Samsungが提供するウォレットサービス「Samsung Wallet」がいよいよ日本で登場します。新端末「Galaxy S25」シリーズのリリースに合わせて国内発表され、2月25日からサービスを開始します。
新たなウォレットサービスであるSamsung Walletについて、現時点で分かっていることをまとめてみました。
Samsungのウォレットサービスが日本で登場
スマートフォンにおける決済サービスとしてよく使われるものとしては、iPhoneの「Apple Pay」とAndroidの「Google Pay」があります。クレジットカードやデビットカードなどをスマートフォンに登録して、タッチ決済を行うためのサービスです。
基本的にはNFCを使ったタッチ決済で利用しますが、日本だとFeliCaにも対応して、Suicaなどの交通系IC、QUICPay/iD、環境によっては楽天Edy/nanaco/WAONといった電子マネーなどにも対応します。
登録したカード情報はオンライン決済でも利用でき、一度登録すれば毎回入力しなくても簡単かつ安全にオンラインでカード利用ができるというメリットもあります。機能としてはそれぞれAppleウォレット/Googleウォレットの1機能で、いわゆるウォレットサービスとして、複数のサービスをまとめて保管できます。決済以外にも身分証明書、自動車やホテルのキー、交通機関チケットなどが登録できます。
このウォレットサービスとしてSamsungが提供しているのが、Samsung Walletです。
サービスとしては2015年に「Samsung Pay」という名称でスタート。その後、パスワードなどの認証情報を保管する「Samsung Pass」が2016年に、暗号資産用の「Blockchain Wallet」が2019年に提供されるようになり、これらのサービスを統合する形で「Samsung Wallet」となったのが2022年です。
利用可能なエリアは、韓国は当然として、アジア/中東/欧州/北米などで、30カ国において展開され、1億人のユーザーがいるそうです。
Samsung Payは、当初独自技術としてMST技術を搭載していました。これはクレジットカードなどでスワイプして決済する磁気ストライプを非接触で実現する技術で、LoopPayという企業が開発し、それをSamsungが買収することで実現しました。
筆者が2023年に韓国に訪問したときは、磁気ストライプがまだ使われているようで、このMSTを使って支払っている人を見かけました。以前は米国も磁気ストライプが一般的でしたが、欧州などを中心に非接触決済が一般的になり、米国でもそれが主流になってきたことで、磁気ストライプの利用頻度は減少。さらにグローバルでもライアビリティシフトによって、「利用者がICチップ搭載カードで支払おうとしたのに、磁気ストライプしか決済手段を用意していなかった店舗は、その結果として不正被害に遭っても補償されない」ということになりました。
そういった経緯があって、店舗側も決済端末の非接触決済対応が進められ、MSTが使われなくなってきました。このため、まだ韓国の端末では使えるものの、日本のSamsung Walletでは、この機能は提供されません。
それ以外のウォレットの機能としては、AppleウォレットやGoogleウォレットと大きな差はありません。特徴としては、「Galaxy」端末専用である点と、決済をする際のUIが独特という点が上げられます。
UIについては、ロック画面の状態でも画面下から上に向けてスワイプをすると、メイン設定したカードがポップアップして素早く利用できるという使いやすさがメリットとされています。カードを切り替える場合は左右にフリックします。
カードが回転してポップアップする様子
Googleウォレットの場合、通常は特にショートカット操作が用意されておらず、普通にウォレットアプリを起動します。Appleウォレットの場合は電源ボタン2回押しでAppleウォレットが立ち上がります。それに対してSamsung Walletはスワイプアップなので、使いやすい場合もあるでしょう。ただ、誤操作もしやすい動作なので、人によっては使いにくいと感じるかもしれません。
肝心の対応サービスは、クレジットカードとしてはまずはオリエントコーポレーション(オリコ)が対応します。実はオリコカードはGoogleウォレットにはまだ対応していないため、いち早く対応したことになります。3月以降、三井住友カード/三菱UFJデビット/JCBカードがそれぞれ順次対応します。JCBはいわゆるプロパーカードです。いずれもクレジットカードのタッチ決済での対応です。
さらにポイントとしてVポイントとPontaが対応し、Samsung Walletの画面上でポイント残高も確認できるようになっています。さらに、チケットとしてはエアトリが対応することになっています。
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Samsung Walletの設定画面。カードだけでなく、IDとパスワードなどの認証情報やパスキーを管理するSamsung Passも統合されています。今後、搭乗券やデジタルキー、クーポンも対応すれば便利になりそうです
さらにウォレットサービスとしては初めてQRコード決済としてPayPayに対応した点が大きな特徴です。
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驚きのPayPay対応。支払い時には「バーコードを表示する」または「スキャンして支払う」から決済を行います
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ただし、実際はPayPayアプリが起動するので、PayPayのインストール、利用設定は必要です
PayPayの場合は、Samsung Wallet内で完結するのではなく、実際にはPayPayアプリを起動する形になりますが、アプリ側と連携することで、Samsung Walletから「バーコードを表示する」「スキャンして支払う」「取引履歴」「クーポン」「残高を送る」といった機能を選ぶと、該当する機能を表示した状態でPayPayアプリが起動します。
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さらに個別の機能へもアクセスできます。PayPayアプリの該当機能の画面を直接呼び出せるので、Samsung Walletでポイントカードを掲示してPayPayを起動する、という一連の動作はしやすそうです
単純にPayPayアプリを起動するだけではないというのがポイントです。現時点で対応するのはPayPayだけですが、他のQRコード決済事業者との連携も今後検討していくそうで、その場合は、PayPayと同様にアプリ側の連携があると良さそうです。
当然、対応クレジットカードの拡大も重要です。いまだにGoogleウォレットでも対応していないクレジットカードもありますし、そこはSamsungの頑張りに期待したいところです。
現時点ではクレジットカードのタッチ決済のみの対応という点も特徴ではあります。つまりiDやQUICPayには非対応のため、クレジットカードのタッチ決済だけしか使えないわけです。これはデメリットでもありますが、メリットにもなりえます。
ただ、Suicaなどの交通系ICにも非対応という点は課題でしょう。とはいえ、国内販売しているGalaxyはおサイフケータイに対応しており、それを読み込むことでSamsung Walletでもおサイフケータイ対応は可能、というのが同社のコメント。今後、対応を検討していく考えです。
さらに、ウォレットサービスとして重要なのが、身分証明書(ID)の対応です。米国の一部の州などでは運転免許証の保管に対応しています。日本では現在、Android端末向けにマイナンバーカードのスマホ用電子証明書サービスが提供され、Galaxy端末も基本的には対応しています。
この2025年春の後半には、iPhoneにマイナンバーカード機能が搭載される予定で、これはAppleウォレットに保管される形になる見込みです。同様に、Googleウォレットにも今後同様の機能が盛り込まれる予定です。
そうなるとSamsung Walletではどうなるのか。Samsungでは対応していきたいと考えており、こちらも検討を進めていく考えだそうです。このあたりの動向は、今後取材を進めていきたいと思います。
そのほか、現時点ではGalaxy WatchがGoogleウォレットに対応していますが、Samsung Walletの対応は明らかにされていません。このあたりも期待したいところです。なお、「Galaxy S25」シリーズだけでなく既存のGalaxy端末でも対応していくはずですが、原稿執筆時点で対応機種は不明です。
2015年から10年越しの日本登場となったSamsung Wallet。2社の牙城にどこまで食い込めるか、Samsungがどこまで注力するのか、期待したいところです。