パナソニックグループが進めている1万人規模の人員削減が、当初計画を上回り1万2000人規模に達することが明らかになった。また、Google Xの創業などに関わり、2019年からパソナニックグループで、B2C向けAI事業を推進してきた松岡陽子氏の退任が発表され、事業化に取り組んでいたYohanaおよびUMIを「一度、白紙に戻す」(パナソニックホールディングス 執行役員 グループCFOの和仁古 明氏)ことが示された。

また、パナソニックグループのAI事業の新たな推進役として、日本IBMに在籍したのち、日本マイクロソフトでCTOなどを務め、現在はパナソニックコネクトのシニア・ヴァイス・プレジデント CTOの榊原彰氏が、グループCAIO(Chief AI Officer)に兼務で就く。

  • パナソニックコネクトのシニア・ヴァイス・プレジデント CTOの榊原彰氏が、グループのCAIO(Chief AI Officer)を兼務

    パナソニックコネクトのシニア・ヴァイス・プレジデント CTOの榊原彰氏が、グループのCAIO(Chief AI Officer)を兼務

パナソニックグループは、2026年4月1日から新体制をスタートさせることを発表したていたが、その輪郭がより鮮明になった。

最終的な人員削減は1万2000人規模へ、今年4月からの新体制で注目人事は?

パナソニックグループでは、人員削減のための構造改革費用として、2025年度に1500億円を計画していたが、今回300億円を積み増しして、1800億円に引き上げた。

構造改革費用の内訳は、くらし事業の620億円、コネクトの20億円、エナジーの0は、当初計画を据え置いたものの、インダストリーが190億円増の550億円、その他(パナソニック ホールディングス、パナソニック オペレーショナルエクセレンスを含む)では110億円増の610億円とした。

パナソニックホールディングスの和仁古グループCFOは、「第4四半期にも応募する人がいるため、最終的な人員削減は1万2000人規模になる。ここから大きく膨らむことはなく、一定のめどがついたと考えている」とコメント。「個人一人ひとりが悩んだ結果、決断したものである。パナソニックホールディングスとしても苦渋の決断であり、新たな道に踏み出す人たちに寄り添いながら応援したい。多くの人が抜けて、何も混乱がないというのはウソになる。それぞれの職場で歯を食いしばりながら、次に向けてがんばろうという仲間がたくさんいる。これをポジティブに捉え、次の新しいパナソニックグループを作っていきたい」と語った。

  • パナソニックホールディングス 執行役員 グループCFOの和仁古 明氏

    パナソニックホールディングス 執行役員 グループCFOの和仁古 明氏

これに伴い、構造改革効果も見直し、2025年度は、2024年度比で50億円増の420億円の構造改革効果を想定。2026年度までの2年間累計では、130億円増となる1450億円を見込んでいる。

「人員が減った職場で、再度人員を増加させてはいけない。グループ内での数字を維持しながら、仕事をしていく。そのために生産性向上が必須となる。AIの活用はそのひとつである。同時に仕事の取捨選択を、かなり踏み込んで決めていく」と語った。

新体制への移行において、注目されるのが、執行役員 Panasonic Well本部長の松岡陽子(ヨーキー松岡)氏の退任だ。それに伴い、Panasonic Well本部を2026年3月31日付で発展的に解消。複数の地域や組織に分散していたAI戦略の開発機能を最適化するために、AIデータプラットフォームの開発リソースを集約することになる。

  • 執行役員 Panasonic Well本部長の松岡陽子(ヨーキー松岡)氏は退任

    執行役員 Panasonic Well本部長の松岡陽子(ヨーキー松岡)氏は退任

松岡氏は、Googleの研究開発部門であるGoogle Xのイノベーション責任者兼共同創業者のほか、ネスト(Nest)のCTO、Googleヘルスケア部門の副社長などを務めたのち、2019年10月にパナソニック入りして、常務執行役員 くらし事業戦略本部長のほか、パナソニックの子会社であるYohana. LLCの創業者兼CEOに就任。現在は、執行役員 Panasonic Well本部長に就いている。パナソニックグループ入りして以来、同社のコア事業におけるAIへの戦略的シフトを推進。ハードウェア事業から、AIソリューション企業への進化に向けて旗振り役を担っていた。

パナソニックホールディングス 執行役員 グループCHROの木下達夫氏は、「B2CにおけるAI戦略は、これまではインキュベーションのフェーズであったが、今後は、AIによる改革を、次のフェーズに進化させたいと考えている。注力領域であるソリューションにおいて、AIの利活用、実装を進め、企業に対する付加価値を提供することを目指す」と、Panasonic Well本部の発展的解消の理由を述べた。

  • パナソニックホールディングス 執行役員 グループCHROの木下達夫氏

    パナソニックホールディングス 執行役員 グループCHROの木下達夫氏

YohanaやUMIは、B2C向けのAIサービスとして、松岡氏を中心にしたPanasonic Well本部が事業を展開してきたが、「YohanaとUMIは、一旦、立ち止まって、白紙に戻しながら考えることにした」(パナソニックホールディングスの和仁古グループCFO)と発言。だが、「これはB2C領域でのAIによる挑戦を止めるということではない。これまでの学びは、スマートライフ領域に引き継ぎながら、再度の仮説と挑戦を継続していく」と語った。

また、和仁古グループCFOは、松岡氏の貢献についても言及。「2019年から、新しい仮説のもとに、B2CでのAIの活用に挑戦してもらった。毎年、それなりにしっかりとしたバジェトをつけながら、仮説検証をしてきたものの、スケーリングとマネタイズが見えるところまでの検証ができなかった。これについては、どこかで一定の歯止めをかけなくてはならない。構造改革の年であるということもあわせて、踏み込んで決断した」とした。また、「これまでの取り組みを通じて、AIをベースにしたビジネスに向けたプラットフォームづくりや、それに伴う人材確保ができた。今後も、AIをイニシアティブの中核に置くという考えに変化はない。未来に向けてのレガシーは、パナソニックグループのR&D部門に引き継ぎ、次への挑戦につなげることができる」と評価。また、木下グループCHROは、「シリコンバレーのオフィスを訪れると、松岡氏がタレントマグネットとなり、シリコンバレーの素晴らしいAI人材を惹きつけていることが感じられる。人材を獲得し、AIデータプラットフォームづくりが前に進んだことは素晴らしい実績である。外部との連携においても残してくれた功績は大きい。両利きの経営を進めていくなかで、イノベーション人材が少ないという課題がある。道場という育成プログラムを作り、日本人エンジニアが見違えるように変化したという実績もある」と述べた。

なお、昨年2025年1月のCES 2025では、UMIのサービスを実現することを前提に、Anthropicとの提携を発表していたが、「少しトーンを下げることになる。だが、今後も、様々な外部のAIパートナーと協業、共創し、技術を作り上げていく姿勢は変わらない」とした。

その一方で、新たな役職として、グループCAIO(Chief AI Officer)を設置。CAIOは、今後の変革の鍵である顧客課題の解決と、内部オペレーションの変革に向けて、AIの利活用を加速する役割を担うという。

CAIOに就任するパナソニックコネクトの榊原シニア・ヴァイス・プレジデント CTO については、「パナソニックコネクトで、コネクト事業におけるAIの実装、顧客に対するソリューション提案につなげる役割を果たしてきた。グループCAIOと、コネクトのCTOを兼務することで、ワンヘッド体制のもとで、グループ全体のAI人材を最大限に活用でき、ソリューション事業の発展につなげることができる」(和仁古グループCFO)と説明した。 また、木下グループCHROは、「榊原氏も強力なタレントマグネットの持ち主であり、コネクトでは、IBMやビッグテックからAI人材を獲得している」とも述べた。

新設するもうひとつの役職が、SRO(Solution Revenue Officer)である。SROには、SAPジャパンで社長を務め、2026年3月31日付で同社を退任することを発表していた鈴木洋史氏が就くことになる。

  • SRO(Solution Revenue Officer)に就任する鈴木洋史氏

    SRO(Solution Revenue Officer)に就任する鈴木洋史氏

パナソニックホールディングスの木下グループCHROは、「パナソニックグループは、ソリューション領域に注力する考えを示しているが、この領域において、B2BのGo-to-Marketの仕組みを立案、構築する役割を担う」とし、「法人向けキーアカウントマネジメントをはじめとした関連する知見を持つ鈴木氏にジョインしてもらう。パナソニックグループとしての法人営業の在り方を見直していくことになる」と説明した。

ソリューション領域での収益構造の向上に向けて、領域横断での収益確保をリードする役割を果たすことになるという。

さらに、全事業会社社長が「事業CEO」として、パナソニックホールディングスの執行役員を兼任することも発表した。従来の体制では、事業会社の社長は、パナソニックホールディングスの役員を兼務しないことを前提としていた。

同社では、「パナソニック ホールディングスと事業会社が、ともにグループ戦略や方針を定め、グループ全体最適の視点によって、大胆な事業判断の意思決定を行う速度と実行力、収益性と成長性を高め、グループの企業価値向上の実現を目指すことを目的にしている」と説明している。

2025年度第3四半期の決算と通期見通し、構造改革進め下方修正

一方、パナソニックホールディングスが発表した2025年度第3四半期(2025年4月~12月)連結業績は、売上高が前年同期比8.1%減の5兆8837億円、営業利益は同54.7%減の1577億円、調整後営業利益は同4.4%減の3410億円、税引前利益は同55.2%減の1772億円、当期純利益は同56.6%減の1252億円となった。

第3四半期の3カ月間(2025年10月~12月)の連結業績は、売上高が前年同期比4%減の2兆633億円(オートモーティブを除くと同5%増)、営業利益は前年同期の1323億円の黒字から、72億円の赤字となった。調整後営業利益は6%増の1591億円、税引前利益は前年同期の1447億円の黒字から、7億円の赤字。当期純利益は995億円の黒字から、171億円の赤字となった。

  • 2025年度第3四半期(2025年10月~12月)の実績

    2025年度第3四半期(2025年10月~12月)の実績

パナソニックホールディングスの和仁古 明グループCFOは、「第3四半期(2025年10月~12月)は、コネクトのプロセスオートメーション、インダストリーおよびエナジーの生成AI関連事業が増収となったが、エナジーの車載電池、くらし事業の家電エアコンなどが減収となったこと、オートモーティブの非連結化が影響したことで、全体では減収となった。だが、調整後営業利益では、くらし事業とコネクト、インダストリーの増益が、オートモーティブの非連結化影響をカバーして、全体で増益になった」と総括した。

第3四半期の3カ月間におけるオートモーティブの非連結化の影響は82億円。米国関税影響の43億円などのマイナス影響を加えて、調整後営業利益では89億円の増益となった。

第3四半期3カ月間のセグメント別業績をみると、くらし事業は、売上高は前年同期比2%減の8927億円、調整後営業利益は41億円増の496億円。くらし事業のうち、くらしアプライアンス社の売上高は前年同期比6%減の2244億円、調整後営業利益は53億円減の126億円。空質空調社の売上高は前年同期比3%減の2068億円、調整後営業利益は1億円増の56億円。コールドチェーンソリューションズ社の売上高は前年同期比6%減の946億円、調整後営業利益は56億円減となり、29億円の赤字に転落。エレクトリックワークス社の売上高は前年同期比4%増の2953億円、調整後営業利益は59億円増の333億円となった。「電材は、好調な国内を中心に増収。だが、家電や空調は、海外需要が減少したことが影響した」という。くらしアプラインス社は、海外販売が苦戦して減収減益。空質空調社はルームエアコンの海外需要が低迷したが、前年並みの利益を確保した。コールドチェーンソリューションズ社は、北米における生産システムのトラブルがあり、販売が制限されたことで、一時的に販売量が減少したことで減収減益になった。エレクトリックワークス社は、国内電材の増販によって増益になったという。

  • 第3四半期3カ月間のセグメント別業績

    第3四半期3カ月間のセグメント別業績

  • うち、くらし事業の実績

    うち、くらし事業の実績

コネクトの売上高は前年同期比9%増の3512億円、調整後営業利益は75億円増の304億円。「生成AIサーバーを含むICT需要を捉えたプロセスオートメーションや、強い受注が続くアビオニクス、Blue Yonderの増販が貢献した」という。だが、Blue Yonderは、戦略投資の増加もあり、為替影響除きでは48億円の営業減益になっている。

インダストリーの売上高は前年同期比8%増の2933億円、調整後営業利益は138億円増の278億円。生成AIサーバーなどの情報通信関連製品の需要拡大が続いているという。「導電性高分子コンデンサと多層基板材料に、各種の新デバイスをあわせることで、2030年度には、売上高1000億円を目指していたが、生成AI関連需要は想定を上回る勢いで拡大しており、既存2商材だけで1000億円到達が視野に入ってきた」という。

  • インダストリーは生成AI関連の需要が想定を上回る勢い

    インダストリーは生成AI関連の需要が想定を上回る勢い

エナジーの売上高は前年同期比22%増の2628億円、調整後営業利益が9億円減の417億円となった。車載電池は、EV市況の悪化に伴う北米工場の減販などにより減収。産業・民生は、データセンター向け蓄電システムが引き続き好調を維持している。

  • 車載電池はEV市況の悪化により減収。これを底に今後は緩やかな回復を想定

    車載電池はEV市況の悪化により減収。これを底に今後は緩やかな回復を想定

  • データセンター向け蓄電システムは引き続き好調

    データセンター向け蓄電システムは引き続き好調

その他/消去・調整の売上高は2633億円、調整後営業利益が74億円減の96億円。エンターテインメント&コミュニケーションは市況の悪化を受け減収だったが、ハウジングが増収になっている。

2025年度(2025年4月~2026年3月)連結業績見通しを下方修正した。

売上高は11月公表値を据え置き前年比9.0%減の7兆7000億円、営業利益は300億円減額の同32.0%減の2900億円、調整後営業利益は据え置き同0.6%増の4700億円、税引前利益は300億円減額の同35.2%減の3150億円、当期純利益は200億円減額の同34.5%減の2400億円とした。

「売上高と調整後営業利益は据え置いたが、営業利益は構造改革費用の増加により、下方修正した」という。

  • 2025年度(2025年4月~2026年3月)連結業績見通し

    2025年度(2025年4月~2026年3月)連結業績見通し

  • 構造改革費用の増加により、営業利益の予想を下方修正

    構造改革費用の増加により、営業利益の予想を下方修正

  • 関税影響は織り込み済み

    関税影響は織り込み済み

セグメント別では、くらし事業が11月公表値に比べて530億円減額の前年比2%減の3兆4820億円、調整後営業利益は80億円減額の前年比315億円増の1680億円。コネクトは400億円増額の前年並みの1兆3200億円、調整後営業利益は50億円増額の前年比53億円増となる860億円。インダストリーは400億円増額の前年比4%増の1兆1300億円、調整後営業利益は60億円増額の前年比357億円増となる900億円。エナジーは190億円増額の前年比9%増の9520億円、調整後営業利益は据え置き、前年比87億円減となる1140億円とした。なお、くらし事業のうち、くらしアプライアンス社、空質空調社、コールドチェーンソリューションズ社は下方修正。エレクトリックワークス社は上方修正した。

  • 2025年度(2025年4月~2026年3月)のセグメント別業績見通し

    2025年度(2025年4月~2026年3月)のセグメント別業績見通し

  • うち、くらし事業の見通し

    うち、くらし事業の見通し

  • セグメント別業績見通しの修正要因

    セグメント別業績見通しの修正要因

なお、2025年11月に発表したパナソニック ハウジングソリューションズの株式譲渡については、3月31日のクロージングに向けて、必要な手続きを順調に進めていることを報告。「グループのポートフォリオマネジメントについては、今後も継続的に推進していく」と述べた。