地域によっても違いはあるとは思うが、このところだいぶ冬らしい気候になってきた。冬とくれば、日本人が恋しくなるのは鍋、熱燗、風呂の3つだ。今年は、アナログテレビ放送が停波し、かつてないほどデジタルテレビが売れた(今はその反動がきているが)。テレビというのは、リビングにだけ置くものではない。カーナビでもテレビ機能が付いているものが多いし、この10年は浴室テレビの普及が進んできた。筆者の手元には正確な統計がないので確かなことは分からないが、複数の関係者に聞くと、今年は一般のテレビがかつてないほど売れたのに対して、浴室テレビはあまり大きな売行きを示さなかったようだ。ホテルなどの浴室テレビは当然地デジ化が行われただろうが、個人宅の浴室テレビは地デジ化されず、アナログ停波とともに無用の長物と化している家庭も多いという。なぜ、浴室テレビは盛り上がりに欠けたのだろうか。

もっとも大きな理由は、設置コストだろう。浴室は防水の観点から、密閉しているユニット、気密性の高い構造になっていることが多い。そうでなければ、家の床下などに湿気が侵入して、家の寿命を著しく縮めてしまうからだ。こういうところに、電気系統を配線するのは簡単な工事ではない。水と電気は犬猿の仲だからだ。防水処理をきちんと行い、なおかつメンテナンスのことを考えて、アクセスしやすい構造にしておくのは難しい。こういうところから、工事費はそれなりの額となり、なおかつすでにある浴室に後から浴室テレビを設置する場合はさらに工事費が掛かることになる。

もうひとつの理由は、それだけのお金をかけても、観られるのは放送波が基本だということだ。今は、もうテレビ放送の時間に合わせて番組を観る時代ではなくなっている。こちらの生活時間に合わせて、テレビ番組を観る時代になっているのだ。もちろん、浴室テレビとレコーダーを連動させる工事も可能だが、こうなると本格的な壁内リフォームとなってしまい、ますます工事費が掛かる。結局のところ浴室テレビは、新築するときにオプションとして選択するものになってしまっているのだ。

「IPコード」にはなじみがない人も多いと思うが、防水機器を買う際はある程度の知識を仕入れておこう。簡単に言えば、屋外に設置するものであれば3以上、雨傘の下やキッチン、プールサイドなどで使うのであれば4以上、浴室で使うなら5以上のものを買いたい。カタログなどには「IPX5相当」などと書かれている。【上図出典:ウェブサイト「CompoClub」】

2007、2008年頃はワンセグ放送が普及し始め、ポータブル型の防水ワンセグテレビが浴室テレビとして盛り上がりを示した。しかし、このブームもすぐに終わってしまった。なぜなら、浴室は密閉空間なので、テレビ放送の電波を受信しづらいのだ。多くの防水ワンセグテレビの但し書きでは数mの拡張アンテナをつけて、「このアンテナを窓から外に垂らせば受信できます」という記載があったが、マンションなどの浴室にはそもそも窓がない。また、浴室に窓がある戸建住宅に住む人でも、いちいち窓からアンテナを外に出すのは面倒に感じる人が多かっただろう。

防水効果についても、メーカーや販売店がきちんと伝えなかったり、消費者の方も勘違いをしていたりして、故障を起こすケースが多かったという。電気器具の保護等級は「IPコード」で表される。このIPコードは防水だけでなく、外来固形物(固形物、ワイヤー、塵)などの保護等級も同時に示す。IPの後に固形物に対する保護等級、続けて防水に対する保護等級を表す決まりだ。ただし、防水だけの場合は、「IPX5」というように固形物に対する保護等級を「X」で表す。また、数字が大きければ大きいほど、耐水性が高い。

よくある間違いは、IPX4で「お風呂でも使える」と勘違いしてしまうことだ。IPX4は「あらゆる方向からの飛沫」に対する保護だ。具体的にいえば、雨の中での使用やキッチン、プールサイドなど、水滴が飛んでくる可能性の高い場所での使用を想定している。浴室の中でも、シャワーの水やカランの水、身体にかけるお湯が直接当たらないような場所では使えるが、一般的には難しいだろう。浴室で使うには、「IPX5」(あらゆる方向からの直接噴流に対する保護)が行われている機器を使う必要がある。

さて、「ワンセグテレビはダメ、なおかつ防水機能がきちんとしていないとダメ」ということであれば、手軽に浴室テレビを実現する方法はないのだろうか。それがあるのだ。テレビではないが、防水タブレットを使って浴室テレビを実現できる。次回、具体的に「浴室テレビとしてのタブレットの選び方」を紹介していこう。

このコラムでは、地デジにまつわるみなさまの疑問を解決していきます。深刻な疑問からくだらない疑問まで、ぜひお寄せください。(なお、いただいた疑問に個々にお答えすることはできませんので、ご了承ください)。