• キヤノンの決算。インクジェットプリンターやカメラが好調だった

    キヤノンの決算。インクジェットプリンターやカメラが好調だった

キヤノンが発表した2025年度通期(2025年1月~12月)の連結業績は、売上高が前年比2.5%増の4兆6247万円、営業利益が同62.8%増の4553億円、当期純利益が同107.5%増の3220億円となった。

キヤノン 専務取締役 経理本部長の浅田稔氏は、「第4四半期(2025年10月~12月)は、レーザープリンターが減収となったものの、新製品が好調なカメラや、安心安全に対するニーズを背景としたネットワークカメラの売上げが大きく増加。また、販売体制を強化しているメディカルや、製品ラインアップを強化したオフィス複合機、インクジェットプリンターが売上げを伸ばし、四半期ベースでは過去最高となる売上げを記録。これを含めた年間売上高は、前年比2.5%増となり、昨年に引き続き、過去最高の売上高を更新した」と総括した。

  • 2025年度 第4四半期(2025年10月~12月)と通期(2025年1月~12月)の実績 ※2024年度は減損損失影響を除いて表示している

    2025年度 第4四半期(2025年10月~12月)と通期(2025年1月~12月)の実績 ※2024年度は減損損失影響を除いて表示している

  • 前回2024年度、メディカル事業で計上した、のれんの減損損失を含む数字

    前回2024年度、メディカル事業で計上した、のれんの減損損失を含む数字

2025年度は、同社が取り組んでいる5力年経営計画「グローバル優良企業グループ構想フェーズ VI」の最終年度であり、目標に掲げていた売上高4兆5000億円以上の計画は1年前倒しで達成したものの、営業利益率12%以上、純利益率8%以上、ROE10%以上は未達となった。

  • 2025年度 第4四半期と通期のビジネスユニット別実績

    2025年度 第4四半期と通期のビジネスユニット別実績

ビジネスユニット別では、プリンティングビジネスユニットの売上高は前年比1.1%減の2兆4943億円、営業利益は同11.8%減の2574億円。米国追加関税の影響に加え、欧州やアジアにおける景気の不透明感から、レーザープリンターを中心に、プリント機器の購入の先送りが見られたことが影響した。また、商業印刷は、ハイデルベルグへの本格的な製品提供を開始。オフィス複合機は、新シリーズの「imageFORCE」を全世界で展開した。また、インクジェットプリンターは、ラインアップを強化した大容量インクモデルが市場シェアを拡大させたという。

イメージングビジネスユニットの売上高は前年比12.5%増の1兆545億円、営業利益は同14.3%増の1728億円。カメラは、2025年11月に発売したフルサイズミラーレスカメラの新製品「EOS R6 Mark III」や、バックオーダーが積み上がっているコンパクトカメラの売上げが拡大したことで、第4四半期(2025年10月~12月)は前年同期比2桁の増収を記録。通期売上高は前年同期比7.9%増の6255億円となった。また、ネットワークカメラは、安心安全ニーズが高まるなか、世界的に需要の拡大が続いており、第4四半期の売上げは前年同期比27.8%増を達成。通期では前年比20.1%増の4294億円となり、年間でも20%を超える大幅な増収となった。

  • ミラーレスカメラ「EOS R5 Mark II」もヒット中

    ミラーレスカメラ「EOS R5 Mark II」もヒット中

メディカルビジネスユニットの売上高は前年比2.1%増の5806億円、営業利益は同32.9%増の327億円となった。新興国の売上げが年間を通じて成長したことに加え、重点地域である米国において、関係を強化している大規模病院からの受注が売上げにつながったという。また、事業革新活動によるコスト削減が奏功し、営業利益は過去最高を記録。営業利益率は5.6%となった。

インダストリアルビジネスユニットの売上高は前年比2.7%増の3611億円、営業利益は同9.3%減の625億円となった。半導体製造装置は、AI関連の旺盛な需要を背景に、後工程向け半導体露光装置や先端半導体向けのスパッタリング装置の販売が伸長。FPDでは、高機能化が進むスマートフォン向け製造装置が販売を伸ばした。なお、ナノインプリントについては、大手半導体メーカー向けに出荷していた評価機の確認が終了し、量産適用に向けた評価および検証が順調に進んでいることを示した。ナノプリントの量産時期については、「顧客先の方針があるため、時期を示すことができない」とした。

今期、連続の過去最高売上を目指すが「不透明感」も

一方、2026年度通期(2026年1月~12月)の業績見通しは、売上高が前年比3.0%増の4兆7650万円、営業利益が同5.2%増の4790億円、当期純利益が同2.7%増の3410億円とした。

  • 2026年度通期(2026年1月~12月)の業績見通し

    2026年度通期(2026年1月~12月)の業績見通し

「3年連続で過去最高の売上高を目指す」とし、「市場成長が見込まれるメディカルやネットワークカメラ、商業印刷は、前年比5%以上の売上成長を計画するとともに、オフィス複合機やインクジェットプリンターについても、競争力のある製品ラインアップにより、市場シェアを向上させる。また、営業利益率は、構造改革の成果により、10%を超える水準を計画している。将来を見据えた3つの事業構造の見直しは、2026年度も継続して進め、販売会社における組織体制の再編、生産拠点の集約化による生産性の改善、新しい体制のもとでのメディカル事業のオペレーション改善を推進する。これにより、成長を加速させるための経営基盤強化を図る」との方針を示した。

  • 2026年度通期(2026年1月~12月)のビジネスユニット別見通し

    2026年度通期(2026年1月~12月)のビジネスユニット別見通し

ビジネスユニット別の2026年度通期見通しは、プリンティングビジネスユニットの売上高は前年比1.5%増の2兆5329億円、営業利益は同0.6%増の2574億円を計画。商業印刷では、中小印刷会社向けの「varioPRINT iX1700」や、B2サイズまで印刷が可能な「varioPRESS iV7」、多様なメディアに対応できる大判印刷機「Colorado XL」など、事業領域を広げる新製品を次々と投入。さらに、オフィス複合機でも新シリーズである「imageFORCE」のラインアップを充実させる。レーザープリンターでは、ローエンドモデルを中心に、OEM先とともに効果的な販促投資を行うことでマーケットシェアの挽回を図るという。また、インクジェットプリンターでは、大容量インクモデルと、2025年に発売したカートリッジモデルの新製品により、売上げの伸長を目指す。

  • プリンティングビジネスユニットの2025年度実績と2026年度通期見通し

    プリンティングビジネスユニットの2025年度実績と2026年度通期見通し

イメージングビジネスユニットの売上高は前年比7.8%増の1兆1372億円、営業利益は同6.5%増の1841億円を見込む。カメラは、若者をはじめとした新たなユーザー層に高い人気を誇るエントリー機の「EOS R50V」、「EOS R50」、「EOS R100」を対象に販売を強化する一方、フルサイズ機では新製品の「EOS R6 Mark III」を中心に販売を伸ばす計画だ。コンパクトカメラでは高い需要を背景に、さらなる増産を図り、販売に弾みをつける。カメラでは、前年比8.0%となる6753億円を目標に掲げ、高い成長を目指す。また、ネットワークカメラは、セキュリティ需要の拡大だけでなく、様々な用途に需要が広がり始めていることを捉え、前年比7.6%の1619億円と増収を見込む。

  • イメージングビジネスユニットの2025年度実績と2026年度通期見通し

    イメージングビジネスユニットの2025年度実績と2026年度通期見通し

メディカルビジネスユニットの売上高は前年比6.1%増の6161億円、営業利益は同16.9%増の383億円を計画。2025年4月に、世界初のマルチポジションCTを発売したほか、次世代CTであるフォトンカウンティングCTの投入準備を進めており、「画期的な新製品により、医療機器メーカーとしてのプレゼンスを高めながら、さらなる成長を目指す」とした。フォトンカウンティングCTはすでに認可を取得しており、2026年前半から中盤にかけて市場投入する計画だ。

さらに、新興国における販路を拡大しながら成長を継続。重点地域である米国では販売体制の強化を図り、市場シェアを高める計画を打ち出した。

インダストリアルビジネスユニットの売上高は前年比0.1%増の3615億円、営業利益は同2.0%増の638億円を見込んでいる。FPD製造装置は、米国関税影響を見極めるために投資判断が先送りされているものの、半導体露光装置は、旺盛なAI需要を背景に、メモリ向け装置の受注が増加。KrF露光装置を新たに投入したことで、同製品の販売台数を45台から71台へ大きく伸ばす考えだ。

なお、メモリの高騰については、60~70億円のコストアップになると試算しているという。「複合機やレーザープリンター、インクジェットプリンターのほか、カメラやネットワークカメラにDRAMを搭載している。コストアップのうち、3分の2がイメージングの領域になる。現時点では価格転嫁はしていない。また、メモリに調達にも遅れは発生していない」とした。一方、レアアースについては、複合機やカメラなどに使用しており、「いま以上に規制が強化されると影響を受けることになる。現時点では動向を注視している」と述べた。

キヤノンでは、2030年度を最終年度とする5カ年の「グローバル優良企業グループ構想フェーズ VII」を、2026年1月からスタートしており、2030年度に売上高5兆6000億円、営業利益率15%、ROE15%を目標としている。内訳は、プリンティングの売上高が2兆8000億円、イメージングが1兆3400億円、メディカルが7500億円、インダストリアルが6000億円となっている。

  • 今期は新5カ年の「グローバル優良企業グループ構想フェーズ VII」をスタート

    今期は新5カ年の「グローバル優良企業グループ構想フェーズ VII」をスタート

その一方で、成熟市場での販売体制の一層の効率化と、新興国市場での販売力強化によってさらなる成長を目指すほか、グローバル生産体制を見直し、2028年までに海外本体工場を集約することで、要員の30%減、スペースの40%減、仕掛在庫の50%減を実現し、生産自動化の推進などによる新たな生産体制を構築。2026年4月にはキヤノンメディカルシステムズをキヤノンに統合した新生キヤノンメディカルグループをスタートさせる。また、AIプラットフォームによるソリューションビジネスの創出、宇宙ビジネスへの本格参入のほか、M&Aを活用した事業領域の拡大にも挑む。

「生産性革新を断行し、新たなる成長を実現する」をスローガンに掲げ、経営の質を高めながら、さらなる成長を目指すという。

キヤノンの浅田専務取締役は、「世界経済や政治の不透明感はますます増しているが、2025年度までの増収増益のモメンタムを維持しながら、全社一丸となって増収増益を目指す」としている。