3D映像を楽しまれるとは思うが、多くの家庭に普及させるというのはさすがに難しい状況になっている。そこで今、各メーカーが狙っているのが"4Kテレビ"だ。

4Kテレビは何がスゴイの?

4Kテレビとは、フルハイビジョン(1,920×1,080ドット)の4倍もの解像度を備える高精細テレビ。すでに東芝は「REGZA 55X3」という対応製品を市場に投入している。価格は60万~70万円代(2012年5月2日時点)と高価だが、価格はいずれ下がり、世の中は次第に"4K時代"に入っていくのだろう。どの程度の時間が必要なのかはわからないが、テレビの買い換えスパンが10年と考えれば、アナログ停波でテレビを購入した人が買い換えを始める2021年ぐらいから4Kテレビは本格普及をしていくのではないだろうか。

東芝は他社に先駆けて4Kテレビ「REGZA 55X3」を2011年に発売している。4Kの解像度を活かせる映像ソースはほぼ存在しない現状で、市場に投入した東芝のチャレンジ精神は評価されるべきだ。画面の美しさはウットリするほどなので、店頭で展示されていたらぜひ一度ご覧頂きたい

この4Kテレビについては、さまざまな用語が飛び交っているので、ここで整理をしておこう。実は4Kテレビといっても、実際の解像度にはいくつか種類があるのだ。ひと口に「4Kテレビ」と言っても、「横のドット数が4,000(4K)程度のもの」と大雑把な意味合いで用いられることもあり、縦のドット数が2,000程度である点も加味されて「4K2K」などと呼ばれることもある。現在のフルHDが1,920×1,080ドットだから、縦横とも2倍の解像度になり、全体では4倍の解像度になるというわけだ。

東芝のREGZA 55X3は、厳密には「クアッドフルHD(QFHD)」と呼ばれるもので、解像度は実のところ3,840×2,160ドットだ。縦横とも、ちょうどフルHDの2倍で、4倍のドット数になる。

一方で、デジタルシネマの標準規格で定められているものとして「4K」という規格があり、こちらは4,096×2,160ドットの解像度になる。

このあたりの知識を頭に入れておくと、4Kテレビの買いどきがみえてくる。つまり、「今使っているテレビが壊れたら」「QFHD規格ではなく、デジタルシネマ規格の4Kテレビを」というところが現実的な選び方だと筆者は思っている。いずれにしても、4Kテレビの精緻な解像度を活かし切る映像ソースはまだほとんどないのだから、買い換えるべき時期はまだまだ先の話だ。


ハイビジョンで十分だから4Kテレビは不要?

さて、この4Kテレビ。すでに市場に流通してはいるのに、反応はいまひとつだ。超高機能に興味津々のコアユーザー向け製品である以上、現行機種の動きが悪いのは、メーカーにとっては織り込み済みだとしても、ネットでの批判的な意見が目立つ。いちばん多いのは「価格が高すぎる」「4Kネイティブの映像ソースがない」などだが、これは時間を経ることで解決される(であろう)こと。「今、買うべきではない」という点で理由にはなるが、「将来にわたっても買うべきではない」ことへの理由にはならない。

もうひとつ多いのが、「フルハイビジョンで十分キレイ。これ以上、精細な画面などはあっても意味がない」という意見だ。これはなかなかツボを押さえた批判だと思う。しかし現物を見てしまうと、やはり「美しい」と感じてしまうのも事実。

実はこの手の意見は常につきまとうものなのだ。SD画質(640×480ドット)のアナログ放送からハイビジョン放送になるときも「視力0.7以下の人は、アナログ放送とハイビジョン放送の見分けがつかない。だからアナログで十分」と主張していた人たちが多く存在した。DVDからBDになるときも、やはり多くの人たちが「DVDの画質で十分」と主張していた。

だが結局は、どうせならハイビジョンやBDの方が、見ていて気持ちが良いのだ。4Kテレビに関しても、今の段階では「ハイビジョンで十分だから、4Kは不要」という人が多いが、本格的な普及期に入れば「やっぱり4Kはキレイ」という意見が大勢を占めるのではないかと思う。

さらに、開発ベースでは、すでにスーパーハイビジョン(7,680×4,320ドット)や8K(8,192×4,320ドット)などというものまで登場してきている。いったいテレビの画面はどこまで高精細になっていくのだろうか。人体の眼の分別能力には限界があるのだから、テレビ画面の解像度だって、ある一定以上に上げても分別できなくなるはずだ。次回は、そのテレビ画面の解像度の上限を探ってみたい。

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