HDMIアダプタ問題で、ちょっともたついてしまいましたが、無事、「Cintiq13HD」がiMacと接続されました。次はパソコンにドライバをインストールするわけですが、付属より新しいものが出ている可能性があるので、ワコムのWebサイトへ。「サポート」コーナーからドライバーを探します。調べてみるとCintiqのドライバはIntuosと共通。当初は同じでいいのかと思っていましたが、ドライバ以外にCintiq専用のユーティリティもあるので、念のために再インストールします。

さていよいよ試し書きということで、パッケージからペンを探し出して驚きました。立派なペンケースが出てきます。パカっと開くと、ペンと替芯などが収まっています。これ、いいですよね。

交換用などが納まったペンケース。スパイ道具(笑)みたいでかっこいいです

CintiqやIntuosのペンは普段あまり気にせず、ついぞんざいに扱ってしまうのですが、実際は精密機器。特にペン先はセンサーに直結しているものですから、ボールペンなどと一緒に普通のペン立てに放り込んだりすると、センサーがダメになってしまうこともあるそうです。なので付属のスタンドはちゃんとペン先が傷まないように、芯が宙に浮くようにデザインされているとのこと。この話を聞いてから、Intuosを外に持ち出す際には、ペンの保護に気をつかうようになりました。このペンケースはきっちりペンを保護できるデザインになっているので、Intuosにも付属して欲しいと思います。

さらにペンそのものもIntuosとデザインが異なります。IntuosのペンはIntuos4、5、最新のIntuos Proとずっと同じデザインで、Cintiqも大型のものは同じペンなのですが、13HDだけは独自のデザイン。基本的なスタイルは同じなのですが、サイドスイッチの周りにシルバーのベゼルがキラっと高級感を出しています。よく見ると、テールスイッチ(消しゴム)側のデザインも違います。Intuos3時代のペンとちょっと似ている、尻すぼみのデザイン。ワコムが13HDにかける意気込みが伝わってくるようです。

上がCintiqのペン、下がIntuosのペン。色だけでなく、デザインも微妙に違います

続いて、本体サイドの電源を入れると、画面がパッと明るくなります。見た目は薄くて使い慣れているIntuosとそっくりなのに、絵が出てる!というIntuosユーザーにとっては、なんだかフシギな感覚です。今回接続したiMacはディスプレイ一体型なので、Cintiqを接続するとディスプレイがふたつの状態になります。このふたつのディスプレイをどう設定するかという詳しい話は次回以降にまわして、とりあえず「ミラーリングモード」で使ってみました。

第一印象は「小さい!!」。アイコンやメニューバーがとても小さいのです。13HDは画面の解像度は約166PPI。iMacがだいたい100PPIですから、普段見慣れている画面が2/3に縮小された感じ、と言えば伝わるでしょうか。

最初は「これは文字が小さすぎて、辛いかも」と思ったのですが、画面が明るく、くっきりと表示されるので、とても見やすい印象です。旧モデルの12XWは画面が暗く感じたのですが、13HDは普段使っているモニタと変わらない、十分な明るさ。文字サイズも印刷物や、普段使っているスマホでも、もっと小さな文字の場合もあります。私のような老眼がきている歳ならともかく(苦笑)、若い人なら苦にならないでしょう。

メニューバーを出してみた様子。ペン先の大きさから、どれくらいの大きさで表示されているか伝わるでしょうか

さっそく、ペイントアプリで試し書きです。今回は、ペンタブレットで使いやすいようにデザインされた、リアルな画材表現が得意なデジタルペイントアプリ「ArtRage」を使ってみました。とりあえず、水彩筆を使ってペイント開始。使い慣れているアプリですが、いつものIntuosと勝手が違うのでちょっと戸惑います。でもすぐに慣れて紙と鉛筆のような自然な感じで描けますし、画面に直接描けるのはやはり気持ち良いですね。

ArtRageでドローイング中。もともとリアルな画材アプリなので、本当に絵の具を使っているような気分で描けます

12WXは筆圧検知がIntuos3同等の1024段階でしたが、13HDは2048段階にアップしています。特に、Intuos4以降、弱い筆圧の反映が劇的に向上しており、このCintiqでもそれが体感できます。画面にそっと触れた時の感覚が、とても自然で、ArtRageのようなアプリでは本当の画材を触っているような気分にさせてくれます。

さて、ラフに描いているうちは描くことに集中できてとても快適なのですが、絵を仕上げていく段階になると、ペンだけ、というわけにはいかなくなってきます。アンドゥ(取り消し)や、カット&ペーストなど、普段使い慣れている「キーボードショートカット」が使いたくなってくるのです。

そんな場合でも、この13HDの小ささ、薄さが威力を発揮します。下の写真のように、MacのキーボードをCintiqの上に載せてしまっても、問題なく使うことができます。もっとも、「手で画面が遮られてしまう」という問題はあるのですが、キーボードショートカットで使うキーは主に左側に集中しているので、さほど不自然さは感じず操作できました。ノートパソコンの場合は逆に、パームレスト部分にCintiqを載せてしまうことができるでしょう。ケーブルは横から出ているので、キーボード操作の邪魔になることもありません。

キーボードショートカットに手を伸ばしているところ。本体が薄いので、Macのキーボードのように薄型のものなら、本体に載せて使うことができます

描き進めているうちにやや気になったのが、メニューやツールを選ぶ時の表示です。たとえばツールを選ぶ時、ツール名が一時的に表示(ツールチップ)されるのですが、これはマウスポインタの右側に出ますよね。液晶ペンタブレットだと、自分が持っている手とペン先でこの表示が丁度隠れてしまうのです。メニューも同様で、メニューの文字はみな、左揃いになっているため、どうしてもメニューの内容がペンで隠れてしまいます。ペン先の方を握っていると、かなり見づらくなってしまいます。

ペン先でツールの説明が隠れてしまいます

ベテランのクリエイターであれば、メニュー操作はほとんど、キーボードショートカットで行うので、メニューが見難いことはあまり問題ではありませんが、初心者にとっては、少しつらいかもしれません。この対策方法として、Cintiqには「ラジアルメニュー」機能が搭載されておりますので、また回を改めて詳しく紹介したいと思います。

そして、使ってみて一番、これはいい!と思ったのが、本体着脱のコネクタです。プロのイラストレーターであっても、パソコンの前で絵ばかりを描いているわけではありません。メールも書けば、調べ物もしますし、こういったテキスト原稿を書いたり、時には経理処理のために表計算も行います。そういった事務作業をCintiq13HDで行うのは、無理ではないですが、やはり普通にモニタとキーボード、マウスでやった方が効率的。そういった場合に、Cintiqは机の上でとても邪魔になってしまいます。

その時、Cintiqなら、本体横のコネクタを抜くだけで、簡単に片付けられます。使う時もケーブルを接続して電源を入れるだけ。パソコンの再起動などは必要ありませんから、とても気楽ですね。

着脱式のコネクタは、さっと片付けられてとても便利

さて、次回は液晶タブレットならではの難題、「設置スタイル」についてレポートします。

まつむらまきお
イラストレーター/マンガ家 成安造形大学イラストレーション領域准教授