米Appleは10月17日(現地時間)、Formula 1(F1)との間で、米国における5年間の独占的な放送パートナーシップを締結したと発表した。これにより、2026年シーズンから米国でF1全レースが、Appleのストリーミングサービス「Apple TV」で独占的に配信されることになる。

Appleは米国において、F1シーズンの全プラクティス(練習走行)、予選、スプリントセッション、そしてグランプリ(決勝)レースのすべてを配信できる。一部のレースおよび全練習走行は、Apple TVアプリ内で無料で視聴できるようにする。

さらに、Appleの強みであるハードウェアとソフトウェア、サービスのエコシステムがF1配信でも活用される。Apple TVでの配信に加えて、Apple News、Apple Maps、Apple Music、Apple Fitness+といったサービス群全体で、F1のコンテンツを高めていく計画である。

Appleは近年、スポーツコンテンツの配信を強化しており、すでにMLS(メジャーリーグサッカー)やMLB(米大リーグ野球)の「Friday Night Baseball」の配信を手がけている。今回のF1との契約は、特定のスポーツの権利を包括的に獲得するという点でMLSとの契約形態に近いものと見られている。

レース中継の具体的な制作体制や、各サービスとの連携の詳細については、今後数カ月以内に発表される予定である。現在米国では、F1を2つの方法で視聴できる。1つは、2025年シーズンまでの放映権を保有しているスポーツ専門チャンネル「ESPN」、もう1つはF1独自の「F1 TV Premium」である。F1 TV Premiumは、複数のカメラから取得したトラックデータを統合し、ドライバーの順位変動、ピットインのタイミング、走行ラインの比較といった詳細な情報を視聴者に提供している。

2026年シーズンからESPNの放送がApple TVに代わり、「F1 TV Premium」は引き続き米国でも提供されるが、Apple TVサブスクリプションを通じてのみ利用可能となる。

AppleとF1はすでに、Appleオリジナル映画「F1 The Movie(F1/エフワン)」の制作を通じて協業しており、今回の配信契約はそれに続くものである。

ブラッド・ピットが主演し、F1元世界王者のルイス・ハミルトンが制作に名を連ねる同作品は、今夏に劇場公開されると世界中で6億2,900万ドルを超える興行収入を記録。スポーツ映画として史上最高の興行収入を達成し、批評家からも「本格的なレーシング映画」として高い評価を得ている。12月12日からは、Apple TVでの全世界ストリーミング配信が開始される予定である。

今回の契約の背景には、F1の米国内での急速な人気拡大がある。 F1は世界で最も市場規模が急成長しているプロスポーツの一つとされ、米国では2024年にファンベースが5,200万人に達した。 Motorsport Networkが実施した「2025年グローバルF1ファン調査(The 2025 Global F1 Fan Survey)」によれば、F1視聴歴5年未満の米国のファンのうち、47%が18歳から24歳の若年層であり、半数以上が女性である。