進化の幅が小さくなっているスマホを横目に、年を追うごとに派手な進化を続けているのがロボット掃除機。レーダーやカメラで室内をマッピングしてAIがムダなく掃除したり、集めたゴミをステーションで自動回収するのはもはや当たり前。アームが伸びて床に落ちている靴下やスリッパなどの障害物をつまんで片付ける、底面から脚が伸びて数cmの段差を乗り越える、フローリングを検出すると伸縮式モップが出てきて部屋の隅まで自動で水拭き、階段を上って2階も掃除しに行く、など驚くほどの進化を見せています。

  • どん欲な進化を続けるロボット掃除機。何らかのトラブルですぐエラーが出て人間が対処しなければならない…といったロボット掃除機はもはや過去のもので、人間が手を出さなくてもお任せでしっかり掃除やモップ掛けをしてくれる存在になった

    どん欲な進化を続けるロボット掃除機。何らかのトラブルですぐエラーが出て人間が対処しなければならない…といったロボット掃除機はもはや過去のもので、人間が手を出さなくてもお任せでしっかり掃除やモップ掛けをしてくれる存在になった

最新技術を搭載したロボット掃除機で競い合っているのが中国メーカーですが、2017年創業と若いDreame(ドリーミー)の存在感がここ1~2年で増しています。デジタルモーターの技術革新、デザイン性の高さ、不良率の少なさを背景に、欧州でシェアを急伸。得意のデジタルモーターの技術を生かしてEVへの進出も明言するなど、単なる家電メーカーにとどまらない将来を描いています。

Dreameの担当者は「品質に厳しい日本の消費者に認められる製品を作れば世界でも通用する。それもあり、Dreameは日本市場をとても重視している」と語ります。日本の消費者を納得させる製品を作り出すためのDreameの取り組みを、中国本社で取材しました。

  • 中国・蘇州にあるDreame本社。米国西海岸のベンチャー企業や大学のような明るくオープンなたたずまいだ

    中国・蘇州にあるDreame本社。米国西海岸のベンチャー企業や大学のような明るくオープンなたたずまいだ

(取材協力:フォーカルポイント)

デジタルモーター技術がDreameの強み

2017年に創業し、2021年に日本市場に進出したDreame。中国でも短期間で急成長した会社として注目されています。創業者でCEOのYU HAO氏はまだ30代の若さで、社員も平均年齢が30代と、とにかく会社が若いのにも驚きます。

現在、日本市場ではロボット掃除機やスティック型掃除機、水拭き掃除機、ドライヤーなどを販売していますが、中国では冷蔵庫やドラム式洗濯機、エアコンなど、ロボット掃除機以外の白物家電も広く展開。さらに、ヒト型の2足歩行ロボットや4足歩行のイヌ型ロボットもラインナップしているほどです。

  • 中国で展開している掃除機などの製品。ヒト型の2足歩行ロボットや4足歩行のイヌ型ロボットも見える

    中国で展開している掃除機などの製品。ヒト型の2足歩行ロボットや4足歩行のイヌ型ロボットも見える

  • ロボットは実際に動いているところは見られなかったが、得意のデジタルモーター技術がふんだんに用いられているという

    ロボットは実際に動いているところは見られなかったが、得意のデジタルモーター技術がふんだんに用いられているという

それらの製品でDreameが強みとしている技術が、心臓と例えられるデジタルモーターの技術革新と、頭脳と例えられるAIアルゴリズムの活用です。特に、デジタルモーター技術は掃除機のみならず、すべての製品の性能向上に寄与する基礎技術だとしています。

Dreameは、毎分20万回転(200,000rpm)という現在世界最高水準の回転数を持つデジタルモーターの開発に成功。航空宇宙産業レベルの高品質ベアリングを使用するなどして達成したそう。現状、肩を並べる製品がない状況ながら、20万回転はゴールではなく、さらなる高速回転を目指ししつつ騒音を抑えた製品を開発しているといいます。

  • これが毎分20万回転(200,000rpm)のデジタルモーター。十数万回転の製品を経て、世界初の20万回転に到達したという

    これが毎分20万回転(200,000rpm)のデジタルモーター。十数万回転の製品を経て、世界初の20万回転に到達したという

世界でもトップクラスの技術開発を進められる要因となっているのが、社員の6割超がエンジニアであり、開発のスピードが速いこと、積極的に意見を出して製品を改善していこうという文化が根付いていること、さらに「夢を実現させたい」と社員のモチベーションが高いことがあるといいます。ちなみに、社名のDreameは「私たちはみな大きな夢(dream)を持っており、それに向かって進んでいる」という創業者の思いからきているそうです。

デザイン重視の姿勢、消費者の意見を募る取り組みも

技術だけでなく、デザインにも力を入れているのがDreame製品の特徴です。家にある製品が目に入ると思わず心地よさを感じるようなデザイン、アップル製品のようなシンプルながら美しいデザインを目指しているといいます。見た目だけにとどまらず、製品に触った時の感触も重視しているそう。デザイン品質の底上げのため、世界のトップデザイン学校出身のデザイナーを積極的に採用する力の入れようです。

  • 本社ショールームに展示されていた冷蔵庫やエアコンなどの白物家電。日本メーカーの製品とは異なるモダンなデザインを採用しており、特にエアコンは自宅に設置してみたいと思わせるデザインだった

    本社ショールームに展示されていた冷蔵庫やエアコンなどの白物家電。日本メーカーの製品とは異なるモダンなデザインを採用しており、特にエアコンは自宅に設置してみたいと思わせるデザインだった

  • 掃除する場所に応じてモップを自動で切り替えてくれるロボット掃除機。機能もすごいが、デザインも魅力的

    掃除する場所に応じてモップを自動で切り替えてくれるロボット掃除機。機能もすごいが、デザインも魅力的

  • ごみ収集やモップ清掃を担うステーションから水タンクを取り去ったロボット掃除機もある。給水や排水のホースを接続する必要があるが、圧迫感がなく直線的なデザインのステーションは魅力的だ

    ごみ収集やモップ清掃を担うステーションから水タンクを取り去ったロボット掃除機もある。給水や排水のホースを接続する必要があるが、圧迫感がなく直線的なデザインのステーションは魅力的だ

デザイン面でユニークな取り組みが「Dreame Designer」。デザイナーのごり押しではなく、消費者の意見を積極的に取り入れてデザインを決める仕組みです。

まず、デザイナーが作ったプロトタイプの中でどれがいいか、社員による投票で3~4種類に絞り込みます。さらに、絞られたデザインの中でどれが好みか、一般の消費者がスマホアプリから投票できるのです。製品化前のプロトタイプを一般に公開するだけでなく、消費者がデザインの選定に関与できるのは、これまでにないユニークな取り組みといえます。

このDreame Designer、日本でも来年から実施する予定だそう。自分がデザイン選定に関与できるとなれば、製品やメーカーに対する愛着もさらに増しそうです。

ロボット掃除機の新たなフラッグシップを日本で展開

そのようなDreameですが、11月7日にロボット掃除機のフラッグシップモデル「Dreame Aqua10 Ultra Roller」を発表。クラウドファンディングサイトのGREENFUNDINGで先行販売を開始しました。

最大30,000Paの強力な吸引力、100度の熱湯によるモップの自動洗浄機能、最大8cmの段差乗り越え機能、2基のAIカメラやレーザー距離センサーなどを組み合わせた障害物回避機能など多彩な機能を備え、人間があれこれ介在することなくお任せで掃除できる高性能モデル。モップの洗浄には、ペットのニオイを消臭する専用の洗浄液も使え、ペットのいる家庭にも向きます。

  • クラウドファンディングでの販売が始まったロボット掃除機のフラッグシップモデル「Dreame Aqua10 Ultra Roller」。ゴテゴテしておらずシンプルな造形が高級感を高めている。一般価格は249,800円だが、GREENFUNDINGでは149,800円からの早割価格を用意する

    クラウドファンディングでの販売が始まったロボット掃除機のフラッグシップモデル「Dreame Aqua10 Ultra Roller」。ゴテゴテしておらずシンプルな造形が高級感を高めている。一般価格は249,800円だが、GREENFUNDINGでは149,800円からの早割価格を用意する

  • 水拭き用のモップはローラー式で、状況に応じて外側にせり出してくる。大きなホイールの脇には伸縮式のタイヤを搭載しており、段差を検知すると伸びて段差を越える仕組み

    水拭き用のモップはローラー式で、状況に応じて外側にせり出してくる。大きなホイールの脇には伸縮式のタイヤを搭載しており、段差を検知すると伸びて段差を越える仕組み

  • ローラー式モップがせり出してきたところ。拭きムラを徹底的になくしてくれる

    ローラー式モップがせり出してきたところ。拭きムラを徹底的になくしてくれる

  • ごみ収集やモップ洗浄を担うステーションも直線的なフォルムで高級感がある

    ごみ収集やモップ洗浄を担うステーションも直線的なフォルムで高級感がある

品質に厳しい日本市場で認められるべく挑戦を続ける

高性能のDreame Aqua10 Ultra Rollerを日本でローンチしたDreameですが、日本はとてもハードルが高い市場だと認識しています。その理由として、日本人は細かな部分まで製品の品質に厳しく、究極の高品質を求める傾向が強いことを挙げました。Dreameが得意とする掃除機では、騒音に対してとても敏感であり、それでいて清掃能力の高さが求められるなど、要求が高く難しいことも打ち明けます。

しかし、そのような品質に厳しい日本の消費者に認められる製品を作れば世界でも通用すると考え、日本市場を重要視。とても難しい市場であることを認めつつ、全力で挑戦する価値を見出していました。

日本では、ロボット掃除機をはじめとする製品のメーカー無料保証を3年と長く設定しています。これは「1~2年で壊れるものは作らない。品質の高さを体感してほしい」という自信からだそう。

そのように製品に対する自信を見せつつも、「完璧な製品は存在しない。製品を使って感じたことがあれば、どんな小さなことでもよいのでぜひ聞かせてほしい」と、批判の声もしっかり受け入れて改善につなげていく姿勢も見せました。

Dreameは今後2~3年をかけて、掃除機以外にもさまざまな家電を日本市場に投入していく方針。5年後には、EVも日本で販売したいと意気込みます。

  • ロボット掃除機の開発チームマネジャーを務めるMeng Jia(モン カ)氏(左)と、日本、韓国、オーストラリア経営戦略マネージャーを務めるMaggie Dai(マギー ダイ)氏(右)

    ロボット掃除機の開発チームマネジャーを務めるMeng Jia(モン カ)氏(左)と、日本、韓国、オーストラリア経営戦略マネージャーを務めるMaggie Dai(マギー ダイ)氏(右)

日本では、量販店での取り扱いがまだ限られており、直販サイトのみで販売している商品も多いなど、決して知名度が高いとはいえないDreame。ですが、機能やデザインで日本の消費者を納得させ、さらにDreame Designerで消費者がデザイン選びに関われる工夫も盛り込まれれば、“Dreame推し”の人が増えそうな印象を受けました。