連載も30回近くになると、書くことがなくなる。

Twitterお題募集企画のいきさつと現状

というか、最初から書くことは何ひとつなかったため、テーマだけはそっちで決めてくれ、と担当にお題を出させ、それにそったコラムを書いて来たわけだが、ついに担当もネタが尽きたのか、困った時のTwitter頼みで読者からお題を募集しよう、ということになった。

しかし、マイナビニュースを見ているという時点で、読者は全員ヒルズ族であろう。そんな多忙な人たちに貴重な時間を割かせてお題を出させると言うなら、それ相応の見返りが必要であろうという話になり、採用者には私の自画像を大胆にあしらったステッカーをプレゼントすることとなった。

当コラムのお題募集、採用させていただいた方へは、オシャレなモノに貼ると御利益満点のカレー沢先生クリアステッカーを差し上げます。締め切りまであとわずか、奮ってご応募ください! 詳細は応募要項ページにて。(担当)

その提案を担当から聞いた時、控えめに言って「正気か」と思った。控えめでなく言うとここでは使えない表現のオンパレードになるので割愛するが、とにかく「何言ってんだコイツ」と思った。そこで正直に、「それは誰が欲しがるんでしょうか?」と尋ねた。私の母親ですら、このステッカーを欲しがるかは疑問である。その問いに対して、担当は力強く「大丈夫です」と言い切った。

具体的にどう大丈夫なのか一切説明はなかったが、こちらとしても「プレゼント用にオリジナルキャラを描きおろしますよ」などと提案するほどの誠実さもなく、「そうか、大丈夫か」と納得して、お題募集企画はスタートした。ちなみに、そのステッカーを担当が100枚も作ってしまったのは、また別の話である。

募集開始後、多くのヒルズ族から応募があり、とりあえず企画倒れは免れた。もし応募が皆無だったら、余ったステッカーを自宅の冷蔵庫一面に貼らねばならないところだった。そんなまがまがしい物に食い物を入れる気にはなれないし、むしろ何か邪悪な存在が封印されていると思われてしまうだろう。

さて、さっそくだが今回から、応募していただいたお題を使わせてもらう。記念すべき(募集したお題でのコラム)第1回のテーマは「犬」だ。

犬VS猫

犬と言えばドッグだ。

などというクソセンテンスで尺を稼がなければならないほど、書くことがない。じゃあ何で選んだかというと、担当が選んだ「書いてほしいお題リスト」のトップがこれだったからである。

私は猫好きである(第16回のコラム参照)。しかし、犬が嫌いだというわけではない。犬と猫は人間の二大ペットであるから、「犬VS猫」という題目がよく論じられるが、別に犬と猫は戦っていない。犬好きの人間と猫好きの人間がただ勝手に戦っているだけであり、その戦いすら不毛なものである。

「犬が猫よりペットとして優れている点」としてよく挙げられるのは、犬は猫より賢く、飼い主に従順であり、一緒に遊んでくれる、などである。しかし、犬が従順とは言っても飼い主が「どう見ても犬以下」だったら従わないだろうし、遊んでくれると言っても「モンハン」を一緒にやってくれるというわけではないだろう。

話はそれるが、昨今のゲームは「仲間とプレイ」するのが前提になっているものが多すぎる。もちろん、基本的に一人でもプレイはできるが、仲間がいないと得られないアイテムなどが平気で設けてあったりするのだ。

ゲームには対象年齢の区分表示をする義務があるようだが、もういっそのこと友達区分も表示してほしい。友達が一人もいなくてもあますことなくプレイできるものは「A」、必要な友達の数が増えるごとにB、C、Dとレーティングが上がっていき、そもそも協力プレイが前提となっているゲームは「Z」だ。

私にとって友達区分「A」以外は全部「Z」相当だが、あらかじめ表示してくれれば、いらぬ憤怒を覚えずに済む。もし犬がゲームの協力プレイをしてくれるというなら、犬と猫どちらがペットに優れているかという論争に関して、猫派の私も犬に軍配を上げざるを得ないだろう。

それ以前に、犬と猫どちらがペットに向いているか、などというのは、飼う人間の性格によるところが大きいだろう。飼う手間から言えば、犬より猫の方が楽な印象だ。私のように無精な人間は、粉雪舞い散る寒空の下、犬を散歩させている人を見るだけで「これが…!犬を飼うという責任…!」とその重圧に押しつぶされそうになる。じゃあ猫は完全放置で良いかというと、病気になれば病院に連れていかなければいけないし、そもそも病気にならないように注意を払わなければいけない。

結局、犬と猫どちらがペットとして良い動物かを考える前に、自分がペットを飼うに値する人間かどうかを考えなければならず、私はその基準をクリアできていない。

よって犬はもちろん、好きな猫すら飼っていないのだが、先日このコラムとは別に、「Splatoon(スプラトゥーン)」関係のコラムを書かないか、という話があった。このゲームに関して詳しくは知らないが、たまたま見聞きした範囲の情報で判断するなら、おそらく友達区分「Z」のゲームだろう。 そのため詳しい話を聞くこともなく「無理だ」と断ったが、相当ヒットしているゲームのようだし、今思えば貴重なビジネスチャンスを逃してしまった。

やはり、犬がゲームをプレイできるようになったら飼うことを検討したいと思う。もはや「一緒にゲームをする友人」を作るより、「ゲームのできる犬」の登場を待った方が早い気がするのだ。

カレー沢薫
漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「負ける技術」(2014年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。連載作品「やわらかい。課長起田総司」単行本は1~2巻まで発売中、9月18日よりWeb連載漫画「ヤリへん」を公開開始。

「兼業まんがクリエイター・カレー沢薫の日常と退廃」、次回は9月29日(火)昼掲載予定です。