僚誌AndroWireからの移籍で、今回からマイナビニュースを本拠地に連載することになりました(連載バックナンバーはこちら)。Androidに関する様々な旬の話題を、興味の赴くままに紹介しています。以後、お付き合いいただけると幸いです。

さて、今回の話題です。Android Wearのスマートウォッチに関しては、2014年の発売時にLGのG Watchを入手し、評価してきました。しかし、昨年の夏頃を最後に腕につけるのをやめてしまいました。というのは、便利ではあるものの、常に腕につけておくほどの価値がなかったからです。筆者は、もともと、自宅では、腕時計をしないで過ごしているため、常に付けておくのはちょっと負担だったのと、G Watchは、無線LANがないためにスマートフォンも一緒に持っていないと、利用することができなかったからです。

Bluetooth LEの通信範囲は見通し範囲で10メートル程度、このために、マンションなどのコンクリートや鉄筋のある住宅では、距離的には10メートル以下でも間に壁や柱があって、通信できないところが多く、スマートフォンは置いたまま、Android Wearのスマートウォッチだけ身につけておくという使い方ができなかったのです。スマートフォンも持つならば何も腕時計を見る必要はなくて、スマートフォンの画面を直接みればいいだけのことだからです。

写真01: 購入したZenWatch2は、本体がガンメタル色で茶色の革バンドが付いたもの。右側面にリューズのようなボタンがある

しかし、先月、Android Wear 1.4が発表され、筆者が記事で最後に評価した1.1に比べるとかなり機能が追加されたようです。そこで、スピーカーや無線LAN対応しているZen Watch2(WI501Q。写真01)を入手して再度評価してみることにしました。購入したのは色々と事情があって、米国のBestBuyですが、ハードウェアは国内で販売しているものと共通のため、ちゃんと技適マークがあります(写真02)。価格は、149.99ドル(1ドル113円換算で1万6948円)。しかも、今回は、オレゴン州での購入だったため、消費税がかかっていません。

写真02: 安心してください、ついてますよ。というわけでお約束の技適マーク

Android Wearのこれまでを振り返る

Android Wearは、2014年に発表されました。最初のバージョン4.4W(2014年6月)は、KitKat上に構築されましたが、さまざまな情報を見ていくと、本来は、Lollipopベースになる予定だったみたいです。この4.4Wには、4.4W.1や4.4W.2といったマイナーバージョンアップがあり、2014年末にようやくLollipopが登場して、Lollipopベースの「Android Wear 1.0」が登場しました。このとき、正式に文字盤アプリの開発などが可能になりました。それ以前にも文字盤アプリは登場していたのですが、販売されたAndroid Wear機などに搭載されていた文字盤アプリなどを解析して作られたもので、正式なSDKを利用して作られたものではありませんでした。このあたり、立ち上がり時期の混乱が見られます。アンドロイドやAndroid Wearは、「アプリ実行のプラットフォーム」であり、そのために開発者による「市場」(あるいはエコシステム)が形成されています。そこに、ソフトウェア開発の準備が整っていないハードウェアを投入してしまったわけです。Google側には、Lollipopの開発が遅れたという事情があるものの、少なくとも最初からSDKなどの環境は整えておくべきでした。

現在のAndroid WearのGUIのベースは、この次のAndroid Wear 1.1で作られます。このとき、現在のように時計表示から右側にスワイプしていくことでアプリラウンチャーや音声コマンド画面などが表示され、下にスワイプすることでクイック設定画面が表示されるという現在の画面構成の基本が作られました。また、このとき、手首の回転でスクロールするなどのジェスチャー認識機能も搭載されます。また、無線LANやGPSに対応したのもこのときです。すでに前年の発売となっていた一部の機種には無線LANが搭載されていました。逆にいうと、初期に登場したスマートウォッチの中には、無線LANを搭載しながら、ほぼ1年間も使えないままの機種があったのです。

本格的なAndroid Wearの機能発展はこのときがスタートだったといえるでしょう。その後、地図アプリの投入やずっと利用できる低消費電力のアプリの導入などが行われたのち、2015年の8月には、Android Wear 1.3が登場します。機能的にはタッチ操作が可能な文字盤アプリや文字盤のペア設定となる「Together」機能などたいした機能がないのですが、iOSのサポートが開始されます。Android Wear 1.2が飛ばされたのは、何か理由があるのでしょうが、Android Wearの最初となる1.1のあと1.3は3カ月後に出荷されています。

なお、昨年11月には、Android Wearで直接モバイルネットワークをサポートするという発表が公式ブログにあったのですが、対応する予定のLG製のハードウェアが出荷されなかったため、いまのところモバイルネットワーク機能を使うAndroid Wearは登場していないようです。

1.4が来た

その上で、今年2月には、Android Wear 1.4が登場しました。機能としてはスピーカーへの対応ですが、実際に利用できる機能としては、「音声通話」や「ビデオメッセージの再生」、「音声メッセージの送信」などわりと大きな機能が追加されています。また、ジェスチャーも追加されて、スクロールだけでなく、選択や取り消し(前に戻る)といった機能をジェスチャーとして実行できるようになりました。また、システムのベースが、Lollipop(Android 5.0)からMarshmallow(Android 6.0)に変更になっており、実質的にメジャーバージョンアップと言ってもいいぐらいです。

そういうわけで、とにかく、再評価するため、スピーカーと無線LANが着いた機種を捜していたところZenWatch2が価格的にも安く、入手可能だったために、これに決めました。残念ながら、スペックやデザインが良かったというわけではないので、その点は誤解なきよう。なお、購入した時点では、1.3だったのですが、帰国後に1.4へのアップグレードが行われました(写真03)。

写真03: 購入直後は、Android Wear1.3だったが、その後1.4にアップデートされた

1.4になって1週間触った感じ、バッテリが以前使っていたG Watchよりももつ感じがあります(これについては別途検証します)。また、専用ケーブルを装着すると充電専用の時計表示画面(写真04)になるのですが、1.4にアップデートしたら音が鳴るようになりました。やはり、要所要所で音が鳴るというのも確認という意味では必要なことだと思います。スピーカーのない機種では、バイブレーターの振動が音代わりで、「音」として認識できないわけではなかったのですが、「ブーッ」という感じで何かが震えている音よりも、「澄んだ音」が聞こえるほうが、心地がいいのは確かです。身につけていつも使うものなので、こうした心地よさというのも重要かと思います。

写真04: 充電を開始すると、時計と充電状態を示す画面が表示される。このとき1.4では音がするようになった

実際に音声契約のあるSIMを入れたスマートフォンと組み合わせて、音声通話をためしてみたのですが、ちょっと籠もった音がするものの、通話は可能でした。着信だけでなく、電話帳やダイヤルパッドから発信することも可能です(写真05)。ディックトレーシーかウルトラ警備隊かという感じですが、複雑な話をしなければ、これでもいいかという気はします。逆に、周囲に丸聞こえなのでビジネスなどの込み入った話では使いたくない機能といえます。「腕時計型電話」みたいで、格好はいいんですけど、実用性は、Bluetoothのヘッドセットのほうがあるような感じです。

写真05: 1.4には電話アプリが組み込まれており、着信可能で、直接番号を入力したり、スマートフォン側の電話帳を使って発信も可能

また、ジェスチャーの種類が追加されました(写真06)。使って便利だったのは、腕を曲げて時計を見る状態にしたとき、手首を下げる動き(腕を下に振る)で、アプリの起動画面に遷移するジェスチャーです。その後、手首を回してアプリ選択、手首を下げてアプリを起動できます。また、手首を上に上げれば、キャンセルで時計表示(ホーム画面)に戻ることもできます。最初力が入って大きな動きになりがちですが、慣れると軽く肘から先を動かす感じでジェスチャーを認識します。もっともうまくいかないこともあって、ついつい力を入れて腕を振ってしまい、タッチ操作やボタン操作(後述)したほうがラクに思えることも少なくはありません。

写真06: Android Wear 1.4で追加された腕を上下に動かすジェスチャー。1.3までは、写真上にあるように手首をひねってスクロールさせるジェスチャーのみだった。Google社のサイトより引用

その他、一部のメッセンジャー系アプリでビデオメッセージを再生出来る機能もあるようなんですが、そういう相手もいなければ、そういう趣味もないので、試していません。ビデオメッセージとか頻繁に使う人(あんまり見たことないんですけど)には便利なのかなぁ? という感じです。

アンドロイドの公式Blogだと、音声認識コマンドが強化されて、「OK Google、××さんに○○(アプリ名)で□□とメッセージを送信」みたいな文章を解析して動作できるとなっているのですが、メッセージの送り先のユーザー認識がうまくできないせいか単なるWeb検索になっちゃうようです。アメリカ人とかだと、ユーザー名がJhonのような感じでちゃんと発音しても認識できるんでしょうが、日本人の名前やローマ字表記で省略した日本人の名前をちゃんと認識してくれません。もしかしたら、アプリ名称のほうをちゃんと認識していないのかもしれません。アプリを特定できれば、対象ユーザーを登録情報などで絞り込めるからです。ただし、「HangOutでメッセージ送信」と言うとちゃんと認識されて送信相手を聞いてきます。

そういうわけで、「音声関係」の強化点は、便利な部分もある反面、これでAndroid Wearが「便利」になったと手放しで喜ぶようなものではなさそうです。

ハードウェアですが、ZenWatch2は、本体右側に「ボタン」(Crown Button)があります。電源オンに使うほか、軽く押せばホーム画面への復帰(キャンセル)、長押しでアプリ画面の起動、2回押しで画面を消すシアターモードへの移行が可能です。タッチ操作するよりはちょっと便利な感じがあります。

次に気になるのは、バッテリ関係です。というのも、以前使っていたG Watchは、外出先で使いすぎると夕方にはバッテリが切れていたし、通知だけを表示させていると、バッテリ寿命は、もっても一日程度でした。Marshmallowでは、Doseモードなど、使わないときの消費電力対策などが組み込まれており、たとえば、仕事中にスマートフォンを机の上に放置しておくだけでもずいぶんとバッテリのもちが違いました。ただ、ZenWatch2は、無線LANも装備しているため、Bluetoothで接続できない場合に無線LANを使います(写真07)。このあたりが消費電力にどう影響するのかなどを含め、次回は、他の機能などについてご報告することにしましょう。

写真07: ZenWatch2には無線LANが搭載されており、Bluetoothで接続できない場合に無線LANを使う。アクセスポイント設定はスマートフォン側で登録したものを利用する