神永学の同名小説を原作とした漫画「心霊探偵八雲」を連載する一方、美麗な絵柄を生かして女性向けのアドベンチャーゲームのキャラクターデザインやドラマCDのジャケットイラストを手がける漫画家・イラストレーターの小田すずか。彼女の創作活動には、液晶ペンタブレット「Cintiq 24HD」が欠かせないという。「Cintiq」シリーズを登場初期から長く愛用しているその理由に迫った。

小田すずか
漫画家・イラストレーター。「月刊ASUKA」(角川書店)にて、神永学の同名小説を原作とした漫画「心霊探偵八雲」を連載中。そのほか、PSPソフト「官能昔話ポータブル」(5pb.)キャラクターデザインや「流星事件」(角川ホラー文庫)カバーイラスト、ドラマCD「超接近型 ささやき密着CD 5 ~養護教諭・近杉泰助の保健日誌~」ジャケットイラストなどを手がけている

――まず、現在のお仕事について教えてください。

「月刊ASUKA」にて、漫画「心霊探偵八雲」を連載させていただいています。そのほか、PSPソフト「官能昔話ポータブル」(5pb.)などゲームのキャラクターデザインや、ドラマCDなどのジャケットイラストなどを描いています。

――現在は「Cintiq 24HD」をお使いとのことですが、いつ頃から液晶ペンタブレットをお使いなのでしょうか。

一番最初に触った液晶ペンタブレットが「Cintiq 12WX」で、確か発売して少し経った2008年ごろに購入しました。当時大画面のものは高価だったこともあり、コンパクトなこの機種を選びました。しばらくして、やはりメインで使うなら画面の大きいものがいいと感じたので「Cintiq 21UX(DTZ-2100D/G0)」を買いました。

それから数年後に、より性能が高い「Cintiq 21UX(DTK-2100/K0)」を導入しました。以前は自宅と事務所を分けていて、両方で作業できるように「Cintiq 24HD」を追加購入したのですが、今は自宅兼事務所を構えているので、「Cintiq 21UX(DTK-2100/K0)」はサブディスプレイのような用途で使っています。

ここ最近では、旅先などでも作業できるように「Cintiq Companion」(Windows8搭載機)を購入しました。本体がコンパクトなこともそうですが、非常にドットピッチが細かくて高性能なのも魅力ですね。

「Cintiq 24HD」をメインに、かつて事務所を別に持っていた際に導入した「Cintiq 21UX」をサブディスプレイとして活用している

――Cintiqブランドの立ち上げ当初から導入されているんですね。液晶ペンタブレットにご興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか?

デビュー前はペンタブレットを使って、同人誌を中心に制作していました。当時はIntuos3のMediumサイズを使っていましたね。ただ、画面とペンタブレットが違う位置にあるので姿勢が悪くなりがちで、作業中すごく首や肩が凝ってしまって困っていたんです。

そこで何かいい解決方法がないかと探していたら、インターネット上で(液晶ペンタブレットが)話題になっていたのを見て興味を持ちました。先ほどお話ししたように、当時は今よりも高価な物ではあったのですが、"この首のコリが解消されるなら!"と思って購入しました。

――導入した結果、体調は変化しましたか?

もう全然違います! 悩みだった肩や首のコリはすっかり解消して、マッサージに行っても「凝っていませんね」と言われるくらいです。

作業に関しても、(液晶ペンタブレットを使うと)思ったところに線が引けるので、やり直しが減り、作業が速くなりました。

――「Cintiq」シリーズには現在サイズが3種類(13HD、22HD、そして24HD)あるなかで、一番大きな24インチをお使いなのにはどんな理由があるのでしょうか?

理由はシンプルで、作業できる面が大きかったというところですね。とはいえ、大きすぎるかもしれない、という不安は少しあったのですが、作業場の机に収まることが分かったので購入してみました。

――「Cintiq 24HD」を導入して、便利になった部分はありますか?

「Cintiq 24HD」はアームの可動域が広いので、画面を机からせり出して使えるのが助かります。というのも、私は背が低いので、作業場の椅子を低くしていて、机も60cmくらいの高さの物を使っているんです(一般的なデスクは高さ70cm程度の物が多い)。この機種を導入したことで、低い位置に画面を持ってくることができて、良い姿勢で原稿に取り組めるようになりました。必要な時には完全に画面をフラットに倒したりできるのもいいですね。

――そのほか、液晶ペンタブレットを使用していることで効率化した作業などはありますか?

そうですね、言ってしまえばもう「全部」ということになるのですが(笑)。特に挙げるとすれば、モノクロのペン入れが楽になりました。

ペン入れには色塗りやトーン貼りに比べて繊細なタッチが要求されるのですが、Cintiq上ですべてそういった作業も終えることができます。

――作画の時間はどれくらい早くなりましたか?

体感で倍くらいは速くなったと思います。

制作中の作品(声優の小野友樹/江口拓也の自主企画「Teamゆーたく」イラスト)の着色の様子

――漫画の制作の際はどのソフトを用いて作業されていますか。

モノクロ原稿は「Comic Studio」、カラー原稿は「Illust Studio」を使っています。やはり液晶ペンタブレットとの相性はとてもいいですね。どちらのソフトもラフから仕上げまで全てPC上で作業することを前提に作られているソフトだと思うのですが、直感的に画面に描き込める液晶タブレットを用いることによって、使い勝手が向上します。ラフや下描きではアナログに近い感覚で線を描いたり消したりできますし、ペン入れや彩色の作業ではより繊細なタッチを再現できるんです。

作業場には愛猫の姿も。小型の品種「シンガプーラ」を2匹飼っている

――ファンクションキーやタッチホイール、サイドスイッチなどにはどんな操作を割り当てていますか?

「Cintiq Companion」で作業する際、ズームイン/ズームアウトや回転、取り消し、手のひらツールなどをファンクションキーに割り当てて使っています。

――最後に、小田さんの思う「Cintiq 24HD」の魅力とはなんでしょうか。

やはり、体に負担をかけずに作業が行えるようになったのが大きいですね。また、ここまでにお答えしたこと以外では、基本的なことになりますが、やはり画面に直接描けることでしょうか。例えば、ペンタブレットを使っていた頃は、髪の毛などの交差した線がはみ出さないようにするのが大変でしたが、そういった作業は格段に楽になると思います。アナログに近い感覚で、直感的に作業が行えるのは本当に助かっています。

インタビュー撮影:荒金大介(Sketch)