Android P、最後の特徴は「Digital Wellbeing」です。「Wellbeing」は、「幸福」や「幸福な状態、健康な状態」を意味します。「Digital Wellbeing」とは、「幸福で健康的なデジタル生活」とでもいうのでしょうか。ただし、Android Pに実装される機能としては「スマホ依存対策」です。簡単にいえば、スマートフォンの使いすぎを防ぐ仕組みです。
すでにスマートフォンが登場して20年近くの年月が経過し、現在では、携帯電話といえば、いわゆる「ガラケー」よりもスマートフォンのほうが一般的になってきました。ガラケーのときにも、国内では、iモードやメール、ゲームなどに夢中になる人が多く、依存しすぎではないかとの疑念もありましたが、スマートフォンが世界中に普及したことで、メールやWeb、SNSやゲームなどに夢中になるユーザーが多く、各国で社会的な問題として認識されはじめました。
たしかに、電車に乗ると、周りの人がみんなスマホを見てるといった状況で、SNSに驚くような写真を投稿したいがために、問題行動を起こす人も出ています。何かが流行ると、すぐに「××依存症」だとか「××脳」などといって危険性を訴える人が出てくるので、グーグルも対策しているという「言い訳」したいところです。とはいえ、どれだけ効果があるのかは疑問ですが。
このコンセプトに属する機能としては、「Dashboard」(写真01/02)、「App Timer」(写真03/04/05)、「Wind down」(写真06)があります。また、マナーモード(英語ではDo Not Disturb)が改良されています。
「Dashboard」は、どのアプリをどれだけ使ったのかという統計を表示するものです。全体の比率や個々のアプリごとの利用時間や動画の視聴時間などの統計情報を出して、自分がどのようにスマートフォンを使っているのかを把握するためのものです。
App Timerは、アプリごとに利用時間を指定するもの。アプリの利用中に予め設定した時間が近づくと通知が表示され、時間経過後は、アイコンがグレーアウトして起動することができなくなります。設定はDashboardから行うようです。
Wind downは、スマートフォンをマナーモードとして画面をグレーアウトして、スマートフォンを使えない状態にします。デモでは、Googleアシスタントから開始時間を指定して設定していました。「Wind Down」には、「緊張が緩む、くつろぐ」といった意味があります。
また、こうした機能に対応して、マナーモードも改良が加えられました。Android Ver.8.x(Android O)では、マナーモードは、「優先する通知のみを許可」と「視覚的な通知のブロック」の2つの設定と、自動ルール(予定に対するルールと時間のルール)を組みあわせてマナーモードを設定していました(写真07)。
Android Pでは、
- 音とバイブレーションのミュート
- ブロックの対象
- 例外
- 期間
- ルールによる自動オン
といった設定が可能になります(写真08/09/10/11)。より細かく設定が可能になっています。また、Android8.x同様に、スターを付けた連絡先からの着信などを優先する機能があります。マナーモードは、指定期間の間有効にする方法(写真12)のほか、Android 8.xと同じく自動ルールでオンオフが可能です(写真13/14)。
そのほか、液晶面を下にして置くと通知を止める(Staush)といった機能もあるようです。
Android Pのコンセプトの1つである「Digital wellbeing」は、アプリの利用時間を管理し、通知を抑制するなどしてスマートフォンへ注意が向かないようにするものです。ただ、SNSなどが気になる人は、通知がなくても何回もアップデートがないか調べてしまうでしょうし、SNSアプリの利用時間を決めて、一定時間使えないようにしたとしても、Webブラウザなどで見てしまうかもしれません。おそらく機能の解除なども、ユーザーに意志があれば、できてしまうと思われます。そういう意味では、まだ、自分で抑制ができる範囲のユーザーを助ける程度のものでしかありません。
その他の拡張
その他の拡張機能としては、Wi-Fiによる屋内位置測定やHEVC/HEIFへの対応などがあります。
Wi-Fi位置測定は、IEEE 802.11mcに対応したアクセスポイントと無線LANデバイスを組みあわせて屋内などで1~2メートル精度での位置測定を行います。これは、アンドロイドとアクセスポイントの間でパケットが往復する時間(RTT。Round Trip Time)を測定することで、3つ以上のアクセスポイントからの距離を測定し、位置を推定するものです。原理としては、GPSなどと同じく、位置が分かっているアクセスポイントからの距離を求めれば、アクセスポイントの位置を中心とした円を描くことができ、複数の円の交わるところが自分の位置になります。
ただし、そのためには、アンドロイドに802.11mcに対応した無線LANコントローラーが搭載されていること、アクセスポイントも802.11mcに対応していて、設置位置が正しく設定されていることが条件となります。なので、過去に発売されたアンドロイドスマートフォンやアクセスポイントでは利用できない可能性があります。施設側で802.11mc対応アクセスポイントを導入し、正しく設定してはじめて利用可能になるため、ユーザーが実際に利用可能になるまでには、かなり時間が必要です。早ければ年内ぐらいには、対応した施設が登場するでしょうが、アンドロイドのアップデートや普及を考えると、すぐに対応しても、ごく一部のユーザーしかメリットを感じられないので、施設側に急いで導入する理由がありません。しかも、他のプラットフォームの対応は、まだのようなので、普及には2~3年かかると思われます。
HEIFは、HEVC圧縮アルゴリズムを使う、メディアデータ形式です。Andriod Pでは、このHEIFに対応し、圧縮率の高い画像などを扱うことができるようになる予定です。
HEIFとはHigh Efficiency Image File Formatの略で、HEVC形式データの標準的なファイル格納形式です。HEVC(High Efficiency Video Coding)は、H.265(ISO/IEC 23008-2 HEVC)という画像圧縮規格で、高い圧縮率が特徴です。すでに、iOSやWindows10 Ver.1803(RS4)が対応しており、今後の普及が期待されています。従来のH.264(AVC)の後継として作られました。
HEIFは、単に圧縮率が高いだけでなく、たとえば、連写画像や露出を変えて撮った複数の画像などを1つのファイルに格納できる、既存のEXIF情報などを含めるできる、などが可能なファイル形式です。
H.265は、2013年に策定され、すでに一部の動画サービスなどで採用されています。これに対してHEIFは、2015年に制定され、昨年iOSが対応し、Windows10 Ver.1803(今年4月公開のアップデート。RS4)で利用可能になりました。
前述のようにHEIFは、静止画のファイル形式としても想定されており、JPEGに代わる高圧縮画像フォーマットとしても期待されています。
試してみたところ、5月公開のベータ版では、静止画、動画のフォーマットには基本的には対応しているようです。