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製品開発を中心に、もう一度“お客様”を取り戻す - アイロボットジャパン新社長・山田毅が見ている5年後の景色

Updated DEC. 05, 2025 15:00
Text : 滝田勝紀
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2025年11月1日、アイロボットジャパンの社長が挽野元氏から山田毅氏へとバトンが引き継がれた。ロボット掃除機「ルンバ」は今もカテゴリーを象徴する存在でありながら、市場全体は伸び悩み、中国勢の台頭もあって競争環境は一段と厳しさを増している。

そんな局面で舵取りを任された新社長は、何を「最大の課題」ととらえ、どこを突破口にしようとしているのか。そして、前社長・挽野氏は10年の日本法人をどう振り返り、どんな未来を山田氏に託したのか。新旧社長同席のもと、家電スペシャリストの滝田勝紀がインタビューした。

「市場が伸びない」本当の理由は何か

―― まず、今のアイロボットを巡る最大の課題を、どうとらえていますか。

山田氏:一番の課題は、やはり「市場が成長していない」ことです。コロナ禍の巣ごもり需要や給付金による特需が終わったここ2年ほど、市場は低迷し、その間に中国系メーカーが一気に台頭しました。結果として、家電業界でありがちな「スペック競争」に陥っているのが現状だと思います。

高性能・多機能な製品は増えましたが、「それは本当にお客様のニーズを満たしているのか」という視点が弱くなっている。これはロボット掃除機業界全体の課題であり、アイロボット本来の強みである「お客様のニーズをとらえ、着実に製品に落とし込むリズム」が、さまざまな出来事の中で少し崩れた面もあると感じています。

本来、市場全体が伸びていれば、プレミアムブランドとしての戦い方はいくらでもあります。しかし今は、市場が伸びないまま価格・スペックで下方に引っ張られている一方で、普及率はまだ低い。このギャップが大きな問題です。

だからこそ日本では、「ロボット掃除機とはそもそもどうあるべきか」というインサイトを、もう一度ゼロベースで見直したいと思っています。日本のお客様にきちんと刺さる価値を定義し、その声を世界に届けていくことが、いまアイロボットに求められている役割だと考えています。

  • アイロボットジャパン 代表執行役員社長 山田毅

    アイロボットジャパン 代表執行役員社長 山田毅
    1977年東京生まれ。2001年 松下電器産業(現パナソニック)入社後、営業・マーケティングを担当。2015年に米アイロボットへ転じ、アジア太平洋地域マーケティングや新規事業開発を統括。サブスク型「ロボットスマートプラン」や教育ロボットRootの立ち上げに携わる。2023年より副社長として営業本部を管掌

―― 今回の社長就任にあたって、本社から日本市場に対してどのような期待や要請がありましたか。

山田氏:日本はアメリカに次ぐ「世界2位の市場」ですが、その価値は単に“規模が大きい”というだけではありません。最大の特徴は「顧客の質が非常に高い」ことです。日本では、コアなファンの方々に対してていねいに価値を伝え続けてきた結果、ブランドへの信頼が積み上がってきました。短期的な売上ではなく、「ブランドを守りながら成長させる」ことが重要だという文化があります。

最終的にすべては「お客様の体験」に行き着きます。本社から我々に求められているのは、日本のお客様をどうエンパワーするか、それを具体的な施策として形にすることです。これは今始まった話ではなく、長年仕込んできた取り組みがあり、来年以降少しずつ形になっていく予定です。

また、競争が激しい今だからこそ「地域最適」が欠かせません。日本ならではのニーズをしっかりとらえ切ること――それこそが、私たち日本法人の最大のミッションだと思っています。

  • 2025年4月に米国本社のCEOゲイリー・コーエン氏が来日した際に発表となった、刷新されたルンバ群

    2025年4月に米国本社のCEOゲイリー・コーエン氏が来日した際に発表となった、刷新されたルンバ群

「ハードの技術」だけでは勝てない。ルンバの本当の差別化

―― 中国勢が存在感を増す中で、「ルンバとしてここだけは負けない」と考えている強みはどこでしょうか。

山田氏:正直に言えば、ハードウェア技術の領域では中国メーカーが今もっとも勢いがあり、世界トップクラスの実力を持っています。それは認めざるを得ない事実です。

ただ、アイロボットの最大の強みは「お客様を深く理解していること」にあります。長年蓄積してきた顧客データや、販売・サポート・修理拠点まで含めた360度の顧客接点。オンラインの販売や簡易なサポートが中心のメーカーとは、ここが大きく違います。

最終的にはすべてが「顧客体験」に集約されます。期待を裏切らない製品・サービスを提供し続ける――。これは簡単に真似できるものではありません。だからこそ、中国勢の台頭がある中でも、日本では長期的に6割前後のシェアを維持できています。

もちろん、現在は価格競争・スペック競争が激化し、とても難しい局面です。それでもなお、機能だけで見れば優位な製品が増えている中で、私たちを選んでくださるお客様がこれだけいる。この“信頼の厚さ”こそが、アイロボットの最も大きなアセットだと考えています。

  • 2025年9月にベルリンで開催されたIFAでの某社ロボット掃除機の展示。階段には上れても階段は掃除できないロボット掃除機。それはユーザーにとって必要なのだろうか……(photo by 石井和美)

    2025年9月にベルリンで開催されたIFAでの某社ロボット掃除機の展示。階段には上れても階段は掃除できないロボット掃除機。それはユーザーにとって必要なのだろうか……(photo by 石井和美)

―― シェアは守れている一方で、市場全体は伸びていません。なぜ市場が「頭打ち」に見えるのでしょうか。

山田氏:まだ仮説の段階ですが、市場が広がらない理由は大きく2つあると考えています。

1つ目は、「取り切っている層」と「まだ届いていない層」の二極化です。年収や家族構成、首都圏など、特定セグメントではすでに高い普及率に達している一方で、外側には思ったほど広がっていない。そのギャップが市場の伸びを止めている可能性があります。

2つ目は、「買い替え需要が本格化していない」こと。ロボット掃除機の寿命は6年〜7年と比較的長いため、カテゴリーとしてリピートフェーズに入る前に、一定数の方が“離脱”してしまう状況があります(編注:使わなくなる)。本来であれば買い替えが起こるタイミングを迎えているはずなのですが、そこにまだ入れていない。

背景には購入後のフォロー不足もあると感じています。毎日スケジュール設定をして動かしているユーザーは長く使ってくださる一方で、週に1〜2回手動で動かすだけだと、だんだん使用頻度が下がり、最終的には使わなくなるケースが多い。ロボット掃除機の価値は「頻繁に動かせること」にあるのに、その“共存の仕方”を十分に伝えきれていなかったという反省があります。

新規獲得に注力してきたぶん、使いこなしのコミュニケーションが不足していた。ここを改善しない限り、カテゴリーとしての成長は難しい――、それが今の私の仮説です。


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※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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