こんにちは。ゲームライターの小川です。

今回は、ジョニー・デップの撮影会炎上で、連日話題となった「東京コミックコンベンション2025」(以下、「東京コミコン2025」)の取材レポートです。

ちなみに、コミコンといえば「映画・アメコミの祭典」のイメージですが、筆者のようなゲームライターが「東京コミコン2025」を取材したのには理由があります。

  • ゲームエリアが進化した新エリア「プレイヤーズジャングル」

    ゲームエリアが進化した新エリア「プレイヤーズジャングル」

前回のコミコン(大阪コミコン2025)で初登場したゲームエリアが、東京コミコン2025で規模を拡大したとのこと。

本記事では、コミコン会場で存在感を増す「ゲームエリア」の様子を中心にお届けするとともに「東京コミコンの現状・課題」も踏まえながら、東京コミコン2025をゲームライター視点で総括します。

ちなみに筆者は今回がコミコン初参戦。

映画やアメコミについて、そこまで詳しいわけではありませんが、MCUはドラマシリーズも含めて視聴済み、スターウォーズシリーズは「マンダロリアン」が好きです。

また写真内の「マジック:ザ・ギャザリング」、世界大会「プロツアー」に出場するぐらいやり込んでいたカードゲームなので、ブースが出展していて驚きました。

正直、映画やアメコミよりも、日本の特撮にハマってきた人間なので、ゴジラ、ウルトラマン、仮面ライダーが好きです。

ただ、会場には、思っていたよりも映画やアメコミ以外のコンテンツが多く、コスプレエリアには、ネトフリ版『Ultraman』や『SSSS.GRIDMAN』、『ビーストウォーズ 超生命体トランスフォーマー』の姿もあり、個人的には刺さりまくりでした。

また突然、目の前に現れた「ポインター号」には度肝を抜かれました。 (やはり成田亨氏※の造形は美しい ※『ウルトラマン』の美術総監督)

脱線しますが、『ウルトラセブン』の42話「ノンマルトの使者」は名作なので、多くの方に見てほしいです。いつも宇宙人に侵略されがちな人類ですが、この話は(実は人類自身も)太古の昔に地球を侵略して、地球の先住民だったノンマルトを追放していた、というものです。

(いい意味で)後味が悪く、部外者であるウルトラセブンが、種族間の抗争に干渉することの是非を考えさせられるエピソードでした。

話を戻すと、コミコン=「アメコミ・映画の祭典」というのは筆者の固定概念で、実際は、多種多様なコンテンツで溢れていました。

国内外問わず、様々なアニメ、ゲームが加わり、まさに「ポップカルチャーのイベント」に相応しいカオスっぷりでした。

個人的には楽しめたものの、客観的にみると「握手会」としては最高峰ではある一方、「ポップカルチャーのイベント」としては「発展途上」という印象を受けました。

総勢20名のハリウッドセレブの来日は東京コミコン史上最多であり、撮影会チケットの最高額はジョニー・デップの75,000円。運営上のトラブルはありましたが、規模としては国内最大級です。

一方、イベントとしては課題が多いように感じました。(ゲームライターなので)どうしても東京ゲームショウと比べてしまうのですが、「見る」「買う」のブースが多く、「体験型」のブースが控え目だったように思えます。

入場料に5,900円(1日当日券)を払っているので、本来であれば丸一日遊びたいところですが、数時間で回り切れてしまう規模感ではありました。

個人的には「ビールさえあれば『バック・トゥ・ザ・フューチャー』について、6時間ぐらい語り合える」ので、これぐらいのボリューム感でも問題ないのですが、そういったコアな映画ファンばかりとは限らないので、より幅広い層が楽しめる設計になっていると、なお良いと感じました。

会場の外では、次のメインステージまで座って待機する来場者もチラホラと。

会場内で気軽に遊べるコンテンツが充実していれば、来場者を寒空の下で待たせることもなかったように思います。

その点、今回の「プレイヤーズジャングル」(ゲームエリア)では、来場者を退屈させない配慮からか、「体験型」のコンテンツが意識的に配置されていたように思えます。

たしかに映画やアメコミの切り口だけでは、体験型のコンテンツを用意するのは難しそうなので、そこはゲームの出番ということなのでしょう。

ゲーミングPCの試遊ブースでは、アメコミ世界観のTPS『マーベル・ライバルズ』を体験できました。

昨今のゲームは、アニメ・漫画だけでなく、映画モチーフの作品も多いので、コミコンのトンマナにあったタイトルを選定できます。

アナログゲームの姿もありました。ディズニーのトレーディングカードゲーム『ディズニーロルカナ』を体験できるブースです。

初体験でしたが、ルールをレクチャーしてくれるスタッフさんの助けもあって、楽しく遊べました。

Yogiboに座りながら、ボードゲームをプレイできるエリアもありました。こういう「休憩しながら、体験できる」ような場所は、1日がかり楽しむような大型イベントでは必要です。

コミコン会場に「ゲームの要素が増えること」については、賛否の声もあるかもしれませんが、すでにニューヨークのコミコンでは、ゲームエリアの規模が拡大しており、ゲーム大国の日本がNYに「ゲーム」で遅れを取っているのが現状です。

また、かつての「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」が批判を受けつつも、「映画の専門店」から「エンターテイメントを集めたセレクトショップ」となったように、東京コミコンも同様の変化は起こりえます。

今後、ゲームエリアが拡大するなかで、東京ゲームショウとの同質化を指摘されそうですが、客層、採用タイトルが異なるので、差別化はできます。

東京ゲームショウは「最新のゲームを体験するイベント」であり、コアなゲーマー向けですが、東京コミコンは老若男女、ファミリー層向けのカジュアルなゲームタイトルが選定されていくでしょう。

最後に少し「ジョニー・デップ騒動」について触れたいと思います。

ハリウッドセレブの来日が、国内のコミコンを盛り上げてきたのは事実ですが、一般論として「話題」「収益」を特定の個人に依存するのは、一定のリスクがあります。

今回、ジョニー・デップ氏のサイン会・撮影会にて大幅な遅延・スケジュール変更が生じ、結果として、東京コミコン2025は多くの人を傷つけました。

運営は謝罪およびチケット返金の対応中です(12月19日にチケットの返金手続を行うための「申請用フォーム」が開設されました)。今回の騒動について、原因は明らかにされていませんが、「そもそも実現可能なスケジュールだったのか」(チケットを売りすぎたのではないか)といった、根本部分での何かしらの齟齬があったようにも思えます。

事態の把握が難しい状況ではありますが、ここでは「ジョニー・デップ騒動」を個人や団体の問題からは切り離し、あくまで構造上の問題として考えることにします。

  • セレブエリアは周辺も含めて撮影不可、写真は別エリアの握手会の待機列

    セレブエリアは周辺も含めて撮影不可、写真は別エリアの握手会の待機列

そもそも「東京コミコン=ハリウッドセレブとの撮影会」になっているのは、いくつかの事情があります。

たとえば、(本家であり)世界最大規模のコミコンであるSDCCは、「映画・ドラマ」の新作情報を発表する場でもありますが、東京コミコン含めた他のコミコンには、その機能はありません。

結果として、ハリウッドセレブの撮影会など「推し活」の比重が高くならざるを得ません。これは日本に限らず、オーストラリアでも同様の傾向があります。

今後、東京コミコンが「ポップカルチャーの祭典」として、持続可能な運営、規模の拡大を狙っているのであれば、ハリウッドセレブの「推し活」に頼りすぎるのは危険です。

セレブに掛かる負荷を下げつつ(チケット枚数を減らしつつ)、運営側の収益を確保する。

現状、撮影会チケットによる収益比率が高すぎるのであれば、場内ブースのコンテンツを充実させ、入場料の値上げをすることで、収益比率をコンテンツ依存にできるかもしれません。

たとえば、ゲームエリアを拡充するなど。

ゲームエリアを始めとした、各コンテンツを充実させることは、本質的にポップカルチャーと向き合うことにもなります。また現状のように「人」だけでなく「カルチャー」や「コンテンツ」に注目が集まることで、より多くの層に東京コミコンの良さが届くに違いありません。

いま、東京コミコンが考えるべき課題(ヴィラン)とは「日本が作るべきポップカルチャーイベントとは何か」という命題と向き合うことなのかもしれません。

異例となる、次回開催日程の発表が見送られた東京コミコンですが、2026年も「日本の強みを活かした形」で開催されることを願っています。