デル・テクノロジーズは7月28日、都内で製品発表会を開催し、その中でワークステーションPC「Dell Pro Maxシリーズ」を発表しました。見どころとしてはやはり製品構成の刷新で、プロセッサは各社最新モデルを用意しつつ、グラフィックスにはBlackwellことNVIDIA GeForce RTX 50シリーズを搭載。前モデルから大幅な性能向上を遂げました。

  • 日に当たるワークステーションPC「Dell Pro Max」シリーズ

    「Dell Precision」は「Dell Pro Max」へと簡潔に。しかし性能順に並べるとやや複雑

ちなみに同社の製品シリーズでは命名規則を簡潔に改めているところで、今回発表された「Dell Pro Maxシリーズ」は旧「Dell Precision」を継承しています。しかしいざ発表会を眺めてみると、一概に簡潔になった──とは言いにくい新製品たちのお披露目になっていました。

Blackwell採用で性能向上、AI利活用を強力に推進へ

発表会にはデル・テクノロジーズ株式会社からマーケティング統括本部 クライアント製品ブランドマーケティング コンサルタントの湊真吾氏、エヌビディア合同会社からエンタープライズマーケティング シニアマネージャの田中秀明氏、日本マイクロソフト株式会社からデバイスパートナーセールス事業本部 パートナーデベロップメントマネージャーの朝比奈洋輔氏が登壇。

湊真吾氏はDell Pro Maxシリーズにおける新製品情報について紹介したほか、AI開発向け製品としてNVIDIA製チップを採用する「Dell Pro Max with GB10」「Dell Pro Max with GB300」を今年中に発売すると発表。一部Dell Pro Max PlusノートPCにはQualcomm製のディスクリートNPU搭載も予定するとしており、AI開発を強力に推し進めていく姿勢について明らかにしました。

  • Qualcomm NPUの搭載はなかなか市場でも見られません

  • NVIDIAのデータセンター向け製品をローカルで使える。搭載製品がDellからも投入されます

田中秀明氏は今回Dell Pro Max製品へのBlackwell GPU採用を喜びつつ、世代間の性能向上について言及しました。ちなみに同社はクリエイティブ向け製品から「Quadro」の命名を排除して久しいですが、Blackwell世代からは「RTX PRO」という新たな命名を行うことにした模様。RTX PRO 5000では24GBのGDDR7メモリを備え、ノートPCという枠を超えた大規模なワークロードに対応できるとしています。

  • ノートPCで24GBのVRAMが使える時代。推論性能が指標になるのもイマドキです

  • 推論用途ではAmpere比どころか、Ada比でも圧倒的な性能を実現。3Dグラフィックスにおける性能向上は1.1~1.2倍程度でしょうか

朝比奈洋輔氏はAIの利活用について、同社が主導して進めてきたCopilot+ PCについて触れつつ言及。ローカルではSLM、クラウドではLLMを用いることで用途や環境に応じたAIの利活用を推進し、AIイノベーションプラットフォームの包括的な発展・普及に努めたいと話しました。

  • NPUで動作できるSLMの展開も。オフラインでも利用できます

最上位モデルはPremiumながら、性能的には「Plus」が上位!?

加えて、デル・テクノロジーズ株式会社からクライアント製品ブランドマーケティングの徳山由香里氏が詳細な製品ラインナップの紹介に登壇しました。下位モデルのDell Pro Max 14/16のみAMD Ryzen搭載モデルを用意するほか、Dell Pro Max 18 Plusでは16:10ディスプレイの採用で表示領域を拡大。先進の熱制御技術を搭載し、大きなGPU消費電力を許容できるようになっているとのこと。

  • 旧製品シリーズから継承するDell Pro Maxのラインナップ。PremiumがミドルでPlusがハイエンドということ?

  • 搭載可能なグラフィックスについて見ると、性能的にはやはりPlusモデルのみがRTX PRO 5000の搭載に対応して最強のようです

この命名規則は正直なところ、ちょっとややこしいのではと思いました。Dell Pro Max以外のDell製品(DellシリーズおよびDell Proシリーズ)を性能が低い順に並べると無印、Plus、Premiumになる一方、最も性能が重視されるDell Pro MaxのワークステーションPC(今回発表された製品群)では無印、Premium、Plusの順に並ぶことになります。

個人的には“Pro Max”にPlusと追加されているだけでもややわかりにくく、さらにPlusと聞くと高性能ではなく大画面かなという印象を受けます。せっかく命名規則をシンプルにしたのに、製品の特長をつかめなくなってしまうと本末転倒になってしまっているように思えます。

質疑ではこの点に疑問を呈した参加者がもちろん筆者以外にもおり、徳山氏と湊氏が対応。Premiumでは性能以外の要素も重視する必要がある中で、最上位GPU・Intel Core Ultra HXシリーズプロセッサの搭載に対応できず、シリーズ構成がこのような形になったと質問に回答していました。

強力なCPU・GPUの消費電力を大きくとらないと十分な性能が発揮できず、かといって冷却機構を大きくしすぎると可搬性が低下して重く・大きくなってしまうジレンマを抱える現在のゲーミング・ワークステーションPC製品。プロフェッショナル向けワークステーションにはPro Maxではなく、先駆者に倣うなら“Studio”と冠することでシリーズ名を整理できたような気もします。製品シリーズに配する接尾辞の運用にはもう少しだけ配慮が必要だったかもしれません。

  • 性能的には最強モデルであるDell Pro Max 18 Plus。キーボードもゼロラティス仕様ではありません(段差がある)

  • 本来上位モデルであるはずが、性能的には2番手に甘んじることになってしまったDell Pro Max 16 Premium

このほか、会場には修理のしやすさを高めて環境負荷を低減するドーターボード採用モデルの展示がありました。必要なインタフェースをドーターボードのみの変更で搭載でき、製品仕様の共通化にも貢献しているとのこと。PS2 SerialポートからThunderbolt 4まで幅広く対応できるといいます。

  • 端子部分をモジュール化し、この部分だけ変更すること汎用性を高めます