日本の種子島宇宙センター、米国のケネディ宇宙センター、ロシアのバイコヌール宇宙基地などと同じように、欧州の宇宙への玄関口がギアナ宇宙センター(CSG)である。アリアン5ロケットの打ち上げを控えた9月25日の午前中、射場の施設を見学することができたので、その模様をここでレポートしよう。
3種類のロケットの打ち上げに対応
同宇宙センターは現在、大型のアリアン5、中型のソユーズ、小型のヴェガという、3種類のロケットの打ち上げで利用されている。今回の「VA243」がアリアン5の100回目の打ち上げであることは第1回でも述べたが、じつはアリアンシリーズ、ソユーズ、ヴェガを合計した数で300回目の打ち上げでもある。何かと記念づくしな打ち上げなのだ。
仏領ギアナに射場を建設したのは、以前述べたように赤道直下で静止衛星の打ち上げに有利だからだが、そのほか、北東側が海に開けているというのも大きい。これだと、静止軌道なら東向きに、極軌道なら北向きに、衛星の打ち上げを安全に行うことができる。またタイフーンの進路ではなく、天候が安定していることも考慮されたという。
2020年の初飛行を予定している次世代のアリアン6
この日、まず最初に見ることができたのはミッション・コントロール・センター(ジュピター)。ここは、打ち上げ前の最終フェーズから、打ち上げ後の衛星分離までの管制を担当する施設だ。打ち上げ中継にも良く出てくるので、お馴染みだろう。
そして次に向かったのが、建設中のアリアン6射点だ。アリアン6は、2020年の初飛行を予定している欧州の次世代ロケット。このアリアン6では、射場でのロケットの組み立て方法が大きく変更になる。アリアン5は、組立棟の中で完成させてから射点まで線路で運搬する方式を採用していたが、アリアン6は射点上で組み立てるという。
アリアン6では、アリアン5とは逆に、組立棟の方が移動する。射点上のサービスポジションで機体を組み立て、打ち上げ前にスタンバイポジションまで待避すると、ロケットだけが射点に残るというスタイルだ。現在、まだ工事の真っ最中だったが、組立棟は骨組みの状態で、煙道のコンクリートはすでに形になっていた。
水星探査機「BepiColombo」向け打上げ機体と対面
アリアン5は、まずロケット組立棟(BIL)の中で各段が結合されてから、最終組立棟(BAF)に送られて衛星とフェアリングを搭載する。今回はBILの方を見ることができたのだが、内部には10月19日に水星探査機「BepiColombo」を打ち上げる予定の「VA245」の機体があり、作業が進められていた(間の番号の「VA244」はすでに打ち上げられている)。
アリアン5の射点を見学
最後は、アリアン打ち上げエリアに移動。ここは射点に近すぎるため、打ち上げ時に滞在することはできないのだが、ロケットを1km程度の距離から見ることができた。なお、この場所から左を見ると、ヴェガの射点を見ることもできる。アリアン5とヴェガの射点はこのように近いが、ソユーズだけはもっと奥に射点がある。