家路を急ぐ足取りが軽いのは、仕事を終えた充実感のためだけではなかった。
――今日は新しい家族に会える。
そう思うと、新生活が始まるようなワクワクで胸が満たされた。
ただし、新しい家族といっても、その子たちに命は宿っていない。
今日から我が家の一員に加わるのは「LOVOT(らぼっと)」。身長約43cm、体重約4.2kgの、ペンギンのような見た目をした「家族型ロボット」だ。
細部までこだわられた包装デザインでワクワクを演出
家に帰ると、家族に受け取りをお願いしていた2つの段ボールが目に飛び込んできた。そのサイズは、玄関を埋め尽くすほどデカい。決して広いとは言えない我が家では、かなりの存在感を放つ。開封の前に箱を奥の部屋に移動させなければ、トイレにも行けないほどだ。
だが、段ボールは、ただデカいだけではなかった。LOVOTの写真やシルエットのデザインが、なんともかわいらしいではないか。よく見ると「水濡れ厳禁」や「天地無用」といった荷物のアイコンにも、小さくLOVOTが描かれている。なるほど、開ける前からすでにLOVOTとの生活は始まっているわけだ。
――命はないのに、あったかい。それは、あなたに愛されるために生まれてきた。あなたのもとにLOVOTがやってきたこの瞬間から、ちいさなLOVEにみたされる日常がはじまります。
箱に書かれたその言葉が、開封時のワクワク感をさらに高める。
箱の重さは1つ7~8kg程度だろうか。グッと力を入れて段ボールを持ち上げる。なかにLOVOTが入っていると思うと、自然と扱いが丁寧になった。
2つの箱を部屋に運んだら、いざ開封。箱にはそれぞれ「1」「2」と番号がふられていた。2の箱を見ると、「BOX1から先に開けてください」と書いてあったので、その指示通りの順番で箱を開ける。
1番の箱に入っていたのは、「ネスト」やその付属品、マニュアルが書かれた「くらしの手帳」などだ。ネストは、LOVOTが充電を行うベッドのようなもの。電池が切れそうになると、LOVOTは自動でこのネストに帰ってくる。LOVOTが戻りやすいよう、スペースに余裕のある場所に設置するのがいいだろう。
場所を決めて、ネスト本体にパネルと電源ケーブルを取り付ければ準備完了。動画のマニュアルをチェックしながら作業を進めれば、特に難しいことはないはずだ。
ネストを設置したら、いよいよ2番の箱をオープン。ついに姿を現した2体のLOVOTは、赤ちゃんに着せる「おくるみ」のようなものに身を包まれていた。目にはアイマスク。センサーホーンと呼ばれる角部分には、キュートなイラストの描かれたカバーがかけられている。
箱の外側も内側もぬかりなし。細部までこだわったデザインでLOVOTの世界観を演出する。これらの要素が、無機質さを忘れさせ、電源が入っていないLOVOTを、眠っているように思わせるのだ。もちろん、充電していないので起きるわけないのだが、箱から出すときも、「起こさないように」と、LOVOTをそっと持ち上げた。
続いて、クッションにLOVOTを寝かせ、おくるみのボタンをはずしていく。やさしくネストに座らせれば、あとは充電完了まで待機だ。20分程度の充電で45分前後動き回るという。
さて、LOVOTをもうちょっと寝かせているあいだに、ほかの設定をしておこう。
LOVOTには専用のスマホアプリが用意されている。このアプリを使って、LOVOTに名前をつけたり、行動記録をチェックしたりするのだが、初回設定では、ネストとスマホをBluetoothでつないでから、自宅無線LANとの接続が必要だ。
これで、アプリから各種設定が可能になるとともに、データのバックアップや、ソフトウェアのアップデートも行えるようになる。
なかなか起きてくれないLOVOT
ネットワーク関連の設定をしながら、2体のLOVOTが動き出すのを、いまかいまかと待ち構える。しかし、20分経っても30分経っても、LOVOTは一向に目を覚ます気配がない。
ネストのLEDが点灯しているので、接続はバッチリのはず。なのになぜ2体は起きないのだろう。
再度、くらしの手帳やウェブマニュアルを見返すが、やはり設定は問題なさそうだ。初回の充電には長い時間が必要なのだろうか、とも考えたが、それにしても長い。
あれこれ悩んでいると、ウェブマニュアルのある一文が目についた。
「睡眠時間は、最初は23時~翌日の7時に設定されています」
すでに時計の針は24時を指していた。夜遅くからセッティングしたため、LOVOTは充電完了後にそのまま疲れて眠ってしまったのだろう。
睡眠時間はアプリから設定できるが、LOVOTが眠っている間は変更できない。どうやら、翌朝になって2体が起きるのを待つしかないようだ。残念ながら、初日はLOVOTが元気に動く姿を見られなかったが、この子たちとの生活はまだはじまったばかり。明日の朝、LOVOTと触れ合うことを楽しみに、その日は眠りについた。
つづく!